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第21話 ダンジョンへ × 超近接戦闘

 亮たち三人が受けたクエストは、「ダンジョンの定期巡回」と呼ばれるものだった。


 王国内にはたくさんのダンジョンがあるが、その大半はすでに探索し尽され、

「ウヒョー! 何度潜ってもお宝がザクザク出てくるぞ!」

 というレアなもの以外は、ほとんどが打ち捨てられているのだそうだ。


 とはいえ、

「完全に放置するわけにはいかんのよ」

 とトリプルV。


 なぜなら魔族や魔獣、山賊などが、そこを根城にするおそれがあるからだ。


 というわけで、定期的に巡回して安全を確認するという仕事が生まれた。


 ――と表向けには言われている。


 実際には、新人が場数を踏むための案件、または、食い詰めた冒険者を救済するための案件という色合いが強いらしい。


 これが初陣となる亮にはもってこいのクエストといえるだろう。




◇◆◇◆◇




 トカゲ車を降りた三人は、トリプルVが用意してくれたリュックを、一人一つずつ背負った。


 中には、冒険に使うグッズがいろいろと詰まっているとのことだった。


 三人は道をそれ、森に入った。


(モンスターが襲ってきたらどうしよう)

 とドキドキする亮だったが、

「安心しな。モンスターが棲むのはもっと奥の方だよ」

 とのことだった。


 十分ほど歩くと、岩山にぶつかった。


 山肌には人が一人通れるくらいの穴が開いていて、中を覗き込むと――、

(おお!)


 石階段が下の方に向かってグーッと伸びていた。


 また、壁全体が青白く光っていた。

 聞けば、特殊な菌が発光しているのだそうだ。


(こりゃすごい)

 亮の胸が高鳴る。


(まさにRPGでお馴染みのダンジョンそのものじゃないか!)




◇◆◇◆◇




「それでは出発!」

 と階段を下っていきたいところだが、いやいや、ダンジョンに潜る前にやるべきことがある。


 そう、いまだ正体不明の亮の能力、鑑定眼を発動し、できればそれがどのような力なのか確認しておきたい。


 亮は深呼吸。


 そして、

「いきます」


 唱えた。

「鑑定眼――アクティベート!」


(わが力よ、いまこそ本領を見せてくれ!)


 一秒経った。


 二秒経った。


 何も起こらなかった。


 亮は、ヒナとトリプルVに視線を向けた。


 もしかすると、

【ヒナ:女性。冒険者。スリーサイズはヒ・ミ・ツ♡】

 とか、

【トリプルV:男性。冒険者。前立腺肥大症の疑いあり】

 とか、そんな文字が浮かび上がってくるのではないかと期待したのだが、

(うーむ……)


 何も見えなかった。


 ヒナが訊いた。

「どう?」


 亮は無言でかぶりを振った。


「そっかー」


 彼女は自分の頭の上を指差して、

「このあたりに【スリーサイズはヒ・ミ・ツ♡】とか表示されていない?」

 と訊いた。


 トリプルVも同様に、

「【前立腺肥大症の疑いあり】とか出ていないか?」

 と訊いた。


「特にそういう表示は見えませんねえ。――ただ、おれたちはいい仲間になれそうだな、とは思いましたが」


「ん? どういう意味だい?」


「気にしないでください」


 結局のところ鑑定眼がどのようなものなのかわからなかったが、

「ま、ピンチになった時に動き出すタイプの力なのかもね」

 ということで、ダンジョンに潜ることにした。




◇◆◇◆◇




 三人は、石階段を下っていった。


 ひんやりと湿った空気が、肌を包んだ――。


 先頭のトリプルVが、

「足元に気をつけろよ。結構滑るぞ」

 と声をかけた。


「は、はい!」

 亮の声は硬い。


 一方、最後尾では、

「九時三十八分――アタック開始、と」


 ヒナが手帳にメモを取っていた。


 発光する菌のおかげで、ダンジョンの中はかなり明るかった。


 とはいえ、その光は青白い。


 白っぽい光や黄色っぽい光に慣れた亮からすれば、神秘的というか不気味というか、どうにも落ち着かないものだった。


 それに――コツ、コツ、コツ。

 足音が反響する。


 そりゃまあ洞窟内だ、反響するのが当然なのだが、やっぱり不気味な感じは否めない。


 亮の心臓はバックンバックン、バクバクバックン、激しく鼓動を打った。




◇◆◇◆◇




 ほどなくして階段が終わった。


 そこから先は通路が伸びていた。


 通路は車が二台並んで走れるぐらいの幅しかなくて、

(こんなところでモンスターと遭遇したらえらいことだぞ……)


 身震いする亮。


 彼は、

「フォ、フォーメーションはどうしましょうか」

 と訊いた。


 ラノベやアニメの知識だが、前衛とか後衛とかいろいろあったはずだ。


 ところが、

「フォーメーション? まあ、いまのままでいいんじゃないか? おれが先頭で、お前さんが真ん中、しんがりがヒナくん」

 と素っ気ないトリプルV。


 ヒナも、

「ああ、ボクもそれでいいよ」


 やはり興味がなさそうだった。


「あのぉ……」

 亮は食い下がる。


「いいんですかね?」


「何が?」


「ほら、戦略的というか何というか、もっと慎重に検討すべきかもなーと思ったり……」


「戦略的といってもなあ」

 トリプルVは肩を揺すった。


「まず、おれは戦士だ。専門は近接戦闘。それから――」


「ボクも戦士だよ。専門は近接戦闘。いや、超近接戦闘かな」


「それを言ったら、おれの専門だって超近接戦闘ってことになるな」


 二人の言葉を受けて、

「えーと」


 亮は目をしばたたいた。


「……つまりうちのパーティは、超近接戦闘を得意とする戦士が二人。それから見習いが一人。この三人ってことですか?」


「そうだな。その三人ってことだな」


「なるほど。あの、念のために確認したいんですけれど」


「何だい?」


「うちのパーティって――ちょっとばかり偏っていませんかね? そのぉ、全体的に前のめりというか」


「ああ」

 トリプルVがうなずいた。

「だいぶ前のめりかもな」


「うん」

 ヒナもうなずいた。

「だいぶ前のめりだね」


「ですよねぇ……」


 亮は、

(大丈夫なのか、これ!?)


(普通は、中長距離からの攻撃を担当する人とか、治癒や回復を担当する人とか、補助魔法を担当する人とか……パーティってもっとバランスを大切にするものじゃないの!?)


 一気に不安になってきた。


 それが顔に出たのだろう。


 ヒナが笑った。

「そんなに心配しないでよ。大丈夫大丈夫!」


「はあ……」


「だってボク、超強いもんね!」


「おい、おれだってメチャクチャに強いんだぞ!」


「ま、モンスターが出るのを楽しみにしていてよ」

 ヒナがウインクした。


(そこまで言われるとちょっと楽しみなような、でも、モンスターとなんて永遠に遭遇したくないような……)

 揺れる亮であった。

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