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第14話 俺の担当 × 未知の力

 メシを食った亮は、街に出た。


 亮は新しい服がほしかった。

 また、公衆浴場で身を清めたかった。


 ――が、彼の足は冒険者ギルドに向かっていた。


 何しろ今日は、亮の魔力の量や属性がわかる日なのだ。


(のんびり湯につかっている場合じゃねーだろ!)

 というわけである。


(いや、風呂にも入りたいんだけれどさ)

(じつはかなり頭がかゆいんだけれどさ)


 それはともかくとして、

(魔法だぜ、魔法!)


 亮は高揚していた。


 胸が苦しいほどだった。


(おれはどんな魔法を使えるのだろうか!?)


(収納魔法とか便利かもな!)


(でもちょっと地味かも?)


(うん、せっかく異世界にきたんだ。ここは一発ど派手に――「アイ・アム・アトミック」とかいっちゃうか!)


 と「陰の実力者になりたくて!」に想いを馳せるうちに、ギルドに着いた。




◇◆◇◆◇




 昨日対応してくれた猫耳の受付嬢は、すぐに見つかった。


 ギルドの中で一番元気ハツラツとしているのが、彼女だった。


 受付嬢の方も亮に気づき、

「おーい、トールンバさーん!」

 と手を振ってくれた。


 亮は小さく手を振り返しながら、

(ハア)

 心の中で嘆息した。


(困るんだよなあ……)


 何が困るのか?


(そういうことをされると好きになっちゃうじゃないか!)


(おれの非モテぢからを見くびるなよ!)


「昨日の続きで魔力検査を受けにきました」

 と伝えると、受付嬢は資料を確認して、

「あ、超ラッキーですね! いまちょうど空いていますよ、担当の検査士さん」

 とのことだった。


(担当?)

(担当って……)


 亮は当惑するが、

(ははあ、どうやらあの小太りで成金の先生がおれの担当ってことになったらしいな)


 亮は、

「わかりました。ありがとうございます」


 一礼して歩き出した。


 ところが、

(……ん?)


 なぜか受付嬢がついてきた。


 階段を上り、医務室の前に着いてなお、亮の背後には彼女がいた。


(……なぜついてくる?)


「あのぉ。もしかして立ち合われるんですか?」


「もちろんですよ!」

 受付嬢は破顔した。


「だって私、トールンバさんの担当受付嬢ですもん!」


(あ。この人はおれの担当だったのね……)


(おれの知らないところで、おれの担当がドンドン決まっていく……)




◇◆◇◆◇




 亮は昨日の検査で

「おほー!」

「おほー!」

 とアレな声を発しまくった手前、検査士に顔を合わせるのが恥ずかしかった。


 だが、

「やあ、きたね」


 検査士は笑顔で迎えてくれた。


 昨日のことなぞ、何も気にしていない様子だった。


(ま、そりゃそうか)

 と亮は思う。


(だってこの人は、あれが仕事なんだもんな)

(いちいち気にしてなんかいられないよな)


(しかしそれにしても)

(そうか、この人にとってはあれが日常か……)


(他人の「おほー!」を聞きまくる人生ってのはどんな具合なんだろう……)


 検査士は、亮の額に手を当てた。


 それだけでいろいろなものが見えてくるのだという。


「うん、いいね」

 検査士はうなずいた。


「チャクラはちゃんと開いているよ。魔力も安定してきている」


 ――そこまではよかった。


 しかし間もなく、

「ん……」

 検査士の顔から笑みが消えた。


「なるほど……」

 眉間にしわを寄せた。


「ほお……」

 目をつむった。


「これはこれは……」

 口がへの字になった。


 亮は堪りかね、

(こら!)

 心の中で叫んだ。


(意味深なつぶやきはやめろ!)


(なんかいろいろ怖くなってくるだろ!)


(まさか、「魔力は問題ないね。うん、バッチリだよ。あとね、膵臓がんが見つかりました」とか言い出すんじゃないだろうな!?)




◇◆◇◆◇




 検査士は亮の額から手を離し、

「はい、よくわかりました」

 と言った。


 彼は無表情だった。


 だがどこか、無理して笑みを抑えているようにも見えた。

 

(何だ、あの顔は……)

 亮はいよいよ不安になってきた。


 検査士は

「トールンバさん」

 と続けた。


「きみは『いいニュース』と『名状しがたいニュース』のどちらから訊きたいかな?」


(……ん?)

(名状しがたいニュース!?)


(こういう時って普通は、「いいニュース」と「悪いニュース」じゃなかったっけ?)


 亮が困惑していると、

「『名状しがたいニュース』からいきましょう」

 と受付嬢が言った。


「いや、『いいニュース』からいこう」

 と検査士が応えた。


「わかりました。そうしましょう」

 と受付嬢がうなずいた。


(おれの担当たちが、おれ抜きで話を進めていく……)


 亮は、世界のスピードに置いていかれそうだった。

(ああ。「BLEACH」の黒崎一護もこんな気持ちだったのだろうか?)


「『いいニュース』の方だがね」

 検査士が言った。


「おめでとう、トールンバくん! きみの魔力量はSSランクと認定する」


「SSランク!?」

 受付嬢が訊き返した。


「SSランクですか?」


「ああ、SSランクだ!」


「まあ、SSだなんて!」


「そう、SSだよ!」


「SSですね!」


「SSさ!」


(何だこいつら!)


 亮は自分一人だけ置いてけぼりにされているようで、面白くない。


 だって「SSランクです」と言われても基準を知らないのだから、どれほど喜んでいいかわからないではないか。


 そりゃSSだ。

 たぶんすごいのだろう。


 しかしじつは上にはUR(ウルトラ・レア)があります、LR(レジェンド・レア)もあります、という可能性だってある。


(それなのにS、S、S、Sと叫びやがって……お前らはエスエス製薬か!)


(おれは車酔いする性質だから、幼い頃からエスエス製薬の「アネロン」には世話になってきたんだぞ。あれは乗り物酔いによく効くんだぞ!)


 というわけで、

「あのぉ」

 亮は訊いた。


「SSというのはどれほどのものなんでしょうか?」


 検査士の説明によると、それは最上位ランクであり、

「世界全体を見回してもまず百人ほどしかいないだろうなあ」

 とのことだった。


 亮は

(そりゃすごい!)

 と驚くものの、

(……)


 どうにも現実感がなかった。


 自慢じゃないが、常に世界の下の方をうねうね、うねうねと這い進んできた亮である。


 世界トップ百の魔力量だなんて言われても、自分事には思えないのだった。


 亮が

(SSランクかあ。こりゃいよいよ「アイ・アム・アトミック」か?)

 なんてぼんやり考えていると、

「で、『名状しがたいニュース』の方なんだがね」

 と検査士が言った。


「トールンバくん、きみの魔力属性は未知のものだ」


 検査士には魔力解析眼という特殊な力があって、相手の額に手を当てると、

【攻撃(火)】

 だの、

【治癒(闇)】

 だのという具合に、その人が持っている魔力の属性が見えるのだという。


「この道ウン十年の私だがね、こんな属性は初めて見たよ。だからどういうものかよくわからないのだが」

 検査士は肩をすくめた。


「きみの魔力は――【鑑定眼】と出た」


 受付嬢は、

「へぇ、鑑定眼!」

 と歓声を上げた。


 片や亮は、

(鑑定眼……?)


 一瞬ポカンとしてから、

(か、鑑定眼!?)


(神から授かったあの鑑定眼か!?)


(ゴブリンに襲われて死にかけた時に使い、

【名称:ゴブリン】

【ステータス:餌を前にして興奮状態(※餌:あなたのことです)】

【備考:大変危険です。すぐに逃げてください】

としか教えてくれなかったあの鑑定眼!?)


(えー! あんな能力いらないよ!)


 心の中で悲鳴を上げる亮だったが、

(……あ!)


 ふいにピンときた。


(もしかして)


(もしかして対ゴブリン戦で使いものにならなかったのは――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 考えてみれば、神から授かったチート能力があんなヘボなはずがないではないか。


(そうだよ、そうに違いない!)


 亮はがぜん興奮してきた。


(神さま、マジ感謝!)

 天に投げキスを送りたい気分だった。


 ――が、神さまが気分を害したら困るのでやめておいた。


「ほんと素晴らしいですね、トールンバさん!」

 受付嬢が亮の背を叩いた。


「SSランクで、しかも未知の力ですってよ! えーと、カンチョーガンでしたっけ?」


 亮は、

「そんな尻がムズムズする力ではなかった気がしますが」


 思わず苦笑した。

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