第71話 倒したのはゴブリンキングより大物だった。
ゴブリンキングの軍団を焼いた炎が消えた。燃えるものが無くなりその役割を終えたからだ。
「終わったな…」
「ん…」
俺の声にアンフルーが応じた。
ゾンビ化しないように火葬にしたゴブリンキングの軍団、そしてそれとは別の場所で火葬にした四人の男達。四人の方はすでに火葬は終わっておりすでに埋葬してある。本当は一人一人別々にしてやりたかったが遺体の状態があまりにも酷く肉片のようになってしまっていた。誰のものか分からない、それゆえ一箇所でまとめて火葬し埋葬させてもらった。
「掘った地面を元に戻す…」
そう言ってアンフルーが立ち上がり二人で見守っていた大穴の方に手をかざすとそこの方から土がせり上がってきて元に戻ろうとしていた。
「埋めなくて良いのか?」
俺は思わず問いかけた。
「平気。ゴブリンの方は骨の一欠片も残らない程の強い炎で焼いた。埋葬の必要は無い。それに…」
「それに…?」
アンフルーがゴブリン達を燃やしていた方へと歩き出したので俺もついていった。
「これ」
「あっ、魔石だ。焼けて灰になった訳じゃないのか」
周りと同じ高さになった先程までゴブリン達を火葬していた場所、そこには多数の魔石が転がっていた。
「魔石はあたりに漂う魔素がモンスターの体内で結晶化したもの。魔素は魔力の元…魔力はそもそも燃える物ではない、だから燃えない」
「なるほどね」
「ちなみに触っても平気、熱くなってない」
「じゃあすぐに持って帰れるな」
「ん」
「リュックは部屋に置いてきたから…そうだな…」
俺はシャツを脱ぎ地面に広げた、そこに魔石を置いていく。シャツを風呂敷のようにして拾った魔石を持ち帰るつもりだった。
「そう言えばアンフルー」
「何?」
魔石拾いを手伝いながら彼女が応じた
「火葬している時も、今シャツを脱いだ時も変な興奮をしてはあはあとか言わなかったな」
「ん…」
「優しいし、なんだかんだで気遣いも出来る。物知りだし魔法の腕も凄い。そして美人、凄いな…アンフルーは」
返事は無い、アンフルーは黙々(もくもく)と魔石を拾っている。彼女が何を考えているかは分からなかったがとりあえず魔石を全て拾い終わった。俺はシャツを風呂敷のようにして魔石を包んだ。
「戻るか」
俺がそう言った時の事。
ブンッ!!
空気が揺れた音。
フッ!
目の前にアンフルーが現れた。しゅ、瞬間移動か!?
「キノク…」
眠たそうなジト目でアンフルーは俺をまっすぐに見つめた。
「な、なんだ?」
「キノクが薄手のシャツ一枚、はあはあ…」
そう言ってアンフルーが俺に抱きついてきた。
「お、おい」
「私は空気が読める女、しんみりした場面ではあはあしない。我慢我慢」
「それ言ったらなんか残念だな、オイ!」
そうは言ったが俺はアンフルーの好きにさせた。しばらくしてアンフルーが俺から離れたので二人で部屋に戻る事にした。
□
部屋に戻るとリーンが待っていた。
「お帰りだニャ」
「ただいま。スフィアの様子は?」
「まだ眠っているニャ。唇からポーションを少しずつあげてるから体力は回復している筈だニャ」
「そうか、心臓病は治っているからまあ大丈夫だろう」
そう言って俺は魔石を包んだシャツを畳の上に広げた。
「これ…」
アンフルーが俺が最後にシャツで包んだ大きな魔石、あの巨大ミミックロックのものより大きなものを見て呟きを洩らした。
「どうかしたのかニャ?」
リーンがアンフルーに問いかける。
「この魔石の大きさ…、おそらくゴブリンキングではなく…」
「キングじゃないのか?」
「それより大物。キング(王)ではなくグレートキング(大王)」
「へええ…」
アンフルーによるとゴブリングレートキングはいくつかのゴブリンキングの軍団を束ねる存在であるらしい。力こそ全てのモンスター社会、グレートキングともなれば当然キングよりも強くて当たり前なのだそうだ。
「なるほどだニャ!ゴブリンキングにしてはやけに強いなと思っていたんだニャ」
リーンが納得の表情をしている。
「グレートキングともなれば希少なスキルを持っていてもおかしくない。おそらく攻撃魔法無効のスキルを持っていたんだと思う。だから私の魔法が届く前にかき消された」
「そうだったのか…」
「キングならリーン一人でも太刀打ち出来た筈。しかしグレートキングとなると厳しい」
「総力戦だったし、最悪不利になったら三人で俺のスキルでここに逃げれば良いと考えていたがそれも難しかったもんな…」
まあ、何にせよ倒せて良かった。
「とりあえず今すぐする事も無いし、二人ともくつろいでくれ。俺はこの魔石を合成してデカいのにしてみるよ」
そう言って俺は合成を始めた。スーパーで売っているメロンくらいの大きさの魔石が一回り大きく。その色を濃いものに変えた。
「これは…。ゴブリンエンペラー級の魔石…」
アンフルーが息を飲む。
ゴブリンエンペラー…、ゴブリンの皇帝か…。グレートキングすら配下にすると言われる…。
「これは凄い高値がつく」
「そうなのか?まあ、それはありがたいな。金が入れば俺のレベルが上がるし…。まあ、とりあえず晩飯にするか」
「ニャ!」
「ん…」
二人も俺に同意したので食事の準備に入ろうとした時の事だった。
「うう…ん」
布団の方から声がした。視線をそちらに向ける。
「ここは…」
見れば姫騎士のスフィアが目を覚ました所だった。
いかがでしたでしょうか?
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次回予告。
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目を覚ましたスフィア。
彼女の心臓は良くなったのか?そして彼女は何者なのか?
さらにスフィアとキノクは急接近?
「い、いけませんわ、キノクさま!わたくしは主神オルディリン様に槍も身も心も捧げておりますのに!このように押し倒すなど…」
な に が あ っ た ?
次回、最強商人キノク第72話。
『ああっ!!キノクさま』
お楽しみに。
※ 苦情は一切受け付けておりませんので悪しからず。




