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6、何年経っても


知らない世界に来て、そろそろ四年が経つ。

四年近くも過ごしていれば、もう知らない世界とも言えない。

ほとんどが船の上での生活だったけどね。

この世界の成り立ちを知り、歴史を知り、生活を知った。


異世界から勇者と聖女を召喚することが出来るから、当然の様に魔法もあった。

ただ、人の体内に魔力が宿っている訳ではなく、決まった場所で採れる鉱物に宿っていて、それを活用しているのだ。

異世界から勇者と聖女に限ってはその身に宿っているらしいけど、原理はわからないみたい。元々魔力なんて無い世界で生まれている勇者や聖女でもこの世界に来ると魔力を持った特別な体質になっているから。……不思議。

私も異世界から来たからあるのかなぁ?と思ったりもしたけど、未だに何も起こせないから、やっぱり只の巻き込まれただけなんだろう。

あぁ、勇者や聖女を呼ぶ理由も改めて聞いた。

なんでも、この世界には悪神がいて、数百年に一度現れて暴れまわるんだって。荒れ狂う嵐の様な悪神。実際にも、世界が嵐に襲われて大きな被害が出た、と史実に残っていた。

だから、「嵐」は不吉なのだ。

悪神を倒す為に召喚したのに、聖女にくっついて「嵐」なんて名前の奴が来たら何かあると勘ぐっても仕方がないのかも。それで殺される側はたまったもんじゃないが。

私は別にこの世界に悪さしたい訳じゃないもん。名前が「嵐」ってだけだし。

で、召喚された勇者は唯一悪神を倒せて、聖女は悪神が起こす予兆の無い嵐……正確には天候の変化だったかな、を感じ取れるから被害を抑えることが出来る。ということだそうだ。

もっと何か聞いた気がするけど、忘れた。


『エンリル。飯だ、降りて来い』


見張り台に設置している通信用魔動器からソリスが声を掛けてくれる。

そうそう、異世界から来た「嵐」はあの後指名手配にされたから、バレない様に船の名前を貰って「エンリル」と名乗ることになったんだよね。

この名前も元は別の誰かから貰って、船の名前にしたと思うから良いのかな?と思ったけど、ソリスが良いって言ったからお借りしている。

思うに、ソリスが一途に想っている恋人の名前じゃないかなぁ~。

だって、「エンリル」って呼ぶ時のソリスの声が優しいんだよ!「嵐」って呼ぶ時の声はその仏頂面と同じで素っ気ないのにさ。

余程惚れてんだねぇ?

そんな大切な人の名前を貸してくれるなんて、こっちが困っちゃうよ。


『おい、聞いてんのか?返事しろバカ娘』


親父かよ。

「聞いてる!すぐ降りる!」と返して、梯子から降りる。

むっさい格好してたから、もっと歳が上かと思ったら一回り違うだけだった。

整えればイケメンなのに……只のものぐさ野郎だ。

仕方がないから、私がお世話する様になった。この四年近くイケメンを保っている。元からモテたみたいだけど、もっとモテた。私のおかげで。

まぁ、恋人に操立てているから浮気しないんだけど。その点だけで好感度は爆上がりだったね。


下に着いたら、待っていてくれて二人で食堂に向かう。

以前は太陽が一緒にいるのが当たり前だった日常は、今度はソリスが一緒にいるのが当たり前になっていた。

お互いに恋愛対象じゃないから、歳の離れた兄妹みたいに思ってるんじゃないかな?

始めの頃は気付かなかったけど、一緒にいる内に気付いた。ソリスは太陽によく似ているんだって。

チビの太陽と比べると何とも言えないけど、太陽のお父さんとソリスは似ているから、太陽も成長したらソリスの様な雰囲気になるかもしれない。ソリスを見ながら、太陽の成長具合を想像して楽しんでるよ。船の中だと娯楽は少ないんだから良いでしょ。

後、似ているところは、これ!私が手を掛けないとボサボサ頭だし、服もだらしないところ!

おかげで、すっかり世話係になってしまった。

間近で拝めるイケメンの為だから良いんだけどね。

そんなこんなで似ているから、一緒にいて安心出来る。


やっぱり、何年経っても基準は太陽なんだなぁ私。









【嵐が何処で吹き荒れ様と太陽はそこに在る】






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