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シリーズものです。
最近思うことがある。
女子と仲良くなりまくっている。
朔さん、薫さん、水嶋姉妹。4人だ。
きっかけは全部偶然だが、今までを考えると爆速も爆速だ。
このまま巨大ハーレムを形成するまで女子が増えるんじゃないかと予想している。
僕はさながら主人公。
この状況を喜ばない男子はいないだろう。
でも、僕は……。
トオルのことが好きだ。それが親愛か恋愛かは置いといて。
だから複雑だった。
女の子に好意を向けられることは嫌じゃない。むしろ嬉しい。
だが、もし仮にそのような状況になったら僕は葛藤するだろう。
それはトオルのことを考えてしまうからだ。
トオルに対する感情を明確にしなければいけない。
その前に女子から恋愛感情を向けられたら僕はきっと決断できない。
絶対に後悔する事態となるはずだ。
ふと、僕は図書館でそんなことを思ってしまった。
全く関係ない時に不意に大事なことを考えてしまうことはよくあった。
僕は本の背に指を引っかけながら、固まったように動きが止まっていた。
1、2分ほどそのままだった。その間に誰も通らなくてよかった。
僕は最近図書館に通うことがあった。それは図書館で音楽の技術書を読むためだった。5年のブランクがある。細かい技術なんてものは忘れてしまった。いや、基礎の基礎部分も独学になってしまっているかもしれない。
そういうこともあって少し勉強し直す必要があった。ただ、これは趣味であることと、お小遣いを節約したいためにお金を浪費せずに済ませたかった。
だから僕は図書館で本を借りて勉強している。
本を返却した後、僕は次の本を探すために音楽カテゴリーのコーナーを当てもなく見ていた。
その時、ふと気になった背表紙を見て、手に取ったときあんなことを考えてしまった。
僕はその本を取る。
『音楽家の知られざる恋愛事情』
そう書かれた本の表紙を見る。タイトルと教科書で見たことある音楽家の肖像画が貼ってあるシンプルなデザインだった。
これのせいであんなことを……。
僕は苦笑した。
特に読むつもりもないのに、開いてパラパラと捲った。
内容は音楽家の偏愛やクズエピソードが書いてある、特に目映るするものもない普通の本だった。
僕は本を閉じて元の場所に戻した。
その後、本来の目的である技術書を数冊見つけて借りるために司書の受付に向かった。
「あ、こんにちは」
僕はその時、知り合いとすれ違った。
藍上伊織。僕のクラスの学級委員だ。スクエア型の黒縁眼鏡とほっそりした眉に丸い黒髪、なで肩。気の弱そうな成分ふんだんに詰まっている彼は、学級委員を務めさせられた。しかし、彼自身無理矢理ということはなく、率先してみんなの面倒ごとを手伝ってくれる優しい人物である。それはクラスメイト全員の意見だと思っている。
「こんにちは。最近よくすれ違うね」
「そうだね。藍上くんはこれから勉強?」
「うん」
「真面目だね」
「そんなことはないよ。家だとサボっちゃうから周りに人がいる環境で勉強しているだけさ」
「それが真面目なんだよ。僕なんてテスト勉強でしか頑張らないよ。それも一夜漬けの場合もあるし」
「はは、僕は勉強ぐらいしか取り柄がないから」
彼は自嘲気味に言う。そういう彼のテストはいつも学年1位だ。
「一色くんみたいに音楽の才能があったら楽しかっただろうけどね」
彼は僕の借りる本を一瞥して言った。
「最近頑張っているよね。ジャンルは違えど君も真面目だよ」
トオル以外に褒められて気恥ずかしかった。
「じゃ、じゃあ、僕そろそろ行くね」
だから、僕はその場を後にしようとした。
「うん、ピアノ頑張って。また学校で」
「藍上くんも勉強頑張って。またね」
手を振って別れる。彼は図書館のフリースペースへと消えていった。
僕は単純な生き物だ。彼に褒められてやる気が湧いてきた。
僕は踵を返して受付に向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




