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3、殺られる前に殺れ


門には門番がいるので、そこから出ることは叶わなかったけど、壁沿いに身を隠しながら逃げていたら穴を見つけましたよ。

ガタイの良い方々では通れないだろうが、小柄な私なら通れる穴が。

同級生の野郎(クソガキ)には散々バカにされてきた、このまな板ボディだが、こういう時にはこれで良かったと思える。胸あったら通れなかったからな!

白いセーラー服が汚れたけど、まぁ命には代えられないから良しとしよう。

思わず、高笑いしてしまったことで外に逃げたことがバレて、周章ててその場から離れた。


街は、港町だった。

木で出来た、見上げるほど大きな……帆船というものだろう船が幾つも港に並んでいた。


ついつい物珍しさで来てしまったけど、それからが大変。

放っておいてほしいのに、軍人さん達が少人数じゃなく大人数で捜してくる。

街の人にも聞いたりしているからすぐに広まっていきそうだ。隠れて内容を聞くと、なんかとんでもない話になっているし。


召喚された美しい聖女に嫉妬して邪魔をする為に勇者を押し退け此方の世界にやってきた性悪な小娘、にされた。

なんで、そうなんのさ!あの聖女さんのことなんてまったく知らないのに嫉妬?顔をちゃんと見たのもこっちに来てからだから、そんなことする理由ないっつーの!

勝手に巻き込んどいてそりゃあないんじゃない?

何故か「嵐」っていう私の名前もバレていた。

階段から落ちる時に太陽が呼んだ私の名前をあの聖女さんも聞いていたのか。

その「嵐」という名前がこの世界?国か?では不吉なものみたいで、私の存在自体が危険と更に思われた様だ。


街の人達の間でまで話が広まるなら見つかるのも時間の問題。

街から出るべき?こんな知らない世界で街から出て何処に行く?

こんな時、太陽ならどうする?


……太陽に逢いたい。


港の、船に積み込む木箱だと思うけど、大きなそれが並ぶ裏に身を縮めて隠れていた。

そこにふと影が差す。

雲みたいに流れていく影じゃない。

人の、靴の爪先が見えて嫌な汗が流れる。

見つかった?殺される?

身体が震えて、強張った。

膝を抱え込む腕に立てた爪。痛みが、改めて突き付けてくる。これは夢ではなく現実に起こっていることだと。

「助けて」と言いたいのに声は出なくて、顔を上げて現実を直視するのも怖くて出来なかった。

縮こまったまま、ぎゅっと目を瞑る。


どうせ()るなら一思いに!


と覚悟を決めた私の首根っこが勢い良く掴まれたかと思えば、何処かに放り込まれた。

硬さはない……これは、草?

外から「少し静かにしてろ」と言われる。

上、蓋……かな?に誰かが乗った音が聞こえて間も無く、「ここに黒い短い髪で、海兵の様な白い服を着た娘が来なかったか?」と怒気を含んだ声がした。

私を捜しに来た軍人さんだ。

口を手で覆って息を潜める。

ここにいることを伝えないか不安だったけれど、「見ていないよ」と返された。


「さっき街で話しているのが聞いたが、聖女様にくっついてきた悪童かい?」

「あぁ、王命も下っている。見つけ次第速やかに処理せよとな。だから、見つけたら報告してくれ。なんだったら、アンタが処理してくれても良い」

「そういうことなら、こっちの好きにさせてもらうさ」

「任せたぞ、ソリス」


危ない会話が聞こえた。

遠退く足音も聞こえても安心は出来ない。

殺す気じゃない?今は隠してくれたけど、会話の内容からして、私の危険は去っていない。

相手が一人だけなら逃げられるかも……!


しばらくして、ゆっくり蓋が開けられる。

人影を見据えて、渾身の頭突きをお見舞いした。


()ったぁーい!!









【嵐が何処で吹き荒れ様と太陽はそこに在る】






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