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シリーズものです。

「バンドしよう!」

「また何か漫画やアニメに影響されたか?」

「違うよ、トオル。あいつは……薫さんと少しでも接点を作ろうとしているんだ!」

 いつもの教室いつもの典男。こいつが言い始めると大抵ろくなことではない。

「違うぞ!俺は音楽に目覚めただけなんだ」

「怪しい」

「と、とりあえず、ポジションを決めよう」

 話題を逸らしたな……。

「まず、要はキーボードだろ」

「選択権ないの?」

「ピアノやってるだろ、だからさ」

「ピアノとキーボードは違うぞ」

「まぁ、仮だから。通はどうする?」

「俺?俺か……。ボーカルとかやってみたいな」

「いいねぇ。声もいいし声量もある。イケるかもな」

「で、肝心の発起人は?何やるの?」

 僕は冷めた気持ちで一応訊く。

「俺は……ドラムをやってみたい」

「弦楽器は!?」

 バランス悪いにもほどがあるだろ。

「ギターは!?ベースは!?」

「だって……爪割れるかもしれないじゃん」

「乙女か!」

 ピック使えよ。

「いや、いやいや。ボーカルとドラムとキーボードって聞いたことはないぞ」

「じゃあ、俺たちが始まりか」

「なんでそんなポジティブ?」

 僕は奇天烈三人衆の絵面を想像した。

 ありえない。ただのネタ枠じゃん。

 僕は1つため息を吐いた。

「はぁ。それで、本当の理由は何なの?」

 僕は腕を組んで尋ねた。

「……要さん。バンドが……したいです」

「……薫さんですか?」

「部分的にそう」

「ア○ネーターか!」

 さすがに観念したように口を開く。

「実は桃乃井さんとメッセやってたら、バンドがカッコよく見えてきてな」

「へー、彼女とやり取りしてるんだ」

 てっきり彼女に嫌われていると思っていた。言ったらショックだろうから口には出さない。

 典男はスマホを操作して該当の会話部分を見せてきた。確かに彼女がおススメバンドの動画を貼っていた。

「これとか最高でさ」

 まぁ、カッコいい演奏とか見たらバンドに憧れるか。

「それでバンドやろうと言ったわけか」

 トオルも画面を見ながら話す。

「それとさ、今度桃乃井さんたちが小さなライブハウスで演奏するらしくてさ」

「あー、そんなこと言ってたな」

 僕は彼女から着たメッセージを思い出す。

「チケットあるから今度来ないか、って少しお金がかかるけど」

 そんなことも言ってた。

「だから、今度3人で見に行かないか。それ見ればやりたくなると思うし」

 彼のスマホの画面に指が引っかかり、スワイプする形で最新の会話に移動した。

『典男くん、今度ライブするから見に来てね♡(*^^*)』

『絶対行きます!』

『良かったら他の2人もよろしくね』

『はい、絶対連れていきます!』

『(感謝を述べるカワイイスタンプ)』

 こ、これは……!

 僕はトオルと顔を見合わせる。

「典男、お前カモにされてるぞ」

 ライブハウスのチケットノルマを捌くための頭数に入れられている。薫さん、以前の典男の雰囲気から頼めばやってくれると踏んでおねだりしている。なんて強かなんだ。

「そ、そんなことないぞ!彼女は俺のことを思って……」

「悪いことは言わない。やめておけ」

「うぅ……、彼女は俺があんなに舐めるようにおっぱいを眺めても話しかけてくれる聖女なんだ」

 違う、良い金づるなだけだ。

 可哀想過ぎてそんなことは言えない。

「と、とりあえず、1回だけ行ってみないか」

 意外にもその話にトオルが乗った。

「トオル!?まさかお前も騙されて……」

 僕は典男に聞こえないように声を抑えて言う。トオルも同じようなボリュームで返事する。

「違う。何も見ないで判断するのも良くないってことだ。1回だけ見て、それで決めても遅くはないだろ」

 一理あるが……。確かに今、逆に純粋な眼になっている典男を止めるのも難しい。

「はぁ……。わかったよ。一度だけな」

 僕は諦めたようにそう言った。

 桃乃井薫。彼女は思った以上に厄介な人なのかもしれない。

 別に典男を懐柔するのはいいが、トオルにまでその手を伸ばそうとするのはいただけない。

 その時は僕が全力で阻止をする。

 人知れず心の中で僕はそう決心した。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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