1、……マジか
ざわざわと周りから声が聞こえてきて、意識が浮上する。
周りがうるさいのは私達が階段から落ちたからだろう。
まだ、うつ伏せに倒れたままでいるからあまり時間は経っていない?
それにしては身体に痛みはない。びっくりするほど、痛くない。
……あれ?
上半身だけ起こして、座って、腕や脚を触ってみてもやっぱり痛くなかった。
落ちた、よね?
…………落ちた?何処に??
顔を上げて見た先には、ファンタジーとかで見る様な衣装を着た男達がわらわらいた。
振り返って、見た先には階段が……無い。
知らない場所で、階段の上にいただろうお姉さんが倒れているだけ。
いや、だけではないな。
男達が私達を取り囲んでいるもん。怖いよ?
幼馴染み……太陽もいないし。
というか……ここ何処?
混乱する私を他所にお姉さんが小さく唸った後、目を覚ます。
身体を起こして、「ここどこ?」と呟いた。
混乱しているのは明らかなんだけど、私の横を私に目もくれず通りお姉さんの前に片膝をついて手を差し伸べる王子様風の男を見ると途端に目を輝かせた。頬を染めてうっとり、って感じ。
最近流行りの異世界転移物の小説みたいな内容の説明をするんだけど……マジか。
しかも、それ説明しているのがキラキラした本物の王子様らしい。王子様風じゃなくて、マジもんなんだって。……マジか。
つか、この王子様、私が眼中にはない様だ。
何も試していないのにお姉さんを聖女と呼びやがった。
私は聖女とは程遠いし、違うのだろうけれど!万に一つ、私が聖女だったらどうすんだコノヤロー。絶対違うんだろうけれど!!
お姉さんもテンプレな態度で自分が聖女だと受け入れているし、大丈夫?
大丈夫じゃないのは私の方だな。
「聖女と共に勇者も来る筈だったのだが、なんだこのガキは」
王子様なのに口が悪ぃな。
見下すみたいな視線まで向けてくる。
何、勇者も来る筈だったの?
「恐らく、召喚時に聖女様と接触していた為に勇者様が来られなかったのかと。一度に渡れるのは二人までですので」
「これから数年勇者召喚の儀式は出来んのだぞ。どうしてくれる!」
「は?」
私の所為みたいに言うな。
私は巻き込まれただけじゃん!
「聖女様にそれまで頑張って頂くしかありません」
「この者はどうします?」
「牢にでも入れておけ。儀式の邪魔をしたのだからな」
「しかし、まだ子供のようですから……」
「罪人は罪人だ」
まさかの罪人扱い……マジか。
聖女と呼ばれたお姉さんも見ているだけで助けてくれず、両腕を軍人さんっぽい人達に掴まれ何処に連れて行かれる。
……マジか。
【嵐が何処で吹き荒れ様と太陽はそこに在る】