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第21話 リーンの相棒、アンフルー登場。


 第2章開始です、よろしくお願いします。


 一夜明け、俺とリーンは並んでアブクソムの街に入った。人の運命とか縁というものとは分からないものだ、一昨日この街を出た時は一人だったが今日は二人で戻ってきた。


「とりあえずボク達がとった宿に行くニャ。相棒にも会わせたいし」


「リーンの相棒か」


 街中は二日前と同じく活気に溢れている。行き交う人の足音や物売りの声が常にする。この街には数多くの人が住み、生活に欠かせないものを売り買いする必要がある。


 俺はこれからどうするかを考えていた。両替に公共料金に投資…あまり聞いた事がない能力。確かにあったら便利とは思う、しかし使える場面は限られてくる。今回は大金を得られたが、それだっていつかは使い果たす。無限ではないのだ。


「見えてきたニャ。ボクらあそこに泊まってるんニャよ」


 リーンが案内してくれたのは小綺麗(こぎれい)な宿屋だった。


「うーむ、泊まったら高そうな宿だな」


「確かに安くはニャいけど、キノクの部屋のがずっと心地良いのニャ。おんせんにも入れるし…特にあのオフトゥン、たまんないのニャ」


「そうなのか?俺は満足な金がなかったから宿になんか泊まれなかったから部屋で寝泊りしていたよ」


「ボクに言わせればうらやましいのニャ」


「そういうものか」


「とりあえず相棒を呼んでくるニャ、ちょっと待ってて欲しいニャ」


 そう言ってリーンは中に入っていった。…が、すぐに戻ってきた。


「ごめん、外出してるみたいだニャ」


「そうか。でも、仕方ないな。ちょっと出てくるっていうのが、帰ってきたのが二日後になっちゃったんだから」


「でも、遠くには行ってないと思うのニャ。ボク、ちょっと街を探してみるニャ」


「じゃあ、俺はどうするか…」


「そこの広場で少し待ってて欲しいニャ。一回りして顔を出すのニャ」


 リーンが通りの先を指差す、なるほど確かに広場が見える。


「分かった」


「じゃあ、行ってくるニャ」


 そう言うとリーンは手近な建物の壁向かってジャンプ、その壁をべったりと両足の裏で(とら)えると奇声を上げて反対方向の空高く跳んだ。


「キエエエエエエエェェェッ!!」


 ひらりと宙を舞ったリーンは建物の屋根に鮮やかに着地した。


「じゃあ、探してくるニャ〜」


 唖然とする俺を残し、風に乗ったタンポポの綿毛のごとく軽やかにリーンは屋根伝いに駆けていった。



 他にする事もないので俺は広場へと向かった。広場と言ってもそれなりに広い。日本で例えればそれなりに名が知れて面積もある公園ぐらいの規模がある。


 とりあえずのんびりしてみよう、今まで冒険者パーティ『高貴なる血統』の下で小間使いか奴隷か…給金さえ払われずコキ使われてきた事を考えれば少し休んでもバチは当たらないだろう。


 なんなら今後の事を考えても良い。新たに出来るようになった事を活用して稼ぐ手段はないか考えるのだ。この世界で生きていく為に。


 何の気無しに広場内でブラブラしていると気にかかる事があった。広場の片隅にしゃがんでいる人を見つけたのだ。


 気分でも悪いのだろうか…、気になったので近づいていく。


 金髪の女性、体つきは華奢(きゃしゃ)だ。


「あ、あの…。ご気分でも悪いのですか?」


 初対面だし、病人ならぶっきらぼうな口調で話しかけるのも気が引ける。そっと近づいて斜め後ろから声をかけた。自然と丁寧な口調になった。


「ん?」


 しゃがんでいる女性が姿勢はそのままで返事だけを返してきた。


「私の事?」


「え、ええ…。気分でも悪くてしゃがんでいるのかと思いまして…」


「気分は悪くない」


「そ、そう。じゃ、じゃあ…何を…?」


「見守っている」


「え?」


「芽を出したこの植物が花を咲かせるのを…見守っている」


 こちらを振り向きもしないその女性の見つめている先には確かに芽を出したばかりと思われる小さな植物があった。


「あ…そ、そうなんだ。えっと…、その花って…すぐに咲くの?」


 芽を出したばかりのものを花が咲くまで見守っているんだ、もしかしたらあっと言う間に成長して花を咲かせるのかも知れない。異世界にはきっと俺の想像もつかないような事があるに違いない、そう思うと少しだけ興味がわいた。


「ん…、そう長くはない」


「へえ…、どのくらい?」


「ん…」


 その女性はグッと顔を近づいて小さな芽を見つめた。そして、少しの間をおいて彼女はこちらを振り向いた。


 さらり…。


 美しく長い金髪が手の平から砂をこぼしたように乗っていた肩から落ちた。長い耳が垣間見えた。…エルフ?


「だいたい…、今から41日後」


「長いわッ!!」


 俺は思わず声を発していた。


「あっ!キノク〜!ごめんだニャ!探してみたけどいなかったニャ〜」


 たったったっ!


 振り向くとリーンが走ってきた。


「お、おう。リーン」


「リーン?」


 しゃがんでいた女性が反応した。


「あーっ!!アンフルーだニャ!こんな所にいたのかニャ!」


「リーン、二日ぶり。珍しい、寄り道?」


「えっ!?キミ達、知り合いなの?」


 いきなりの展開に俺は戸惑う。


「知ってるも(ニャに)も…」


 リーンが俺の方を向きながら応じた。


「紹介するニャ。ボクの相棒、エルフのアンフルーだニャ」



 新キャラ登場です。


 アンフルーの名前の由来はフランス語で『一つの花』を意味する『アン フルール』に着想を得て名付けました。



 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援のメッセージをいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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