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第61話 強襲!!


「ライトニング…バーストォォッッッ!!!!!」


 アンフルーが烈爆の気合いの声と共に放った魔法。それは光り輝く直径1メートル程の球体であった。それが凄まじい勢いでゴブリンの群れに飛ぶ。その着弾地点は奥の方、まだこちらが攻撃を仕掛けていない無傷のゴブリン(ども)がいる密集部だ。


「グギャア!!」

「ギャオッ!」


 断末魔の声が響く。光球は地面に着弾すると無数の放射状に広がる電撃の(おび)となり周辺のゴブリン共を薙ぎ倒した。普通のライトニングが貫通する直線的な稲妻なら、ライトニングバーストは着弾した地点から四方八方に稲妻を撒き散らす範囲攻撃だ。この一撃だけで二十匹は打ち倒している。


「なるほど…」


 俺は思わず呟いた。ゴブリン一匹一匹の力は大きくなくとも数の力は脅威だ。だから一度の攻撃でなるべく多くのゴブリン共を(ほふ)るべくあの位置に着弾させたのだろう。


「…ふう」


 アンフルーが少し疲労感のある息を吐いた。無理もない、あれだけ魔法を連発したのだ。そりゃあ疲れもするだろう。実際それを好機と見たのか、二匹のゴブリンがアンフルーにサビついた武器を手にしてやってくる。


「アンフルー、あれは俺がやる。休んでくれ」


 そう言って俺はアンフルーにペットボトルを手渡した。中身はアールグレイの紅茶に砂糖と蜂蜜などを混ぜ特に甘さを強調したもの、もちろん中身は飲む温泉水。アールグレイの紅茶は茶葉に果物の香りを()き込んだ事で知られる、アンフルーによればエルフは果物を好み甘いものは魔力の回復を促進する。ましてや使っているのは温泉水、異世界人であるリーンやアンフルーにはそれだけで効果を発揮する。ハッキリ言って魔力回復ポーションだとアンフルーは言及していた。


 俺は新しく手に入れたサバイバルベストの左胸の部分、切っ先を上向きにして(シース)が留められている。そこに差している通称ボウランナイフに手をかけた。クロスボウを使うにはゴブリン達がこちらに近付き過ぎていた。


 少し後退したアンフルーに向かうゴブリン。


「左右確認、忘れてるぞ」


 そう言って俺は駆け寄ってゴブリンの脇腹に横槍(よこやり)ならぬ横ナイフを入れた。


「ギ…」


 ゴブリンはそんな呻き声を洩らすと糸が切れたように体から力が抜けた。どうやら戦士技能レベル5の取得と底上げされた筋力をはじめとする各種パラメーターは俺を相当強くしているらしい。


「ギャッ!ギャッ!」


 仲間を殺され怒りを覚えたのだろう、二匹目のゴブリンが狙いを俺に変えたようだ。小剣(ショートソード)を手に体ごとぶつかってくるように突進してくる。それに対し俺は素早くナイフを抜いたゴブリンの死体を突っ込んでくる奴に向けた。


「ほれ、盾になれ」


 俺が仕向けた通り盾代わりの死体に新手のゴブリンが突っ込んだ。俺は仲間の死体に小剣を突き刺したゴブリンの横っ腹を突き刺す。二匹目もあっさりと絶命した。


「リーンは?」

「あそこにいる」


 アンフルーが示した先にリーンがいた。いつの間にか腰から愛用のククリナイフを抜いていた。ひらがなのくの字のような刀身、大ぶりなそれを手に持ってコマのように回ると周囲のゴブリンを一掃した。そして次の標的を見据える。


「ニャッ!」


 一声発して低い姿勢で次の相手に疾走する、ゴブリン共はその速さについていけていない。次の瞬間にはリーンはゴブリンの間近に迫った。


 くるくるっ!


 再びリーンは回転する、先頭にいたゴブリンの首をあっさりと跳ね飛ばす。しかもそれだけにとどまらない、俺は思わず声を上げる。


「あ、あんな戦い方があるのか!?」


 体を回転させたままリーンはゴブリンの密集部に突っ込んでいく。まるで台風か竜巻だ、ゴブリン達には()(すべ)もない。あっさりとその命が切れ味鋭い鎌で雑草を薙いだように刈り取られていく。リーンが通り過ぎた後には一直線に先程までゴブリンだったものが散らばっている。


「うニャッ!」


 十メートルばかり突き進みリーンが回転を止めた。そこに槍を手にしたゴブリンが背後から突きかかる。危ない!


 びんっ!


 俺はそのゴブリンにクロスボウで射掛ける。狙い(あやま)たず矢はゴブリンの頭を撃ち抜いた、リーンはと言えば背後からの一撃をわずかに横に動いてかわし槍を脇で挟みながらその()を掴んでいる。


「さすがリーンだ、援護はいらなかったか?」

「そんな事ないニャ!一つ手間が減ったのニャ」


 そう言うとリーンは掴んでいた槍を奪い取り軽く宙を舞う。槍を器用に片手で握り直すと、ゴブリンの群れにいた大きめの個体に投げつけた。


「グルオオオッッ!!」


 投げつけた槍が背中から腹へと貫通する、苦悶(くもん)の声を上げる大きなゴブリン。


「さすがホブゴブリン、一撃とはいかないニャ」


 そう言うとリーンは大きく跳躍し腹へと突き抜けた槍に気を取られているホブゴブリンの背中に張り付いた。逆手に持ち替えたククリナイフをホブゴブリンの首に当てがい一気に横に引いた。


「〜〜〜〜ッ!!!」


 喉の奥、気管の辺りまで完全に切り裂いたのか声にならない声を発しながらホブゴブリンはのけぞり後に倒れそうになる。そんなホブゴブリンの背にいたリーンはその背中を蹴り高く後方へと跳んだ。両膝を抱えクルクルと数回の宙返りをすると鮮やかに着地を決めた。それと同時にリーンに背中を蹴られたホブゴブリンは後ろにではなく前のめりに倒れた。周辺のゴブリン達が恐れ(おのの)く。


「あのデカいのがボスか!」


 俺はそう判断し他の大きな個体に狙いを定める。二挺目のクロスボウに装填されている二発目、三発目の矢を放った。頭と喉元に命中し二匹目のホブゴブリンを倒した。ゴブリン共の動揺はさらに大きくなる。


「エアスラッシュ!」


 アンフルーの声が響いた。さらに一体のホブゴブリンの首が跳んだ。残る大きな個体はあと一体、ゴブリン達は混乱をさらに大きくしていく。


「思った通りだ。小さいのをいくら()っても大した影響はなかったがボスをやられてコイツら怖気(おじけ)づいてるぞッ!!」


 既にゴブリンを百匹は(ほふ)っているが、残る数はまだまだ多い。敵の戦意を(くじ)きこちらの戦意を高める為、俺はここぞとばかりにたたみかけろと叫んでいた。





 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 次回、第62話。


 『殲滅』


 お楽しみに。

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