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シリーズものです。

 遊園地に着いた。

 僕たちは1人分のチケットを割り勘して、典男が持ってきた2枚のチケットと共に入園した。

「どこ行こうか」

 トオルが早速尋ねる。

「ジェトコ!ジェトコ!」

「ジェットコースターをそう略す奴初めて見た」

 典男がツッコむ。

「じゃあ、ジェットコースター行くか」

「あ、俺はパス。高いの苦手なんで」

 典男は高所恐怖症だ。

「そっか、じゃあ止めるか?」

「いいよ、2人で行ってきな。俺はそれまで……」

「メリーゴーランド乗ってる?」

「寂しい!」

 自分で言っておいて、1人寂しくメリーゴーランドに乗る典男の絵面を想像して笑った。

 笑われている本人は意に介さず、スマホの画面を操作している。そして、お目当ての画面を見つけて僕たちに見せつけた。

「コスプレイベント?」

 その画面の記事にはこの遊園地でコスプレイベントが開催されることが書かれていた。

「ここで今日イベントあるんだよ。2人がジェットコースター乗ってる間にこっちで楽しんでくるぜ。ひゃっほー」

 彼は屈託のない笑顔でイベント会場に向かって行った。

「黄瀬呼ばなくて正解だったね」

「だね」


 ジェットコースターはこの遊園地で人気のアトラクションだ。当然乗るまでの待ち時間がある。僕たちは待機列に並んだ。

「久しぶりだな、ここ来るの」

「来たことあるんだ」

「小学校の時家族とね。……友達と来るのは初めてだ」

「俺は初めてかな」

「へー、ここのジェットコースター、結構怖いよ。大丈夫?」

 僕は恐怖心を煽るように言ってみた。

「はは、怖かったら要に抱き着こうかな」

「骨折られそうだ」

 軽く冗談を言った。でも、ちょっと体が熱くなった。

「ねえ……トオル」

「なに?」

「トオルは彼女とか作らないの?」

「突然どうした?」

 本当に突然だ。どうしたんだろう、僕。

「ほら、典男はモテたいモテたい言っていただろ。トオルもさ、男だからそういう欲求みたいなのあるのかなって」

「それは要だって言えることじゃないか」

「僕は、姉貴のせいでちょっと女性が苦手なんだよね。あんまり彼女がほしいって願望がないんだ」

「そうか……。俺も典男に比べたらそこまでかな」

「モテてるのにね。告白とかされるんじゃない?いい子とかいなかったの」

「告白されたことはあったけど断ってるよ。……それより本当にどうした?」

 いつもと違う雰囲気に、トオルは心配そうに僕を見つめている。

「いや、何かさ、ふと思って。典男が僕たちにも女性の知り合いを作らそうとしていた時に、トオルならすぐにそのまま付き合うこともあり得るなって。想像して。そしたら僕とも遊ぶ時間が減っていって関係が変わってしまうのかなって。ずっと一緒で遊んでいたのに、そうならなくなっちゃうのかなって。そんなこと考えたら怖くなってきちゃって」

 少し嫉妬も混じっていた。でもそれは口に出さなかった。ズルい自分が少し嫌になった。

「はは……」

 その笑い声には安心させるような気持ちも混じっているようだった。

 トオルは僕の頭に軽く、その大きな手を乗せて優しく撫でた。温かい熱を感じる。

「そんな心配するなって。仮に彼女ができたって俺たちの友情が消えるわけじゃないだろう。それに今は、彼女作って遊ぶよりも要たちと遊んでいる方が何倍も楽しいんだ」

 友情。そうだ友情だ。トオルにとって僕との間にあるのは友情なんだ。

 僕はどうだろうか。本当に友情だけだろうか。わからない。今は結論を出せない気がする。

 トオルの言動に僕は自然に笑みがこぼれた。

 いつも不安になったとき、トオルは僕を勇気づけて安心させてくれる。そういうところが好きなんだ。思わず口から言葉が漏れる。

「ありがとう、トオル。好きだよ、友達として」

 僕はズルい男だ。

「ああ、俺も好きだ」

 トオルは嬉しそうな笑みを僕に向けてくれた。

 ついにジェットコースターの順番が回った。

 座席に座り、安全バーを下して、ジェットコースターはゆっくり動く。そのまま上昇して、最高到達点で、ピタリと止まる。そして次の瞬間一気に加速して落ちていく。

「あああああああ!!」

 僕は叫んだ。

 嫉妬や飲み込んだ気持ちを一気に曝け出すように僕は叫んだ。喉が枯れる勢いで吐き出した。

 スッキリするまで気の済むまで、ジェットコースターが終わるこの短い時間に気持ちを可能な限り詰め込んで、僕は目一杯叫んだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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