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シリーズものです。

 週末、僕たちは本来無縁な場所にいた。

 ライブハウス。

「不思議だよな。初めて入る場所ってのは結界を張られたように入りづらい……」

「何か似たような会話前にしたぞ」

 典男が玄関前で立っている。ドアを開ける腕は緊張で震えている。

「早くしてくれ」

「わかっている。大丈夫だよ」

 僕が代わりに開けようかと思った矢先だった。

「なにしてるの?」

 典男の体が一際大きく跳ねる。

「あ、まこっちゃん」

「もしかして、みんなもかおるちゃんのライブに呼ばれたの?」

「そうなんだ」

「じゃあ、さっさと入ろう」

 彼女は普通にドアを開けて入る。典男もつられて入った。……入らされた。

 僕とトオルも続けて中に入る。

 ハウス内は薄暗く、ステージはスポットが当たって眩しいくらいだ。

 外観から見た感じよりも中は広かった。

「こんばんは」

 チケットを販売している店員さんが話しかける。

「チケット4枚お願いします」

 まこっちゃんが手で「4」を示す。

「8000円になります」

 各々財布から2000円を出してまこっちゃんに渡す。

「お願いします」

「ありがとうございます」

 店員さんはチケットとドリンクチケットを貰う。

「まこっちゃん手慣れているね」

 チケットを受け取りながら彼女に尋ねた。

「まぁね。かおるちゃんのライブはこれで3回かな」

 ライブハウス経験者の彼女に教えてもらいながらドリンクを貰い、薫さんのバンドの出番を待つ。

 彼女の番まで他のバンドの曲を聴く。失礼かもしれないが、テレビで見るようなプロと比べるとそこまでうまくはない。ピアノを習っていたからか、人よりは音というものに詳しい。だから、音程のミスやリズムのズレなんかはわかってしまう。でも、それでもどのバンドも真剣に演奏している熱意は伝わる。音に気持ちを乗せる。僕は苦手だったそれを彼らはできていた。

 人はぼちぼち入っている。僕たちが薫さんのバンドを見に来るようにそれぞれの目的のバンドがあってみんな来ているんだ。当たり前だけどそんなことを思った。

「次だよ」

 まこっちゃんが薫さんの番を知らせてくれる。

 彼女のバンドが登場する。ギターボーカルの彼女はステージの真ん中に立つ。

 彼女は周りの客を一瞥する。その中に僕たちの姿を見つけると、気づいたサインのようにウィンクをした。

「ガールズバンド『ハレルヤ』です。今日も盛り上がっていきましょう!」

 その掛け声とともに彼女のバンドの演奏が始まった。

 ドラムがリズムを刻み、ベースとギターの音色が流れる。イントロが終わり薫さんの歌声が乗る。彼女は普段の話し声より低くハスキーな歌声だった。

 その声色は彼女が歌っている曲に良くマッチしていた。

 ギターを弾きながら歌う。それはかなりのエネルギーを使うのだろう。彼女の額から汗がにじみ、流れる。その汗は照明の光に照らされて輝いて見えた。

 身内贔屓かもしれないが、今日聴いたバンドの中で彼女のバンドが一番上手く聴こえた。


 ライブが終わり、僕たちは帰宅する。

「どうだった?」

 まこっちゃんは自慢するように僕たちに尋ねた。

「いやー、凄かったわ。何かふざけてバンドやろうとしていた俺がバカだったというか」

 珍しく自身のバカっぷりを典男は自覚していた。

「同級生で、あんなステージで堂々と演奏するって、素直に尊敬できるな」

 トオルが僕のうまく言語化できていなかった感想を代弁する。

「かなめくんはどうだった?」

「僕?僕か……。凄かった。なんだろう。正直あまり期待していなかったけど、聴いてたら感動した。薫さんは本当に音楽が好きだって伝わる歌い方だった……っていうのかな。ごめん、うまく感想言えないや」

「ううん。それで十分だよ」

 まこっちゃんは嬉しそうに微笑む。

「実はね、かおるちゃんはかなめくんに一番聴いてほしかったんだ。私がかなめくんがピアノをやってたことを話したら是非演奏を聴いてもらいたいって……。その感想を言ったらかおるちゃん、喜ぶんじゃないかな?」

 僕のスマホに通知が届く。

 薫さんから『今日の演奏どうだった?』と感想を求めるメッセージが届いた。

 僕は指を動かして返事をした。

『凄く良かったです。聴いて感動しました。歌声も曲も演奏も僕は好きです。』

 好きという表現は普段なら決して使わない。それでも今こうして書いてしまったのは、僕自身のテンションが上がっているためだろうか。

 僕は躊躇わず、送信の画面をタッチした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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