第26話 成長しない理由(わけ)。(前編)
ほとぼりが冷めたと見たのか、リーンが布団から顔だけを出し声をかけてきた。
「そう言えばアンフルー」
「何?」
「キノクの事なんニャけどね、いくらモンスターを倒してもレベルが上がらないみたいニャんよ。アンフルーは色々な事に詳しいからその辺の事なんか分からないかニャ?」
ああ、そう言えばそんな話してたっけな。
「レベル…、上がらない?」
「そうらしいんニャ。だからアンフルーなら何か分かるかと思ったんニャ」
「実は俺、ゴブリンとか倒しても上がらなかったんだ。だから、パーティからもギルドからも追い出されてな」
「ふむ…」
アンフルーが立ち上がった。
「紙があれば分かる…。羊皮紙ではなく、樹皮から作ったものが…」
「紙…?あ!ええと…、これで良いか?」
プリンターからA4の用紙を抜き取ってアンフルーに手渡す。
「ん…」
アンフルーが頷いた、どうやらこれで良いようだ。
「凄いニャ!キノクは樹皮から出来た紙も持っているのニャ!買うとなったら高くつくのニャ…」
文字を書く紙…、これは中々に高価である。
まず羊皮紙、そもそも紙ではなく皮を加工したものだ。羊皮と言っても良い。つまりは革製品なのだ。当然ながらそれなりに値段がする。しかし、手間としては皮を剥いで脂肪などを落としピンと張って紙状にした物なので、木から作る紙よりは圧倒的に手間が少ない。
紙はそもそもどんな木でも良い訳ではない。紙の製造に適した木を採取し、さらに完成までにいくつもの工程を経なければならない。羊皮紙は動物の皮ならだいたい利用出来る、肉を取った後に残った皮…、つまりは余った物を利用して作る事が出来るのだ、そのあたりからして差がある。さらには樹皮から作るには薪や水も大量に必要とする。それも一回ではないのだ。
材料が少なく燃料も必要。手間暇もかかるのでそれが価格に反映される…当然と言えば当然だが、現代日本で育った俺には信じられないという思いもある。
いずれにせよ公式文書でも一般的には羊皮紙が使われ、樹皮から作られた紙は国家間の大切なやりとりとか貴族のバックアップを受けている高名な画家などしか使われる事もないという。
「よし…。まずはこれでキノクを調べてみる」
「う、うん。よろしく頼む」
アンフルーの言葉に若干緊張気味に応じた。思い返してみれば冒険者ギルドで調べてもらったが、その結果は馬鹿にされるものでしかなかった。戦闘職ではない商人という職業、そしてなぜかレベルアップをしないという呪いを受けているかのような状況。馬鹿にされ…奴隷のように扱われ…、辛い事しか思い出せない。
だが、もしアンフルーによってレベルが上がらない理由が分かれば…そんな思いが胸を過ぎる。
「じゃあ…」
お、いよいよ…。でも、紙を使って何をするんだ?メモでも取るのか、そんな事を思っているとアンフルーが口を開いた。
「キノク、服を脱いで」
「え?」
「服を脱いで」
「なあ…」
「何?」
「なんで服を脱ぐ必要があるんだ?」
「調査に必要」
「絶対?」
「絶対」
「マジかよ…」
「さあ、脱いで。…はあはあ」
「抑揚のない話し方なのに呼吸を乱すとか器用だな、オイ」
「準備が出来たらその布団に…。そう、心の準備が…」
「なんだよ、心の準備って!」
「大丈夫、ちょっと痛いだけ」
「お、おい…」
痛いってなんだ、痛いって!?だが、この状況…。俺はどうするべきだろうか。
短めです。いかがでしたでしょうか?
個人的な話ですが、ガチャでニシノフラワーが引けません。
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