表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/177

第5話 願いの井戸。


「井戸の底?どういう事ニャ」


 リーンが問いかけてくる。俺はたった今転がってきたコインをつまみ上げた。


「このコインを見てくれ。コイツをどう思う?」


「コインだニャ」


 ガックリと俺は項垂(うなだ)れる、そこは『すごく…、○○です…』みたいに言ってくれよ。


「ま、まあ良いか。確かにコインだ。んで、コレを見てくれ」


 そう言って俺はそのコインの表面を見せた。石で(こす)ったような跡がある。


「汚い字ニャね…。…うーん、『プ』って書いてあるのかニャ?」


「その通り。コレは首都アブクソムにある願いの井戸に投げ込まれたコインだよ」


 願いの井戸…。首都アブクソムの一角にある古い井戸だ。コインを投げ入れ祈るとその願いが叶うとされ、実際にそうする者も少なくない。また、首都を訪れた旅人が立ち寄る観光名所でもある。


「願いの井戸?でも、どうしてそんな事が分かるニャ?」


「この表面、この石で削ったような文字があるだろ?これは俺を追い出したパーティのリーダーであるプルチンの字だ。小さなコインには名前の全てなんか書き込めないから頭文字だけ入れたのさ」


「ニャッ!?願いの井戸に投げ入れるコインにそんな事しちゃ駄目ニャ!欲張り者は身を滅ぼすニャ!」


 確かにそんな言い伝えもある。しかし強欲なプルチンは、


「小銭とは言え俺の投げ入れたコインで万が一にも他人の願いが叶っちまったら面白くねーだろ!!だから俺のだって分かるようにしっかり名前彫っておくンだよ!」


 そう言って道端に落ちていた石を使って名前を彫りこんでいた。日本円に換算したら一枚10円程度のものだが、正直投げ入れる金があるなら俺に寄越せよと言いたかった。しかし、だからこそ俺はこの事を覚えていたのだ。そんなコインを山に戻す為に放った。ちゃりんと音がする。


「だから分かったんだよ、ここが願いの井戸の底だって」


「そうだったのニャ。ところでキノク〜」


 リーンが問いかけてくる。


「なんだ、リーン?」


「これ、山分けで良いかニャ?」


 えっ、これを自分の物にする気か!?それじゃまるで賽銭泥棒(さいせんどろぼう)じゃないか。


「いや、さすがにそれはマズくないか?」


「何を言ってるニャ。このままにしてたらこのコインは使われず(じま)いニャ!そしたらこのコインはずっとその役目を果たせないニャ。キノクは商人ニャんだから分かるはずニャ、物を買う為に人の手を巡るのがお金の役割ニャ。それをさせないのはかわいそうニャ!」


「お金の役割…」


「そうニャ!それにダンジョンとかで見つけた物は誰の物でもないんニャよ。見つけた者の所有になるニャ」


「確かに…」


 冒険者に限らず、探索や採取で得た物は手に入れた者の所有になる。それより俺には心を打たれた言葉があった。


「お金の役割…」


 パーティに、そしてギルドにも役立たずと追放されたのがこの俺だ。役に立たない、ずっとそう言われ馬鹿にされてきた。ここにあるお金、コインの山もこのままここにあったのではその役目を(まっと)うできない。俺と違ってこのコインは人の手を()ればすぐに役に立つ。


「そうだ…な、リーンの言う通りだ。この地の底でずっと眠るより、日の光が当たる所に出してやれば…」


「うん、そうしようニャ」


「だけど、小銭ばかりだ。布袋いっぱいに持ち帰っても重いばかりで大した額にはならない…。苦労の方が多いかもな」


 苦笑いしながら俺は何気なくコインの山に手を触れたその時!


(なんじ)天啓(てんけい)を与えん』


 (おごそ)かな女性の声が響いた。




 モチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] バレたら袋叩きに合いそう リーンか黙ってればいいけど酔った勢いでボロっと喋っちゃいそうな危うさあるな 唆されて納得しているけど例えば行商とかでトラブってロストした荷物を「どうせ回収で…
[良い点] 来たきたキタ━━( *´∀`)・ω・)゜∀゜);゜Д゜)・∀・)゜ー゜) ̄ー ̄)=゜ω゜)ノ━━ !!! キタワァ━━━━━━(n'∀')η━━━━━━ !!!! 期待♬︎
[一言] 新作これからの展開楽しみにしてます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ