脱出
風華さんと連絡がついて数時間、ふと外を見るとすっかり日が登っていた。辺りを見渡しても変わらず田んぼが広がっているばかりだ。
ん?今何か白いモノが見えたような?
やっぱり、あそこになにか……!?
ダメだ、あれは見てはいけないやつだ!
頭の中を覗かれるような…。頭がグチャグチャに掻き乱されるような、そんな感じがする。
やばっ、こっちに向かってきてる!
あぁ、もう、できるだけ動かないようにって言われてるのに!最悪だ!
隠れられそうなところを探しながら、俺は必死に白いナニかから逃げ続けた。
白いナニかは目がそこまでいいわけではないらしく、見失えばそこまで追いかけてこないみたいだ。
俺は長い草むらの中に身を潜め、助けが来るのをひたすらに待った。
(頼む、早く来てくれ!)
そうして何時間経ったのだろうか。
近くで何かが動く気配を感じた。なんとなくだけど人じゃない、さっきの白いナニかだ!俺の中の直感がそう告げていた。
(やばいやばい、今から飛び出すか?
いや、あいつは目が悪い。動かなければきっと……。)
幾重にも考えを巡らせている中、突然おぞましい悲鳴のような声が響いた。俺は恐怖で震えていると、聞いたことのある声が上から聞こえた。
「浅弥君、待たせたね。もう大丈夫だよ。」
そこには青白く光っている木刀を片手に風華雫が立っていた。
「まったく、君はすごいね。よく今まで生き延びてこられたよ。よくあるんだろう?こういうこと。」
「まあ、はい。知らない場所に飛ばされたのは今回が初めてでしたけど。」
「そうか、じゃあ知り合った後で運が良かったね。お姉さんから依頼を受けて、ちょうど君を探していたんだ。」
「そうだったんですか、わざわざすいません。
あの、白いアイツはなんだったんですか?」
「もしかして見たのかい?」
「ちょっとだけ。でも、なんかやばい感じがしてすぐに目を逸らしましたけど…。」
「そうか、それならよかった。
アレは『くねくね』といって、よく田んぼに現れる怪異さ。見続けると発狂してそのまま元には戻らないんだ。だから、君の判断は正しかったというわけだね。さぁ、もういないモノのことは置いといて、まずはここから脱出しようか。」
そう言うと彼女は手に持った木刀で何もない空間に斬りかかった。
すると、いきなり空間が歪みゲートのようなものができた。
「さあ行くよ?」
「えっ…うわっ!」
腕を引っ張られ、俺はそのゲートを潜った。気がつくとそこは昨日彼女に助けられた場所だった。
「さぁ浅弥君、お姉さんが待っているよ。」
「はい。」