私と恋愛
話せば話すほど、大川は優しかった。休み時間も、大川と話しているのは楽しくて。ついつい時間を忘れてしまう程だった。
ある日、よく私をいじめる、竹田隆樹が言った。
「夕菜って、異性として遊星のこと好きなんだろ?」
遊星のこと、恋愛として?
「ちっ、違うよ!」
そもそも大川は、私がかわいそうだから一緒にいてくれているだけなんだろうし。
それに、大川には迷惑をかけたくない。
ずっとこんな私にも優しくしてくれている大川が、私のせいで傷つけられるのは嫌だ。
「友達としては好きだし、大切だよ?でも、恋愛とかじゃない」
訴える。ただまっすぐに。
これが、今の私の本心だから。
好きだし、大切だ。すごく。だけど、恋かどうかって言われたらどうなんだろう?
私は、恋ってしたことがなくて、周りの子たちを見ているだけだった。
正直に言うと、恋愛として好きなのかなんてわかんないし、恋というものがあまりよくわからない。
ただ、ずっと一緒にいたいって思ってる。それがどんな意味なのかは私にはちょっとよくわからなかったけれど。
「おーい!みんな聞いたか?夕菜は、遊星のことが好きだってよー!!」
大声で叫びだした隆樹。あ、ちょ。待って。その言い方、絶対に誤解されるやつ!
「ちょっと!違うって!」
必死に否定するけど、時すでに遅し。噂の広まるスピードはえげつない。
「え、やっぱりそうなの!?」
やっぱりって何よ。やっぱりって。
「最近仲いいよねあの二人!」
それはまあ、うん。否定できないけど。
「えーでもちょっと意外。もっと上目指せると思うんだけどな」
上?
「遊星なら俺の方が上っしょ!」
「いや、やめとけ?」
とかなんとか。若干不快な会話が広がっていく。
「あれ、夕菜。どうかした?」
うわ、タイミングよく……いや、悪く!?ご本人登場……。
「お、例の!」
「違うから!」
もうどうしようもない。
馬鹿にされてるってわかっているけど。これも、捉え方によってはいじめなのかもしれないけれど。だけど、私は今まで見たいに泣きたくはならなかった。
辛く悲しくもならなかった。
不思議なことに、私への視線の内容も変わって。
私の生活はちょっとずつ明るいほうへと変わっていった。
それに私は気づかないまま幸せな日々をおくる。
私の人生は、一気に明るくなっていった。
私は、大川と出会って、幸せだった。