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第3話 雨宿りの出会い。


 それは突然の事だった。寄る()無き身の上がそうさせたのか落ち込み自分の世界に入り込んでいた俺はそいつの接近にまるで気づいていなかったのだ。気付いた時にはもう目前、俺の顔面5ミリ前…そんな感じだった。


 勢いよく飛び込んできた何かが俺の顔面に炸裂(さくれつ)。熊のような大きな体を持つ生き物でこそなかったのが不幸中の幸いであった。しかし俺は地面に弾き飛ばされ、さらには何かが顔の上に乗っている。


「ふうう〜、なんとかびしょ濡れになる前に雨宿り出来そうな所があって良かったニャ」


 俺の顔の上に乗っている何者かが安堵したような声で何か言ってやがる。たまらず俺は文句の一つでも言ってやろうと口を開く。


「おい」


「…あニャニャ?キミ、人のお尻の下で何をしているのニャ!?そんな所で寝ていると風邪ひくニャンよ」


 仰向けに転がった俺にその原因になった当事者がまるで責任を感じてない物言いをしている。


「お前がぶつかってきたんだろうが」


 俺は声の主に文句を言った。


「ニャッ?…ニャハハッ!そ、そうだったかニャ?お(さかニャ)釣りしてたら雨が降ってきて雨宿り出来そうな所を探していたのニャ。それでここを見つけたもんだからよく中を見ないで飛び込んでしまったニャ。ごめんニャさい」


 妙な話し方というか、語尾の奴は慌てて立ち上がった。


 木のうろの中は薄暗く、相手の顔は分からなかったが頭を下げたのはなんとか分かった。声からして女の声、それもかなり若いようだ。


「まあ、良いけどさ…。俺も同じ理由でここにいるんだし」


「キミも雨宿りかニャ?えーと…」


紀伊国(きのくに)だ」


 俺は自分の名字を名乗った。下の名前、いわゆるファーストネームで呼び合うのは日本人の俺には少々ハードルが高い。


「キノ…ク?」


「違う、キノクニだ。き、の、く、に」


 俺は一音ずつ区切って発音した。これじゃ追放したアイツらと同じ呼ばれ方じゃないか!


「キ…ノ…ク…ン…。は、発音が難しいのニャ…」


 語尾にニャを付けるそいつはしょんぼりとした声を出す。どうやら紀伊国(きのくに)と発音するのは思いの(ほか)難しいことらしい。


「まあ…良いよ。…その、キノクでさ…」


 こちらに一切の非は無いのだが、落ち込んでいるようなそいつになぜだかこちらが悪いことをしたような気になってくる。


「ありがとニャ! ボクはリーンだにゃ!」


「あ、ああ。それより、見てるんだったら助け起こしてくれ」


 そう言って仰向けに転がっていた俺は右の手を伸ばした。


「分かったニャ!」


 リーンが俺の手を取り足を踏ん張るのを見て、体を起こそうと地面に左手をついて力を込めた。すると手をついた地面がズボッと抜けた。まるで湿気で腐った薄板を踏み抜いたかのように、支える物がなくなった俺の体は当然落下を始める。


「わああああっ………」

「ニャああっ………」


 次の瞬間、俺とリーンは木のうろの中にできた穴に転がり落ちてしまったのだった…。






 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 雨は降り続いている。


 日も暮れて外に出るのも躊躇われるのでキノクは知り合ったリーンと共に落ちた先を探索するのだが…。


 次回、第4話。


 『落ちた先で…』


 お楽しみに。

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