第38話 新たな天啓とナビゲーションシステム。
「うーん、買い手は付くとは思うんニャけど…」
リーンがカートゥーンボゥの毒針を見ながら呟いた。このカートゥーンボゥの毒針、太めのストローのような物の先に矢印のような突起が付いている。この突起がなかなかに凶悪で縁の部分が少し反り返っている。
「この反りが針を容易には抜けなくしている」
「でも、毒があるんニャよ」
リーンの話によるとカートゥーンボゥの毒針は鏃としては非常に優秀。この針に膠を軸となる木の先端部に塗った物をソケットのように差し込むのだ。非常に簡単に矢が生産出来る。しかし、弊害もある。
「この毒は強過ぎて仕留めた獲物の肉が食べられなくなるのニャ…」
「なるほど、毒が肉に回ってしまうのか…」
「だから、矢を使う職業の狩人とかには好まれないのニャ。せっかく獲れても毛皮くらいしか売れないニャ。お肉が売れなくニャるからね」
「じゃあ、冒険者とかはどうだ?弓を武器に使う冒険者がいるだろう。それにいざとなればアンフルーも弓を使えるんだろう?」
「矢の管理が難しい」
「え?」
「いざと言う時に使うにはすぐに使えるような所になくてはならない」
「そりゃそうだ」
「ひとかすりでもしたら死ぬかも知れない矢を体の近くに置いておく事は恐ろしい。矢筒がもし擦り切れていて、そこから毒針の鏃が頭を出していたら…?」
「ああ、そりゃ危ないな」
「国に納品するとかって方法もあるけど、安いからニャあ…。鏃としては凄く優秀ニャんだけどね。鏃にしたら刺さったら抜けにくい、作るのにも材料さえ揃えば手間いらず…毒さえ無ければニャあ…」
「なるほど…。毒がなければ…か。取り除けたらなあ…。まあ、とりあえずベアイエロプー商会にもらった報酬を山分けだ」
俺がそう言った時にあの声が響いた。
『汝に天啓を与えん』
□
「じゃあ、キノクはその新しいスキルで毒針から毒を無くせるのかニャ?」
「無くせる訳じゃない、取り出す感じだな。とりあえずやってみよう」
俺はそう言って良く水洗いしたジャムの空き瓶を取り出した。小さいサイズだが中身はすでに無い。女子による甘い物への執着はこの異世界でも同様…、いやそれ以上かも知れない。この異世界には甘い物がなんと言っても無いからな。
「…抽出!!」
びゅるっ!!
黒い液体が集まり卵くらいの大きさになる。俺の体から魔力が抜けていく感覚があったが、合成ほどではない。
「これが毒液…」
アンフルーが呟く。
それがジャムの入っていた空き瓶に入った。俺はすぐに蓋をした。
「これで無毒化できたろうか?」
《是。毒物は完全に除去されました》
久々に登場したような気がするナビゲーションシステムさん。うーん、これは良いな。物事を判断するのに確かか確かでないか分かるし…。
《提案。常時ナビゲーションシステムを稼働しますか?YorN?》
ん、常時ナビゲーションシステム?
《是。これまではスキル取得時の案内でしたが、稼働以降は今回のように行動の結果をお伝えいたします》
おお、それは良いな。
《注意事項。一日、千ゼニーです》
有料サービスかよ!
《是》
むう。まあ、情報とは本来有料なものだ。よし、じゃあ稼働で。
《毎度ありぃ〜》
おい。
《いかがされました?》
なんだ今の?毎度ありって!
《そんな事、言いましたか?》
言った。間違いない。
《気のせいです。本日の利用料は無料にしておきますのでお気になさらず…》
はあ…。まあ、良いや。ただ、仕事はしっかりしてくれよ。
《是。今後ともヨロシク…》
こうして俺は毒針から毒を除去し、ナビゲーションシステムとの付き合いを始めたのだった。
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