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シリーズものです。

 僕たちは2-5の教室前に来ていた。

「不思議だよな」

 典男が急に話し始めた。

「自分の教室には平気で入れるのに他の教室だと憚られる。何か結界が張られているんじゃないかって思うよ」

「気持ちはわかるよ。……よし行こうか」

 ドアに手を掛けようとする僕の腕を典男が掴んで止めた。

「やっぱり今日じゃなくてもいいじゃない?」

「そう緊張するな」

 トオルが典男の両肩に手を置く。そして、リラックスするように揉んだ。

「最初の相手としては適任だと思うぞ」

「そもそも、モテないと嘆くお前のために女子の知り合いを会わせるんだからな、お前が止めてどうする」

「だけどさ……」

「言い訳不要。イクゾー」

 僕はガラッとドアを開けた。そして、教室内を見回して彼女を見つけると声を掛けた。

「まこっちゃーん」

「あ!かなめくーん」

 彼女は僕を認識すると、ドアの前まで駆け寄ってきてくれた。

「珍しい。かなめくんが会いに来るなんて」

「まぁ、今日は色々あってね」

 僕は改めて彼女を見る。

 日に焼けた褐色の肌。さっぱりした短髪。柔らかな表情。そして、女子の制服。彼女は元気溌剌女子高生だ。

「やぁ」

「あ、とおるくんだ。おひさー」

 トオルにも敬礼のようなポーズで挨拶する。

「なになに、今日は何かあったっけ?」

 彼女は事情がわからないといった感じで頭にハテナを浮かべている。

「今日はまこっちゃんに会わせたい人がいます」

「えー!だれだれ?」

 彼女はキョロキョロと視線を泳がせて相手を探す。すぐに典男を捉えた。

「わー、はじめまし……ってあれ?もしかして青山くん?」

「え、あ、俺のことわかるんスか……」

 典男は完全人見知りで、困惑している。僕は内心この反応をおもしろがっていた。

「え、もしかしてあたしのこと忘れた?黄瀬誠(きせまこと)だよ?」 

「黄瀬……誠……?え、黄瀬誠!?」

 典男のリアクションを見て僕は思わず笑ってしまった。

 説明しよう!

 僕たち4人は同じ小学校だった。小学生の時は4人で遊ぶこともあって、皆から「チーム信号機」と呼ばれたりした。

 僕たちは、学区ごとに進学する中学校が違っていた。僕とトオルとまこっちゃんは同じで、典男だけ別の中学校だった。

 そういうわけで、典男には僕たちと3年間のいわゆる空白期間があったのだ。

 え?なんで中学校の時に会うなり遊ぶなりしなかったかって?

 それは典男の血迷った宣言があったからだ。

 あの時、典男(バカ)は「俺はこっちの中学で強くなって帰ってくるよ。それまで顔を合わすことはしない。寂しいがそれまでお別れだ……。会おう!3年後同じ高校で!ドン!」とカッコつけて言った。

 なんか漫画の影響を強く受けていた。痛々しかった。

 そういうわけでこいつが彼女と会うのは3年、いや4年ぶりになった。

 思春期を経て大きく見た目が変わっていたので、典男(バカ)は今まで気づいていなかったのだ。

 はい、説明終わり。

「お……お前、お前……」

 典男はわなわなと震えていた。

「ん?」

「お前、女だったのか!?」

「え、ひっどーい!」

 まこっちゃんは怒った。

「まぁまぁ、まこっちゃん落ち着いて。典男は高校で僕と再会した時も同じようなこと言ってたから」

「えー!女の子だと思われてたの!?」

「なんで2人で性別シャッフルしてんだよ……」

 典男は頭を抱えている。

 当時、彼女は基本短パンで髪も今よりもっと短かった。日焼けもばっちりしていた。

 一方僕は姉貴に捕まって時折スカートを履かされていたりしていた。

 二次性徴を迎えなければ見分けることは難しかったかもしれない。

「で、どうよ」

 僕は肘で典男を小突く。

「これなら大丈夫だろ」

「ハメたな……」

「昔のお前の自業自得だと思うぞ」

「どういうこと?」

 何も知らない彼女に事情を説明した。

「なるほどねー、つまり青山くんは女子の知り合いが欲しいと……。いいよ、あたしが友達にまたなったげる」

 まこっちゃんはグッドサインを出す。

「助かる、これで典男の奇行がなくなるな」

 トオルが安心して呟いた。

「またなんか変なことしてるのー?」

「教室で「何でモテないんだー!」と叫ぶんだよ」

「うわっ……」

 ガチトーンだったな今の。


 2-5の教室を後にして3人で廊下を歩く。

「お前ら知ってたな」

 典男は若干不機嫌だ。

「まぁ、約束は約束だろ。いやー、それにしても面白かったなー、他人行儀になってる典男を見るの。気づいた時の反応もガチ爆笑」

 僕は気持ちよい気分で笑う。トオルも同じようにニヤニヤしている。

「今度はお前たちの番だからなー?」

「なにが?」

「お前らも女子の知り合い作るんだよ」

「僕らは困ってないからな」

 トオルを見ると同意するようにコクリと頷いていた。

「いや、作ってもらう。そうしないと俺の溜飲が下がらん」

 これはちょっとふざけすぎたかもしれない。

 僕とトオルは示し合わせた様に駆けだした。

 典男が追いかけてくる。

 僕は典男に向かって言った。

「今日はパース!」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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