第7話 2人で晩酌
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宜しくお願い致します~!!
「すいません。お待たせしすぎましたよね」
俺はカフェで待たせているシルフィさんを迎えに行った。
「お待ちしておりました。とても寂しかったですわ」
シルフィさんは安堵した笑みで答える。
たしか……DIYをするために必要な道具や資材を買い揃えるのに時間がかかった。
「とりあえず、別荘《家》に戻りましょうか」
「そうですね。寂しくした責任を取って頂かないといかないですし」
シルファさんが微笑みながら軽口を叩く。
個人的には少し慣れた感じで話をしてくれるのは嬉しい。
最初にDIYをするための資材は先ほど現金一括で買った中古の軽トラックに乗せた。
幸運なのは、前職のブラック企業でしっかり残業代が出たことと、
時間的な拘束が長すぎて給料や残業代を使うことはまったくなかったから結構な額の貯金があったこと。
だから、じいちゃんの別荘を直す分の資金はある。
やることも決まっているから、気持ちは前向き。
資材自体は重たいが、少しずつ運んでいけば問題はない。
ただそのためには、シルフィさんとエッチしなければいけないけれど。
「それでは準備は整いましたでしょうか?」
俺は一度荷物を積んだ軽トラを出庫し、精算機の近くに止めていた。
シルフィさんは助手席に座っている。
「よろしくお願いします」
俺がそう言うと、シルフィさんは緑の魔法陣を展開する。
魔法陣はトラックを全体的に巻き込む大きさ。
前に来た時よりも時間がかかっていそうだった。
「それでは目をお閉じ下さい」
すると、視界が白い光に包まれる。
怖いもの見たさで目を開けたらどうなるのか気になる。
まぁ……大して良いことは起きなさそうだからやらないけれど。
『チュッ』
「!?」
頬に湿り気に温かいものが触れる。
驚いて目を開けると、シルフィさんが頬を赤くしていた。
「申し訳ありません。不敬にも杏輔様が愛おしいという想いが溢れてしまいまして」
それでいて恥らいながら謝ってきた。
フロントガラスの先は、じいちゃんから譲り受けた別荘。
とりあえず、異世界に戻ってきたことだけは理解できたんだけど……。
「い、いや……全然良いんだけど……」
今、頬にキスされたってことかな?
いやね? たしかに昨晩はそれよりも過激なことをしたんだけどさ。
こういう初々しい感じなのを不意打ちでやられるのは、心臓に悪いんだよな。
年甲斐もなく、ドキドキしてしまう。
「それでは降りましょうか。私としては杏輔様とこのまま密室にいても一向に構いませんが」
「いや、行きましょう……お腹も空きましたし」
「承知致しました。それではお食事の用意を致します」
「いや、今日はもう遅いから事前に晩御飯を買ってきたんだ。それを一緒に食べようよ」
もう夜も遅いし、きっとシルフィさんも疲れただろうからシルフィさんをカフェで拾う前に買ってきた。
「杏輔様が用意して下さったんですか?」
「まぁ、大したものじゃくて出来合いのもので申し訳ないけれど」
簡単な総菜と軽く酔う分には十分なお酒。
年齢的には成人しているだろうから、一緒に飲めれば良いなって買ってきた。
「いえ、お気遣いありがとうございます。それではお言葉に甘えさせて頂きます。久しぶりに大きい物をゲートに通したので少し疲れました」
シルフィさんは微笑みながら言う。
きっと、俺が食事を用意したから気を遣ったのだろう。
シルフィさんは多分だけど、食事を作ろうと思えば作るくらいの余力はありそうだったから。
「ただ少し温めてからの方が美味しいので……」
「それくらいは私にやらせて下さいまし。そうじゃないとバチが当たりそうで怖いですわ」
「なんですか、それ」
俺はシルフィさんの冗談に少し噴き出してしまう。
「それじゃあお願いします。シルフィさんにバチが当たらないためにも」
正直、何のバチに当たるのか分からないけれど、
意気地に断る意味もない。
という訳で、俺は屋台で買ってきた焼き鳥数本が入った袋を2つ渡す。
それぞれ、タレと塩で買ってある。
「すごく……香ばしい匂いがしますわ……」
「それじゃあフライパンを持ってきてくれるかな。カセットコンロも買ってきたから、今はこれで温めよう」
「カセットコンロ……でございますか?」
そっかカセットコンロは聞き覚えなもんな。
「ちょっと待ってね」
俺は新品のカセットコンロを箱から取り出してガス缶をセットする。
そのカセットコンロをを木の机に置いて、ツマミをひねってテストで点火。
ボッと火が点いた。
「初めて見ましたが、すごく便利ですわね」
「まぁ、普通のコンロがあれば使う必要もないですし」
なにかあった時のために、一応買ってきた。
あとなんとなく、カセットコンロで温めた焼き鳥を異世界で食べてみたかったエゴもあるけれど。
「ちなみ、こちらは?」
シルフィさんは銀色の缶を見つめる。
みんな大好き辛口のビール。
「日本だと一番飲まれているお酒でビールっていうんだ」
「あぁ……麦のお酒でございましたよね?」
「そうそう……シルフィさんは飲める?」
「一応、こちらの世界にも麦のお酒はございますので、心得はありますわ」
「そっか。それなら一緒に飲もうか」
俺はシルフィさんに銀の缶ビールを渡す。
缶のプルを引くと『プシュ!』と爽快な音が響く。
「それじゃあ乾杯」
「乾杯」
俺とシルフィさんの二人。
缶ビールを当てると、
『カコン』という腑抜けた音が、別荘に響く。
そのままビールを喉に流し込む。
「ぷはっ! いや~! うまい! 異世界で飲むビールも乙なものだなぁ……」
今日の疲れがチャラになるような、
そんな罪の飲みごたえ。
「すごく飲みやすいですわね。麦酒の割には癖がなくて……私は好きですわ」
シルフィさんはビールを飲んでる姿もサマになっていた。
「でもツマミがあるともっと最高なんですよ」
俺はフライパンに油をひいて、
最初は塩系の焼き鳥をフライパンに並べる。
カワにハツ、ねぎまにナンコツ。
1人2本ずつを並べると『ジュ〜!』という油のはねる音と、肉の香ばしい匂いが食欲そそる。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺とシルフィさんは焼き鳥を頬張る。
俺の口の中にジューシーな鶏肉の油が広がる。適度な塩加減がビールを飲めと誘惑してきた。
その誘惑に負けて、俺はビールを飲む。
「そうそう、これこれ」
「これが杏輔様の故郷の味……すごく美味しいですわ。食べれば食べるほどビールも欲しくなりますし……」
「わかります。まぁ、故郷の味ではなくて、ただのお酒のお供って感じですけれど」
焼き鳥を食べている間にタレ系もフライパンで温める。
つくねとモモとカワ。
塩とは違う、タレの香ばしい匂いがたまらない。
「これも美味しいですよ」
そう言って、俺はつくねをシルフィさんに渡す。
俺もつくねを頬張ると焼き鳥のタレ特有の甘じょっぱい味が口の中に広がる。
それでもって、やっぱりビール。
「これも美味しいですわね……何も考えないとすぐに無くなりそうです。あ、麦酒もなくなってしまいました」
「お酒のおかわりはあるので、どうぞどうぞ。俺もちょうどなくなりましたし」
そう言って俺はシルフィさんにビールのおかわりを渡す。
俺も気がつけば2本目のビール。
本当に心地が良い。
「ごちそうさまです。結構、お腹いっぱいになりました」
シルフィさんは俺に微笑みかける。
ただちょっとちょっと肉食獣のような、獲物を狙う目になっているのが気になる。
「それと杏輔様……申し訳ございません。思ったよりも酔ってしまったので、そのままベッドに連れて行って下さいまし♡」
シルフィさんの目の焦点は明らかにハッキリとしている。
酔ったというのはきっと嘘なのは分かりきっているけれど、
「仕方ないですね」
「ふふふ……やっぱり、食欲を満たした後は性欲もまたしませんとね。ちょっとお酒のせいか身体が火照ってきましたし」
それはシルフィさんの性欲なのか、俺の性欲のことなのかは分からない。
けれど俺はシルフィさんとそのまま夜が明けるまで身体を重なるような気がしたし、
実際に昨晩よりも激しい夜を過ごしたのであった。
結局のところ、俺もシルフィさんとの夜を望んでいたのかもしれない。
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