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多様なお客様をお待ちしております。

掲載日:2026/05/26

短編です

 今の時代、オーダーメイドの靴なんて、流行らない。

 何よりまず高いし、普段使いできない。そんな風に思われているのか、うちにはほとんど客が来ない。常に火の車。今は常連さんのおかげで何とかなり立っている状態だ。

 まぁ、一般的に売られているスニーカー、確かに履きやすいし、耐久性もそこそこあって軽い。そして何より安い。だからオーダーメイドの内の店はそろそろ・・・

「うん、ピッタリだ、ありがとう」

 お客さんにそう言われて、不穏な考えを打ち消した。有難いことに定期的にうちでローファーを買ってくれる、付き合いの一番長い常連さんだ。

「こちらこそ、いつもありがとうございます」

「妻にこの店の事を話したら、気になったみたいで、妻が今度お邪魔するかもしれません」

「わぁ、ありがとうございます!」

 物腰は柔らかで、スーツ姿がビシッと決まっている。そんな素敵な男性に合う靴を懸命に作り続けてきた。うちみたいな小さな店は口コミが大事だから、そう言う一言はかなり有難い。

 男性を送りだしてクローズの札を下げた。

 今から他の予約の靴を作らないと。個人事業主に休みは基本的にないようなもんだ。気楽なようでいて、なかなかに忙しい。

 外は暗い。あの常連さん、いつも夜に来るけど、彼も忙しいんだなぁ。勝手に戦友だと思っている。

 鼻歌交じりに皮を裁断していると、ドアが開いた。あれ、鍵閉めたつもりだったけど。

「すみません、今日はもう・・・」

 開いたドアから、大きな足が入ってきた。ソレも、特大サイズ。いや、人間の足ですらないかも・・・。

「コノ足ニ合ウ靴ヲクダサイナ」

 声は普通に女性の声なんだけど、姿かたちが人間じゃない。大きな足はミツマタに分かれている。これは、鳥の足?爪?なのか?

「爪ガ鋭イモノデ、柔ナ靴ダトスグニ穴が開イテシマウノ」

「あ・・・えっと・・・」

 俺は人間用の靴は作ったことあるけど、人外の靴は作ったことがない。こ、断らないと・・・。でもどうやって?大きな身長、鳥のようなふわふわの・・・体毛?頭と思しき場所には、ギラギラと光る金色の目・・・。怖い・・・。

「あ、じゃぁ・・・採寸・・・しますね」

 俺は何を言っているんだろう。怖い。でも、俺は靴屋だ。靴に不満のある人を見過ごせない。人じゃないけど。

 足の型を取って、サイズを測る。もはや人間の規格では役に立たないので、常識を捨てる。爪が気になるというんだから、爪が当たらない、そして耐久性に優れた素材を・・・。

「こんな感じでいかがでしょう?」

 設計図を見せて、素材についてを説明する。しばし説明を受けていたその女性?は、「ソレデ、オ願イシマス」と言って予約を取って帰って行った。

 俺は大急ぎで他の靴を仕上げ、その靴の製作に取り掛かった。気に食わない靴を作って、殺されるのは嫌だ。


 数か月の試行錯誤の末、とりあえず俺の満足のいく試作品が出来た。それを連絡すると、今夜行きますと返事が返ってきた。

 ドアの前で待っていると、常連さんがやってきた。

「こんばんは」

「え、あ、い、いらっしゃ・・・いませ・・・」

「妻の靴を見せてもらいに来ました」

「妻の・・・え?」

 常連さんの後に、あの足の女性?が一緒に入店した。

「あ、え?」

「マァ、素敵。コレデ試作品ナノ?完成品ニナッタラ、ドンナニ素敵ニナルノカシラ!」

 履いてみた女性?はとても喜んだ様子で、先払いで料金を支払ってくれた。ちゃんと日本円だった。


 その後、人と、それ以外の人たち?からも時々注文が入るようになった。


——まぁ、繁盛するなら・・・いいか?——

いらっしゃ・・・・いませ~・・・。

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