夏の暑さに気をつけて
汗がポタポタ滴り落ちる。いつもと違う道を歩いたら迷ってしまったのだ。目的地にすぐ着くと思ったから水を持たずに出かけてしまった。
照りつける太陽を遮るものはない。なぜいつもの林の道を使わなかったのか。干からびた雑草を足で踏みつけとにかく前へ進んでいく。
(水……水がほしい……)
生唾をゴクリと飲み込むが乾きは癒えない。立ち眩みがしてそのまま地面に座り込んだ。
キーンと耳鳴りがする。
誰かの叫び声が聞こえた気がした。そして何かがこちらにころころ転がってきた。緑色の細長いそれを手に取り口に運ぶ。パリパリした食感、口に広がる水分、爽やかな味、生き返る。それを必死に平らげるとまだ他にも落ちていたから全部腹の中に入れた。食べきれない分は両手で抱えた。
思わぬ幸運に先程までの乾きが嘘かのように体が動き出す。暫く歩けば目的地に着いた。
目的地、それは鬱蒼とした林の中に流れる川だ。正確には川の中。手に入れた緑色の好物を隠し、まずは川に全身を浸ける。ああ、頭の皿の乾きも癒えていく。
さて元気になったことだし、今日は誰を引き込もうか。
河童はにんまりと笑うと水の中へ潜り込んだ。