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シリーズものです。
「俺は……夢を見ているのか」
「聞いたぞ、前に」
僕たちは屋上でお昼ご飯を食べていた。
それも大所帯で……。
ああ、目立ってる目立ってる……。
「今日はよろしくお願いします!」
優貴さんがみんなに挨拶する。
「ごめんね、勝手にお邪魔して」
まこっちゃんが謝る。
「そんなことはないですよー。みんなで食べるのは楽しいですからー」
優里さんは笑顔で言う。
「でも、俺たちがいても大丈夫なのか?」
トオルが尋ねる。
「大丈夫だよ。何も心配しなくてOK」
トオルの背中をバシバシ叩きながら仕掛け人の薫さんが答える。
「こんなに女子に囲まれて食事ができるんだよ!この幸福を何も考えずに享受しなさいな」
「はい!幸せです」
「お前に言ってない」
典男に僕がツッコみを入れた。
「男の人……がいっぱい……」
朔さんは限界が近そうだ。膝を丸めて縮こまっている。
「朔ちゃん大丈夫?」
そばの優里さんが彼女の背中を擦る。
朔さんは不安そうに僕たちを見る。2人とは初対面だから余計に緊張するんだろう。
「朔さん、2人は僕の友人なんだ。こっちの典男は危険人物だから関わらない方がいいけど、トオルは優しいから安心していいよ」
「何を言う。俺は紳士だぞ」
「こいつの言うことは一片も信じなくていいからね」
僕と典男のやり取りを見ていて、朔さんはクスリと笑った。
「こんな先輩……初めて……」
僕が辛辣な発言をするのが新鮮なのだろう。
「お前こそ紳士ぶってるってことかー?もっと俺に対する言動してみな。本性だしな」
「後輩の女子に出せる態度じゃねえだろ」
よっぽどツボなのか、朔さんは声を押し殺しながら笑い続けている。
「俺のおかげで彼女に笑顔が……」
「呆れてるだけだよ」
「へー、薫先輩はバンドやってるんですねー」
「そうなのよ、優里ちゃん。たまにライブハウスで演奏もしているよ」
「……すごい」
「ぜひ聴きたいですね!」
その言葉を聞いて、薫さんの瞳がキランと光ったような気がした。
「そうかそうか、もし良かったら今度聴きに来ないかい?」
そう言って彼女はライブのチケットを手渡す。
「絶対後悔させないよ」
彼女は自信満々に言い放った。
強か!こうやってファンを着実に増やそうとしている。
え……というか僕利用された?
「そういえば要、お前どうやって紫野塚さんたちと仲良くなったんだ?」
「おーそう言えばそうだね」
典男の疑問に薫さんが乗る。
「どうやって、彼女たちと出会ったのかなー?」
彼女は面白がりながら訊いてくる。
……マズイ。
理由が理由だけに言えない。
「たまたま出会って知り合ってね……」
嘘が下手じゃない?歯切れも悪いし、疑いの目を向けられているような気がする。
「あれ、でも先輩あの時なぜか1年生の廊下にいましたよね?」
優里さんそこは思い出さないでほしかった……。
「ほうほう……」
薫さんにこれ以上面白そうな情報を流さないようにしないと……。
でも、だからってどうすれば。
「つまり!先輩は会いたい人がいたと!」
優貴さんが鋭い指摘をする。
「なにっ、要お前誰か気になる奴が1年にいたのか!?」
典男が興奮して声を上げる。
「だ、誰なんだ!?」
「お、教えねー」
目の前にいる朔さんだったなんて言えるわけがない。理由も言えない以上、誤解しか招かない。
「通!要が裏切るぞ!」
典男はトオルに絡んだ。
「まぁ、要がどんな人に気があろうと、俺たちに言いたくないならこれ以上詮索するのは止そう」
トオルは落ち着かせるような口調で諭した。
トオル……。ありがとう。
「まぁ、私は諦めないけどね」
薫さんは僕を見つめてニヤリと笑った。
彼女は僕にとっての天敵なのかもしれない。僕はこの時そう思った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




