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閑話1 最上位職者達の帰還。


 自由市(じゆういち)で売る為の物を作る為、キノクがリーンとアンフルーと共に採取に(いそ)しんでいた頃…。


 キノクを追放したパーティ『高貴なる血統』の四人は拠点としている帝都アブクソムに戻ってきた。しかし、その格好は敗残兵(はいざんへい)と言ったような有様でその顔色はとても悪い。明らかに飲まず食わずで歩いてきたといった様子が見てとれる。


 そんな彼らが冒険者ギルドに入ってきた。


「いらっしゃ〜い…ヒッ!!」


 だるそうに業務を行う受付嬢パミチョはやってきた四人を見て息を飲んだ。浮浪者(ふろうしゃ)がやってきた、そうとしか思えなかったから…。


「パミチョ、俺だ」


 鎧の破片らしき物を辛うじて身につけている男が口を開いた。聞き覚えのある声だ。


「あ、もしかしてプルチン…さま?」


「ああ、そうだ」


「どーしたの?そのカッコ…」


「…巨大ゴーレムが出やがったンだよ…」


「えっ!?」


 マジかよ…。

 そんなモンが出るなんて…。

 高貴なる血統があそこまでやられるなんて…。


 ギルド内がザワつく。


「そ、それでゴーレムは…?」


 パミチョがおそるおそる聞く。


「あ?…()ったよ、ッたりめーだろ!!」


「さ、さすが…。じゃ、じゃあ魔石とか高価(すご)そうなの出た?」


 期待に満ちた目、下から覗き込むようにしてパミチョがプルチンに問うた。あわよくばその稼ぎの一部をお小遣いとしてせびれたら…そんな腹積(はらづも)りだった。


「ねえよ…」


「えっ!?」


「ねえっつってンだよ、コラァ!!」


 イラついたプルチンが受付カウンターを強く叩いて叫んだ。激昂(げきこう)と言ってよかった。


「ヒイッ!!」


 パミチョが頭を抱えて怯えた。


「この高貴なる血統の俺達がここまで手こずる相手だぞ!ドラゴン並にやべえ奴だったんだ。俺達が総がかりでやって最後はウナの…大魔導士(アークウィザード)の奥の手ってヤツで跡形もなく殺ったんだよ、コラ。だから、なんも残っちゃいねえ…魔石どころか砂粒一つよォォ…」


 事実はまったく違う、ミミックロックに二回もこてんぱんにやられた。まるで太刀打ち出来ていなかったが、プルチン達は口が裂けても敗走してきたなどとは言えなかった。


 自尊心(プライド)がそうさせた。貴族階級の生まれの自分達、しかも最上位クラスの天職(ジョブ)…、そんな自分達が山道に転がっていた石が少々デカくなって手足が生えたようなヤツにやられたなんて…、そう思うとはらわたが煮えくりかえりそうだった。


 だから盛りに盛って武勇伝とした。倒した事にして、しかも倒した相手から戦利品が得られなかった理由を大魔導士の秘術によって跡形もなくなった事にした。確かに(いにしえ)の大魔導士には原子すら破壊すると言われる魔法がある。後には何も残らない消失という魔法である。


 もっともウナにはその魔法を使う事は出来ない。と言うにも使うにはあまりにも実力不足だった。魔法を発動するのに必要とされる魔力も、精密な魔力操作、そして何よりそれを使いこなすだけの経験も全てが足りなかった。


 そうでなければ、物理には圧倒的な耐性があるものの魔法に対してはただの石ころでしかないミミックロックを相手に魔法職の彼女が負ける道理がない。ハッキリ言って圧倒的有利に戦える立場であった。明らかに力量不足であった。


 だが、それは他の三人にも同じ事が言えた。本来、最上位職ならば自分にとって多少不利な耐性持ちであってもなんとかするだけの特技や戦術があるものである。


 例えば物理戦闘をするリーンが硬い表皮を持ち物理ダメージがほとんど通らないミミックロックを相手にした時、打撃技ではなく組み技に持ち込んだ。いかなる斬撃を防ぐような硬い表皮でも中に浸透するような衝撃を和らげる手段にはならない。そうしてリーンがミミックロックを倒したように相性が悪いなら悪いで何らかの戦法があるはずなのが普通だ。しかし彼らにそれはなかった。


 経験が足りな過ぎた。


 最上位職…、確かに聞こえは良い。例えばマリアントワの天職ジョブ至聖女司祭(ハイプリエテス)。特別なものを除けば女性の聖職者として、そして冒険者として最上位のものである。それを成人してすぐのアイセル正教会での天職判定により持っている事が分かった。


 女性の聖職者であればシスターから始まるのが一般的だ。それが神官に、そして司祭へとランクアップしていく。


 確かに最上位職は強力な技能を得る事が出来る。回復魔法なら『全快治癒(フルリカバリー)』、防護と能力向上(バフ)を兼ねた『至聖祝福(ホーリーブレス)』、万魔の敵を滅する聖属性攻撃魔法に『天上(ヘブンス)(ゲート)』…冒険者になってしばらくするとマリアントワはそれらを使えるようになった。まだ十代の成人したての…、まだ少女の名残を残す彼女がそれを成したのだ。彼女の名声は上がった。


 同様にプルチン、ウナ、ハッサムも最上位職の名に恥じぬ優れたスキルを発動して見せた。若き四人の冒険者パーティ、貴族生まれという血統の良さも手伝ってたちまち有名パーティとなった。


 その噂話を聞きつけて早速接触してくる者もあった。商人、貴族、何かと人脈を持ちたいと考えるタイプの層であった。使える有用な人間との…。


 しかし、その有用とされた最上位職のスキルは彼らだけの力では発揮出来ないものであった。実力が追いついていないのだ。それがなぜ急に使えるようになったのか…、その理由はキノクの水にあった。



 いかがでしたでしょうか?


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