幸せだった時間
ごく普通のどこにでもある幸せな家庭。クリスマスイブの夜、私は両親とともにクリスマスを祝っていた。
「「雫、メリークリスマス!」」
「わぁ、お父さん、お母さん、ありがとう!
プレゼント開けてもいーい?」
「もちろん、開けてごらん?」
2人から貰ったクリスマスプレゼントを開けると、中にはクマのぬいぐるみが入っていた。
「クマちゃんだ!ありがとう!」
ぬいぐるみを大事にかかえ、私は満面の笑みを両親に向けた。
両親と私がそれぞれ嬉しそうに笑い合っている、そんな幸せな時間。それが過去のものになったのはそれからすぐのことだった。
突然、窓ガラスが割れて家の中にナニかが入ってきた。緑がかった皮膚に大きな鉤爪、目を赤く爛々と光らせた化け物が、私たちに襲いかかってきたのだ。
両親は私を必死に庇ってくれた。そんな中、私はただ守られていることしかできず、両親が血塗れになっていくのを見ている他なかった。まずは父が、母と私の2人を庇って音もなく崩れ落ちた。
「お父さん!」
私の声を聞いた化け物はこちらを見た。ニタリと歪な笑みをこちらに向けたソイツは、父から私に興味を移したようだ。
ゆっくりと近づき、その手にある大きな鉤爪で私を切り裂こうと振り下ろした時、私は目をぎゅっと瞑った。
ぶしゃっと鮮血が舞う音がしたが、私は痛みを感じなかった。恐る恐る目を開けると、私の目の前には私を庇う母の姿があった。
「雫、どうか生きて…。」
母が倒れた。私の目の前で。私を庇って。
その時、私の中でぷつんと何かが切れる音がした。
化け物は私のその様子に気がつかないまま、とどめを刺そうと再び鉤爪を振り上げた。
その後、部屋中に響き渡ったのは、悲痛な叫び声とグチャグチャと肉を抉る音だった…。




