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 トイレから水を流す音が。

 小なんだろう、短めの水洗の音が。

 水の流れる音が。

 上水の管を水が押し流され、タンクの中にその上水がコポコポと溜まりつつ、タンクにあった水が一斉に押し出し汚水を、汚水管の中に押し込める、低い音。


 そうしているうちに、上水が手洗いの吐水口から最初は勢いよく、やがて、その勢いは、下のタンクにあるフロートが、その水の量を制限し、やがて止まるまで。

 その勢いを徐々に弱め、そして、水で一杯になったタンクが音も無く、無音となった。

 今まで、その騒がしい、特に真夜中ともなるとその一連の音は、この世で一番大きいのではないかと思われるくらいの大音量を。

 そして、まるで、無かったかのように、嘘だったかのように静寂となる。


 中々、出てこない、扉の開閉音がしない、水が出た後の静寂が、タオルの擦る音、スリッパの足音、いずれも音が聞こえない。トイレで寝ているのか。

 まさか、と思い、倒れているのではと思い、ベットの布団を跳ね上げ飛び降り、トイレに駆け付けた。

 いない。

 スリッパはちゃんと並んでいる、彼女の癖だ。

 出て行っている、知らない間に台所か、洗面所に行ったのか。

 狭い家だ、すれ違うはずだ。

 一巡見て回りに戻ると、後ずさりするくらい驚いた。

 ベッドに彼女が戻っている、こちらに背を向け、その長い黒髪が布団から飛び出ていて。

 すでに眠るに落ちている様で、規則正しく、かすかに被っている布団が上下していた。

 少し、小さなため息をして、彼女を見て吃驚するなんて。

 いつも見慣れているはずなのに、と。

 自分を諫めるほどではないが、彼女に対し驚いて申し訳ない気持ちになっていた。

 少しの違和感が水のしたたりの様に心にあった。

 が、それは気のせいだと布団に潜りながら自分に言い聞かせた。


目を通して下さりありがとうございます。

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