表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の世界  作者: manam
そのに
9/30

そのに 1

 そのに



 『魔法世界』に来て数日が過ぎ、あの日以降は今日まで何事もなく平穏な日が続いていた。

 結局四季さんとは学校で会えず、聞きたいことも聞けず、五円玉とライターはそのまま手元に残ったままだ。あの日、何年何組か聞くのを忘れたことを、つくづく不覚に思うわけだが、まあ今日はそんなこはどうでもよかった。


 今日は日曜日。空間移動装置を開発したリゼイン社に行くと決めていた日である。

 今は朝食を食べながら、お母さんと戦隊ヒーロー物の番組を見ている。

「う〜ん『魔法世界』でもこういう番組はやってるんだね…でもなんでこんなの見てんの?」

「なんでって…お母さんの趣味よ?この後も続けてヒーロー物があるから日曜日はいいわー。あ、その後の魔女っ子物も見逃せないわね!」

 お母さんにこんな趣味があるとは全く知らなかった。それもそのはず、私は休日といえば昼まで寝てる派なので、お母さんの趣味を知ることなど出来るはずもなかったのである。

 案外面白いなとヒーロー達の活躍を手に汗を握りながら見ていると、いつでもボサボサ頭のお父さんが寝起きでさらにボサボサになった頭を引っさげて、あくびをしながら台所へとやって来た。

「本当に母さんはこういうのが好きだな。部屋中フィギュアだらけだよ。今度出る魔女っ子フィギュアも予約注文したんだから」


 二人の部屋がそんな魔窟になっていたとは知らなかった。お母さん殆ど末期だ。でも後で後学のためにこっそり覗いてみよう。

「あれ?そう言えばお父さん帰ってたんだ。仕事はもう終わったの?」

「ああ、やっと一段落したんで当分休みを貰ったよ。どうだ?今日久しぶりにどこかへ出かけるか?」

「ごめん!今日私行くとこがあるんだ。また今度ね」

 がっかりしたように溜息をつくお父さんの肩をポンと叩き、

「ごちそうさまーそして行ってきまーす」


 用意して側に置いておいたケータイや財布などをズボンのポケットに入れ、玄関へ向かう。

「それにしても、『魔法世界』でもこれは同じなんだね」

 それは壁に並べて掛けられている額縁。その中には私が子供の頃に描いたお父さんやお母さんの似顔絵や、クレヨンで書き殴った変な図形や、肩叩き券などが入っている。似顔絵はともかく、肩叩き券まで額に入れて飾る必要はあるのだろうか…

 よし、帰ったらこっそり肩叩き券を外して、『私と一日デート券』に取り替えておこう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ