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シリーズものです。
燦燦と照り付ける太陽。セミの鳴き声。
「あっちいー」
典男はシャツの襟元をパタパタと振って風を送っている。
僕は下敷きを団扇代わりに扇いでいる。
開きっぱなしの窓から入ってくる風では全く足りない。
「もう夏だな」
水筒の水で喉を潤してからトオルが言う。
「一気に暑くなり過ぎ。もうちょっと刻んでくれ」
僕は不平を漏らす。
「プール行きてえな」
「わかる」
典男の提案に同意する。
暑すぎてどうも短い会話しかできない。
「海とプールどっちがいい?」
「プール」
「海」
プール派の僕と海派のトオルで意見が分かれた。
「ウォータースライダーとか乗りたいじゃん」
「俺はビーチバレー」
「この際両方行くか?」
スポーツドリンクをゴクゴク飲み干して典男が言う。
「いいけど……」
「何か企んでる?」
「水着女子を見れる確率が2倍に……」
そんなことだろうと思った。
「あれ、いつものハイテンションじゃないな」
僕は言う。
「この暑さだとさすがにな」
「えー」
「要、煽るな」
トオルが僕を諫める。
僕は無言で期待の目を典男に向ける。
「目で訴えるな」
僕は典男という人間を熟知している。こいつはこういう期待に応えてしまう性分なのだ。彼は勢いよく立ち上がった。
「うおおお!海にプール、水着姿の美女をこの目に……」
竜頭蛇尾。だんだんと暑さに参ってテンションと共に姿勢も下がってきた。
ドタッと椅子に倒れるこむように座った。
「大丈夫か?」
トオルが心配して声を掛ける。
「汗がぶわっと噴き出したわ」
トオルは自身の水筒を渡した。蓋を開けて、ゴクゴク飲む。
「要」
トオルは怒った視線を僕に向けた。さすがにやり過ぎた。
「ごめんな、典男。お前の行動に敬意を表しよう。まこっちゃんたちを誘ってみるわ」
「許す」
典男は笑顔でサムズアップした。
「でも、その前に期末があるな」
「あー」
典男は机に突っ伏した。しかしすぐに起き上がった。
「でも今回のテスト勉強は桃乃井さんが来るから」
「あー、そうだね」
僕はふと、あることを思いついた。
「もし可能なら藍上くんも呼ぼう」
「学級委員の?」
トオルが尋ねる。
「そう、話すようになってね」
「なんか、要最近色んな奴と仲良くなっていくな」
「なんかね」
僕は困惑交じりに顔を綻ばせた。
「その藍上は勉強得意なのか?」
トオルが訊いた。
「学年1位だよ」
「マジ!?ぜひお願いしたいわ」
典男が食い気味に言った。
「いやー、ここまでテスト勉強が楽しみなことないわ」
「確かにな」
僕は椅子に深く背もたれた。ふと窓の外に視線が動いた。
大きな入道雲がそこにはあった。
夏休みまであと少し。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




