漆
ゴトゴトと、洗濯機のドラム式が古いタイプなせいなのか、それとも設置の際水平が取れていないのだろうか。
深夜でも、洗濯できることが謳い文句で購入したのだが、やはり近所には憚られるほどの五月蠅さだ。
合わせて、給水時に発する水道管からの、水の流れる音。
ドラムの中、正面の覗き面からは洗濯物がその自身の重量に耐えることが出来ず洗剤の水と一緒に上まで回って一回転することなく、力尽き下に落ちるところが見える。
その繰り返しの様子を見ていると、どうも自分を見ている様で、決して上に上がることが出来ず力尽き落ちていく。
そう考えるとやり切れなくなり、そのドラム洗濯機の、のぞき窓から視線を切ろうとした刹那、女の顔がゆっくりとそのドラムの回転している泡の奥底に、クルクルと回っているのが見えた、視線をもう一度戻すとただ真っ暗なドラムの中で、洗濯物がそのまま変わらずのたうち回っているだけだった。
気のせい、錯覚、いや、待て、確かにそれは見えた。
自分の中で、そう反問しながら、停止ボタンを押そうと指を掛けた時、本能が、その行動を、全力で止めにかかった。
が。
それでも、その指は停止ボタンを押してしまっていた。
真っ暗な奥底に少し手を突っ込んでみた。
何のことは無い、自分の汚れものの衣類がズルリと絡まっているだけだ、洗剤の泡がダブダブと落ち、持ち上げた衣類の間から洗剤水が滴り落ちていた。
もう一度、ドラムの中の洗剤水に戻した。
その時、何かが俺の手を掴んで、ドラムの中に引き込もうとした、信じられない力で。
が、全力で払いのけ、ドラムの中から手を救出した。
おかげで、尻餅をつき、洗剤水がはじけ、俺と、床を水浸しにした。
キッチンから、その物音を聞いて、彼女がどうしたの、と、キッチン越しに聞いてきたが、いや、なにも無いと言い中を凝視した。
何も、見えなかった。
直ぐに脱水モードに切り替えた。
何ごとも無かったの様に、今の事を拒否するように。
金切り声にも似た高速回転のこの脱水音は、あの音は耳をふさぎ、その場から遠ざかりたい。
そんな衝動にかられた。
叫び声に似たこの音から。
メメヲおwとおしててテくださりありgあとうございますすすs。