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 水面を水中から見たらこんな感じなのか、と消えゆく意識の中で、ぼんやりみていた。

 手にはいつからだろうか、赤い糸でぐるぐる巻きににした人形を握っていた。


 なぜ、ぼくは、彼女をこんなにも愛していたのに、彼女の生活を全て知っているのに、彼女はぼくを愛しているはずだ、そうだ、だから振り向いてくれない彼女を振り向かせるため色々してきた、部屋の中全てが僕なのだ、この部屋で、ズッとズッと彼女を見ていよう。

 漂う水の中で、ぼんやりそう考えながら、やがて、その意識はプツリと途切れた。





 先輩、いいかげん警察でもないのに、入ってこないでください。

 規制線のテープを潜り、我が物顔で入ってきた、その先輩と呼ばれた男。

 その探偵はその声を聞いていない素振りで、片手をヒラヒラとその刑事に示し。

 彼女の話を最後まで聞いていた。

 メモの手を止め、ICレコーダーをストップし、じゃあ全くこの男とは面識がないと。

 と、繰り返すと、女性は何度も頷いた、恐怖で声も出さずに。

 当然だ、帰ってきたら見ず知らずの男が浴槽で溺死していたら、大抵恐怖に慄くだろう。

 赤い糸でぐるぐる巻きにした人形を握り締めて。


 盛り塩を浴室の角に置いていた。

 呪術か何かか。


 ぽつりと一人鬼ごっこ、ですかね。

 刑事、後輩の刑事は言った。


 まさか都市伝説の、ともう一人の警官が言った。


 呪い、祟りをバカにするもんじゃない、探偵はその警官を戒めた。

 人の怨念は・・・。と言いかけた時。

 ご遺体を運びます、と鑑識係が入ってきた。


 運び出されたその男を見て。


 おい、このご遺体の握っていた人形はどうした、と、探偵。

 え、証拠品として、持って行ったのでは。と、刑事。

 誰が?と鑑識係。


 刑事も、探偵も、恐らくそこに居る誰もが知らないでいた。

 点々と水の滴りの跡が浴室の外、部屋の外、玄関まで続いていてそこからぷっつり途切れていたことに。


 その事を誰も知らないでいた。 了


拙作に目を通して下さり、誠にありがとうございました。

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