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シリーズものです。
メリハリをつけるのは大事だ。
僕たちはこの2週間テスト勉強をしっかりやった。誘惑はたくさんあったが、それらを我慢した。
そして、今日テスト期間が終了した。勉強の成果は出たと思う。結果に憂うことはない。
テスト当日、学校は半日で終わる。僕たちは帰宅部なので午後からの部活動に出る必要もない。
時間はたっぷりある。それなら、誘惑の解禁を行おう。
ゲームの時間だああああ!!
「PAYLEX RECORD」。通称ペレ。
3人1組でチームを組んで他のプレイヤーを倒し1位を目指す対人向けFPSである。
僕とトオルと典男。丁度3人。僕たちは今、ペレにハマっている。
真っすぐ帰宅した僕は自室のパソコンを起動すると、ペレとボイスチャットを開いた。
ゲームが完全に立ち上がるまでに、僕は制服から部屋着に着替え、ジュースとお菓子を準備した。
完璧だ。
平日の昼間からゲームという背徳感も相まって気分は高揚していた。
「おーっす」
ボイスチャットから典男の声が聞こえた。
「よぉ」
僕はワークチェアに座り、パソコンの前まで引き寄せる。そして、マイク付きのヘッドホンを頭に掛けた。
「通は?」
「もうすぐ来ると思う。今日は部活の助っ人禁止って言っといたから」
「おまたせ。待った?」
ボイスチャットのグループにトオルが入ってきた。
「大丈夫。今来たばっか」
「準備はできてる?」
僕は2人に確認を取る。
「もち」
「オーケーだ」
「よし、今日はこれから夜までぶっ続けでいくぜ」
そう意気込んで始めたが、ゲーム内で待ちや移動中になると自然と静かになる。
「今日のテストどうだった?」
そして、暇でもある。
「俺はいつも通り心配いらないよ。通は?英語赤点回避できそう」
「今はペレに集中したい」
「現実逃避するなー。実際どうなんだ?」
「たぶん……大丈夫」
「マジで赤点はやめてくれよ。補習でペレできなくなる。……銃声!」
僕はすぐに音のした方向にマーカーを飛ばした。
「たぶん、あそこ」
「オッケー。どうする詰める?」
「いや、待とう。次の範囲がわからない」
ペレは時間経過で行動範囲が狭まってくる。円の中心はランダムで決まる。まだ、その円の範囲がわからないので、今の場所で待機することに決めた。
「いやー、楽して金稼ぎたいな」
典男が唐突に言う。
「わかる、印税生活したいわ」
「……なぁ、俺たちペレそこそこ上手いよな?」
「そうだな」
「しゃべりも上手いよな?」
「たまにスベってるけどな」
「3人で配信とかしねえ?」
また突拍子もないことを……。
「楽しそうではあるけど、それで稼ぐのは厳しくないか」
トオルは現実的な意見を言う。
「いや、でもイケると思うんだよね」
典男は食い下がる。
「試しにこの試合録画していい?ボイチャも録音する」
「いいぞ」
ボイスチャットから雑音が聞こえ始めた。
「オーケー始めたわ」
典男のその一言からしばらく無言だった。
「いや、しゃべってくれよ!?録画の意味!」
典男がさすがに痺れを切らした。
「今話すことないし」
「何か話題ない!?」
典男が会話の催促をする。
「普段意識して話さないから、そう言われてもパッと出ない」
「典男が振れば?言い出しっぺ」
僕はむしろ典男に催促した。
「え……。ええっと……、…………今日は天気イイね」
「天気デッキ」
会話が乏しすぎる。
「急に言われて出ない……」
「これじゃあ、配信者なんか無理だね」
「いや、トークじゃなくて、プレイ。プレイで俺たちは魅せるから」
そう典男が意気込んだ矢先だった。突如として、僕たちプレイヤーに銃弾が飛んできた。
「どこ!?」
「上!崖上!」
「そこの岩に隠れろ!」
「やられた!」
「マズイ、回復間に合わない!」
「あぁ!」
あれよあれよという間に僕たちは敵プレイヤーにやられてしまった。
画面にゲームオーバーとリザルトが表示される。
「ああ……」
「油断したね」
「録画はどうよ、典男」
煽るように訊いてみた。
「こんなん没だけど、一応確認するわ」
カチャカチャとパソコンの操作音が聞こえた。そして、しばらく後に、「うわっ!」と小さな悲鳴が聞こえた。
「どうした?」
僕が尋ねる。
「……自分の声聞いて死にたくなった」
典男から情けない返事が返ってきて、僕とトオルはツボには入ってしまった。
「もう、何もかもダメじゃん!」
僕は涙が出るくらい笑った。
その日は合計6時間ほど遊んだ。楽しい時間だった。
僕は将来もこうして3人で遊べたらいいなと心の底から思った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




