表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逢魔が時  作者: 由卯
13/25

真実と記憶 【3】

 家から近くの川原までそう遠くはない。

川に沿ってだらだらと坂道を下っていくと、一面に田畑が広がる。

山の方に向かって木々が茂っているところに母たちが眠っている墓地があった。


 日の光が川面を銀色に照らしていた。

依子は、余りの眩しさに目を閉じた。

見渡す限りのもの全てが黄金色に染まっている。

川原の草までも、ただの枯れ草ではなく、冬支度を一斉に始める気配がそこかしことしていた。


「母さん、元気だったか。今日は依子も一緒だよ」


父は墓石に水を掛けながら、母に話かけた。

依子も父の横で、手を合わせた。

そして、意を決したように静かに父に向かって話しかけた。


「お父さん、私、昨日お母さんの夢を見たの。

 そして、何故か、お母さんは今でも生きているんじゃないかと思った。

 どうしてなのか分からないけど、そう思えてしかたがないの。お父さんはどう思う?」


依子言葉に父はうろたえることなく、落ち着いた口調で答えた。


「そうだな、お父さんも今でもお母さんは生きていると思っているよ」


意外な父の言葉に、依子はにじり寄って父の上着の裾を握り締めた。


  やはり、あの夢は何かを暗示していたのだ。母は生きている!


そう確信した依子は、心の中で叫んでいた。


「でも、もう居ないのだよ。この世にはね」


次の瞬間、依子の期待は、父の一言で音をたてて崩れていった。


「えっ、今さっき生きているっていったじゃない。

 あれは嘘なの?」

「嘘じゃないよ。

 母さんは私の心の中では、いつまでも生きているってことさ。

 依子だってそうじゃないのか」


余りにも真剣な依子の表情に少したじろぎながら、父は穏やかに言った。

そして、落胆する依子の顔を見て、ぽつりぽつりと話始めるのだった。

母の行方 へつづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ