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シリーズものです。

「いっぱい叫んでたな」

 ジェットコースターを乗り終えてトオルが話しかけた。

「逆にトオルは声出してなかったよな」

「実はさ……怖くて声でなかったわ」

 はにかんで正直に答える彼に自然と笑みがこぼれた。

「だから、言ったろ。結構怖いって」

「見くびってたわ」

「あー、恐怖に引きつった顔見たかったな。もう一回乗ろうぜ」

「勘弁してくれ。典男と合流するぞ」

 トオルは降参と言わんばかりに小さく両手を上げた。


 合流地点にある噴水の縁に座り典男はスマホをいじっていた。

「おまたせ」

 声をかけると典男は気づいて立ち上がった。

「よー、ジェトコはどうだった?」

「トオルがビビってた」

 からかうように指差した。

「おい、言うなよ」

「典男はどうだった?」

「お、ばっちりだぜ。見るか?」

 僕たちは彼の画面を覗く。典男は画面をフリックして1枚1枚成果を見せる。

「これが一番エッチなコスプレだぜ」

 お気に入りの写真を見せてきた。確かにデコルテがしっかり露出しており、足もホットパンツによって太ももがはっきりと映っている。かなり煽情的だ。

「うむ、いいな」

「エッチだ」

「だろ。これを生で見れたんだぜ。来た甲斐があったってものよ」

 典男は満足そうに頷いている。

「じゃあ、帰るか……」

「ちょいちょいちょーい。さすがに俺もアトラクション乗るわ」

「何かこれで十分って顔していたから」

「こんなんじゃ満足できねえぜ」

「その前にご飯食べないか。お腹減ってきた」

 トオルがお腹を触って空腹をアピールする。

「もうそんな時間か」

「腹ごしらえして後半戦じゃー」


 昼食を食べて僕たちはまた遊園地を回る。

 コーヒーカップでは、僕が全力で回して2人の三半規管を壊した。

 典男に1人でメリーゴーランドに乗せて、そのシュールさに笑いながら撮影した。

 お化け屋敷では先頭を歩かされて絶叫した。

 楽しかった。

 友達との気楽さが心地良い、と僕は思った。

 トオルに対する気持ちは変わらないけど、まだ少し友達としての楽しさというのを感じていたかった。

 日が暮れかけて、閉園の時間が迫ってきた。

 僕たちは最後に観覧車に乗ることにした。

 僕とトオルが一方で、典男が1人対面に座った。

「いやー、楽しかった」

「1日中遊ぶなんて久しぶりだからな」

「今日はありがとう、典男」

「サンキュー」

「いいってことよ。この間のお礼みたいなもんだ」

「お礼?」

 何かしたかな?

「お前らが、一応ほら、女子の知り合いを紹介してくれたからな。そのお礼みたいなもんだ」

「……典男って、ホントに何でモテないんだろう」

 トオルが真剣な顔で呟いた。

「こんなイイ奴なのに」

「さぁ?男心と女心は違うとか?」

「いや、典男は外に見せてる言動に難があるだろ」

 僕が答えた。

「こう、僕たちを笑わそうとしてネタ全振りのことやっていたら傍から見たらさ」

「こういう生き方しかしてないから……」

「変えていくか、わかってくれる人に出会うかだね」

「ど、どうすれば……」

「まこっちゃんから徐々に人の輪を作る、だね現状」

「ぐぅ……。俺の気持ちとか男心とか理解してくれる子と出会いたい……」

「超能力者?」

「さとり?」

「無理って言いたいのかー!?」

 僕とトオルは思わず噴き出した。典男の言い方や表情やしぐさがついついツボに入ってしまった。

 ちょっと長く爆笑していた。その時、シャッター音が聞こえた。

 見ると、典男が僕たちの写真を撮っていた。

「不思議だよな、こうやって写真だけで見るとカップルにしか見えねえもん」

 典男が画面を見て笑った。

 僕は急に恥ずかしくなって、立ち上がって典男に乗りかかった。

 ゴンドラが揺れる。

「消せ、消せよ!」

「やだね。お前だってメリーゴーランドの動画撮ったじゃん」

「それとこれとは違う!」

 スマホを取り上げようとするが、典男は腕を伸ばして取れないようにしている。

「2人とも落ち着け」

 トオルが僕を羽交い締めにして、典男から引き離す。

「外から怪しまれるから、騒ぐなって」

 トオルに止められて、昇った頭の血が下りていく。それに合わせるようにゴンドラの揺れも安定してきた。

「別に変な写真じゃねえって」

 典男はそう言って、僕たちのグループに写真を共有した。

 スマホを開く。

 確かに写真は変なものではなかった。

 屈託のない笑顔で並ぶ2人の写真は、確かにカップルのそれにしか見えなかった。

 夕日が僕らのゴンドラの席を照らした。

「綺麗だな」

 トオルが話題が逸らすように言った。

 僕たちの乗るゴンドラは最高所に到達していた。そこから見える沈む夕日ときらめく海は確かに綺麗だった。

 僕たちはそれから無言だった。気まずいからではない。たぶん、きっかけだったと思う。

 次この景色を見るとき、僕たちの取り巻く立場や環境はガラッと変わっている。だから今この瞬間を瞼にしっかり焼き付けておけ、そう知らせているように少なくとも僕には映ったんだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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