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シリーズものです。
「催眠・時間停止・透明化、1つ選ぶとしたらどれにする?」
典男はいつもこういうことを言う。
こういうことを言って僕たちに辛辣に対応される。
僕たちが彼に対して無碍に扱うのは何もそういった話題が嫌いだからではない。
体裁だ。
典男は人がいる場でも平気で下世話な会話をする。
僕たちは周りから彼と同列に見られることを気にして、彼を雑にあしらうのだ。
じゃあ、例えば、今日のように教室に誰もいない場合はどうするか。
……僕たちは静かに席に座った。
「僕は時間停止だね。時間が止まっているという非日常感とその非日常空間で行われる犯罪がある種の高揚を生み出して最高のエクスタシーを感じるね」
「俺は透明化だ。リアルタイムのリアクションを楽しむという唯一無二の能力じゃないか」
僕とトオルがいつもの典男のような気持ち悪いことを語っている。
そう、僕たちは一般的な男子高校生。下品な話題は好きだった。
普段は常識人ぶって典男を苛めるが、身内でワイワイするだけならこの有様だ。
「ふっふっふ……。甘いな。催眠ならどちらの需要も満たすこともできる。さ・ら・に!常識改変というドエロティックシチュエーションを愉しむことができるのだ!」
典男は立ち上がって言った。
「催眠はできることが多すぎ」
「むしろ縛りのある中で使うのが良いんじゃないか」
いつになく熱弁する僕たち。
実は真に変態なのは僕たちの方かもしれない。
「なるほど、確かに一理ある。だが、催眠モノはできる幅が広いことで作家がそれぞれ描く個性的なドチャエロがあるんだ」
「時間停止だって同じことが言える。特定の人物だけ解除したり、快感蓄積みたいなね」
「透明化だって、教室、電車、更衣室、お風呂などなど色んなフィールドで描けるぞ」
僕たちの議論は白熱した。
「く……どれも良さがあって堪らねえ」
「当たり前だよ。性癖に優劣なんてない」
「ただ、個々の性的嗜好があるだけさ。正直、透明化の作品で素晴らしいのがあったから選んだしな」
「僕も時間停止で殿堂入りの作品があるよ」
「最高傑作催眠モノなら俺も持っているぜ」
僕たちは素早くスマホを取り出し、該当作品を検索した。
「それじゃあ、せーので見せるぜ」
典男が音頭を取る。
「せー……」
「の」を言う前に、教室の扉が開いた。
クラスメイトの女子2人がおしゃべりしながら入ってくる。
「若者の選挙離れ」
「一票の格差」
「比例代表制」
僕たちはそれぞれそれっぽい単語を並べる。
こういった会話には暗黙のルールがある。
それは他人に聞かれてはいけないということ。特に女子!
クラスメイトの2人は僕たちに一瞥だけすると、自身の机の中を探り何かを取ってそそくさと退出していった。忘れものだろう。
完全に興が削がれた僕たちはサッと画面を見せ合った。
その日の夜は捗った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




