第78話 ハンマープライス!!
川魚の燻製はあっと言う間に完売した、その売り上げは50万ゼニー余り。はっきり言ってぼったくり価格だが、博打で稼いだあぶく銭で気が大きくなった奴が付けた価格だ。こちらが言い出した事ではない。
それにあの男の言によれば、そこら辺で売っている干魚とは比べ物にならない程に味も香りも良いらしい。それならばとりあえずこの価格…1万ゼニーのままで良いかと納得する事にした。
「考えてみれば、ニューヨークとかじゃまともな朝食や昼食を食おうと思ったら日本円で換算したら二千円以上すると言うしな。ましてやここはトラックとか鉄道とかが無い中世的な異世界、輸送網が発達してる訳じゃない。魚や調味料だって割高だし、調理法は広く伝わってはいないだろうし…」
まあ、完売したんだし問題無いだろう。そう思うようにして次はまた雲のお菓子こと綿あめを作る準備、これまたあっと言う間に完売。それを見ていた商人達はどうやら興味を持ったようで調理法を教えて欲しいだの、共同で事業をやりたいだの言ってきたがそこは華麗にスルー。
そもそも砂糖は高級品、温かい気候…というより暑いくらいの…そして豊かな水が必要になる。よくある異世界ものでは胡椒が高値で取引されたなんてのがあるが、砂糖もまた同様である。
「さて、本日のメインイベントか」
綿あめが完売した後、それを目当てに来ていた人々は帰っていった。そして、まだ残っている一団を見る。
「何が始まるんだ?」
ケイウンが話しかけてきた。
「ああ、ここからは商人相手の販売会だよ」
□
「1億8200万ッ!1億8200万ゼニーで買うぞ!」
「それならワイは1億9000万や!」
「1億9200万ッ!」
「ほな、1億9500万といこか」
「ぐっ、ぐぐぐっ!1億9550万ッ」
「チマチマ上げてくるとは面倒やな。あんさん限界やろ?ほな、2億や」
「…くっ!」
目の前では本日の最後のメイン商品、30カラットのダイヤモンド(人工)が競りにかけられていて二人の商人が値段の応酬をしている。そしてその勝敗は今決したようだ、2億ゼニーの声がかかるともう声を上げる者は居なくなった。
「…決まりだな。2億ゼニーで落札価格」
俺は人差し指と中指の間に小さな槌を挟み、屋台のカウンターを軽く叩いた。
ダイヤにルビー、サファイア…その他いくつかの知名度のある宝石に高値がついた。ザックリとした計算で売り上げは4億数千万程になる。
「5億までもう少しだったか…」
「ん…。今の所、合計で4億8700万…」
アンフルーが耳打ちしてくる。
「そうか、それならもう一稼ぎして5億としたいな」
俺は宝石を買った商人、買えなかった商人、その全てに向かって声をかけた。
「アンタら、運試しをしないか?」
「運試し?」
一人の商人が何を言ってるんだと首を傾げた。
「実はまだ宝石はあるんだ。小粒だがな」
そう言って俺は二十粒程の宝石を出した。先程までの物とは明らかに小粒であり、さらに色も形も…そして種類もバラバラだ。
「ダイヤモンド…、エメラルド…」
「見事な研磨とカットがされている…」
「比較的安いトパーズとかもあるな」
商人達がザワザワとし始めた。
「なあ、アンタ?」
俺は一人の商人に声をかけた。
「アンタならこれをいくらの価値があると見立てる?」
そう言って俺はダイヤと思しき宝石を指差した。
「む、むう…、300万…いや、その大きさなら400万か…」
「そうか。じゃあ、その隣の…そう緑の服を着たアンタ。これは?」
「そりゃ、その宝石の中でなら一番安い。50万か、良くて55万ってところだろうな」
ふむふむ、そのくらいの価値はあるのか。
「ここにあるのをあんたら一粒100万ゼニーで売るって言ったら買うかい?」
「ダ、ダイヤモンドをくれっ!100万で良いんだなッ!?」
先程のダイヤモンドの競りに負けた商人が食いついた。
「あわてなさんな。それじゃ誰もがダイヤモンドを買いたがる」
そう言うと周りの商人達がそうだそうだと口にする。
「だから、運試しをしようじゃないか」
俺は小さな紙袋…百円ショップでハンコなどを買った時に包んでくれる包装用の紙袋を取り出しダイヤモンドを入れた。折り畳みホチキスで留める。そして次々と宝石を同じように紙袋に入れてホチキスで留めていく。
それをカウンターの上に置き、シャッフルしてやった。
「さあ、一つ百万ゼニーで良いぞ。上手くすれば百万ゼニーで数倍の価値があるダイヤを手に入れられる。恨みっこなし、一人一回、早い者勝ちだあ!」
うおおおっ!
商人達が殺到した。そして完売。〆(しめ)て5億700万ゼニー、俺は一日にして多額の金を得たのだった。
いかがでしたでしょうか?
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次回予告。
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一気に大儲けしたキノク。
丁度良い機会だと他に売れそうな魔石などを売って現金化を考えた…。
そこで向かった先は…。
「ご、五千…六千…バ、バカなッ!!!!?まだ、上がっていく!!」
「お、おい、キノクの評価はいくつになった!?」
「は、八千以上だ!!」
ざまあの種がいよいよ芽吹く?
次回、第79話
『もうどうにも止まらない』
お楽しみに。




