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シリーズものです。
僕の学校の屋上は開放されている。
お昼ご飯をそこで済ます人も少なくない。
だが、僕はいつもトオルたちと自分の教室で食べる。
ただ、今日は違った。
「あー、先輩こっちです」
「ここです!」
頼む。あまり大きな声で呼ばないでくれ。目立つ。
みんなの視線が集まる。そして、背の高い彼女に驚く。余計目立つ。
僕は朔さんと水嶋姉妹に昼食を誘われていた。
「遅れてごめんね」
どこかで食べようとする僕を探ろうとする典男を撒いていたので遅れたのだが、理由が理由だけに言わなかった。
「大丈夫です」
「大……丈夫」
相変わらず朔さんの返事はぎこちない。
僕たちは貯水槽近くに腰を下ろした。
「いただきます」
僕と水嶋姉妹はお弁当箱を、朔さんはレジ袋からパン2つと紙パックのコーヒー牛乳を出した。
「朔さんはパン派なんだね」
僕は普通の質問をしたと思った。しかし、彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。
「?」
「あー、先輩。実はですね……朔ちゃんは……」
「朔は食いしん坊なので!2時間目授業後にお弁当を食べてしまうんです!」
大声で言ってやるな。そういう恥ずかしいこと。
朔さんは膝を畳んで丸くなってしまう。
「だ、大丈夫。僕は別にそんなところ気にしないよ。むしろいっぱい食べられて偉いんじゃない」
こういう時どうフォローすればいいんだろうか。いつも自然とフォローできるトオルは凄いと改めて思う。
「さ、さぁ。早くご飯食べよう。時間が無くなっちゃうよ」
僕は無理矢理話題を終えて食事に誘導する。
僕が弁当箱を開く。僕のお弁当を彼女たちが覗き込む。
「おいしそうです。先輩のお母さんが作ったんですか?」
優里さんが尋ねる。
「いや、僕が毎回弁当は用意しているから」
「先輩が手作りしているんですか!?」
優貴さんが驚いた。
「食べたい……」
朔さんが呟く。良く食べるのは本当のようだ。
「今日のご飯はどんなラインナップですか?」
「えーと、ほうれん草のお浸し、甘辛肉団子、玉子焼き、五目御飯かな」
「凄いです!料理男子という奴ですか!」
「そこまでじゃないよ。昨日余った食材で簡単に作っているだけで……」
「料理人ですね!」
グレードアップしてない?
「いいですねー、手作り。私たちはいつも冷凍ですよ」
「でも、冷凍おいしいです!」
優貴さんはすでに弁当を頬張っている。彼女は自分の弁当に満足しているみたいだ。
「冷凍も美味しいし、僕も時間がない時は使っているよ」
「たまご……食べたい……」
僕の弁当をずっと覗いている朔さんはそう言った。
「あ……食べる?」
「いいの……?」
そんな欲しそうに見られたらあげざるを得ない。
「いいよ」
「あーん」
彼女は大きな口を開けて待っている。
え?これ僕があーんさせるって……コト!?
……そうだよね。2人にやらせるのもおかしいしね。
僕は玉子焼きを掴み、僕の箸が彼女の口に当たらないよう、気を遣いながら彼女に食べさせる。
彼女はゆっくりと咀嚼し、しっかりと味わった。
「砂糖ベースの甘いタイプですね。しかし、砂糖はあくまで卵本来の甘さを引き立たせるのみに留まっていて素晴らしい。醤油のキレの良さもある。全体の味のバランスがいいですね。そして焼き加減。半熟を残したまま作り上げることで、冷めた後もトロトロ触感がありますね」
朔さん!?めっちゃしゃべるじゃん……。
「おいしい……」
あ……戻った。
「いいなぁ!私も食べたいです!」
「私もー」
2人にも分けてあげた。
「美味!」
「おいしー」
2人にも好評だった。
自分の料理が褒められて嬉しかった。トオルたち以外でこういう反応をしてもらうのは新鮮だった。
「あの……先輩……これお礼」
朔さんがおずおずと僕にパンの一欠けらを僕にくれた。
「あ、ありがとう」
「な、なななな、なんと!あの朔が誰かにご飯を上げるなんて!」
「す、すごいです先輩!」
なろう系かな?
「常に食い意地を張っている朔から貰うなんて!」
「流石です先輩」
あれ、僕なんかやっちゃいました?
その後、水嶋姉妹とも分け合って皆でお昼ご飯を食べた。
普段とは違うメンバーだったが僕は楽しかった。時々なら、うん、またやってもいいかなって、女子に褒められて気分を良くした僕はそう思った。
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