第145話 不壊のゴーレム
「ああっ!ストーンゴーレムの顔面にッ!!」
リーンの横合いからの飛び蹴りによりストーンゴーレムの拳は自らに返っていった。その当たり所は右拳を振るったストーンゴーレム自身の顔面。炸裂した瞬間、ストーンゴーレムの顔面から細かい破片が舞った。
「ふふん!!ボクの蹴りの威力を上乗せしてストーンゴーレムのパンチをお返ししてやったのニャ!ご自慢の自分自身の拳を喰らわせてやったニャ!」
してやったりとばかりにリーンが笑みを浮かべる。
「おおっ!!これはやったか!?」
思わぬ反撃に俺はついそんな呟きを洩らした。だが次の瞬間、しまったと後悔する。これはフラグだ、フラグになるセリフだ。絶対に敵が倒れないという…。
ゆら〜り…。
ストーンゴーレムがゆっくりと動きを再開した。クリーンヒットしたはずの反撃だが大して効いてないと言わんばかりに首を左右に動かす。これが人間ならコキコキと関節を鳴らしているかのようだ。そしてストーンゴーレムののっぺら坊の顔がリーンを眺めているかのようだ。
「小娘…。今…、何かしたか?」
そんなことを言っているかのように感じられる。
「ほ、ほとんど効いてないニャ」
さすがのリーンにも動揺が見られた。
「面白い、面白いぞ」
部屋の奥から声がかかった。敵の親玉が愉快だとばかりにしている。
「あのように反撃するとはな。だが、その石塊はドラゴンに踏まれても壊れぬ頑丈さに定評があることから…」
ドラゴンだって!?思わず生唾を飲み込んだ、思いの他大きな音が響いた。
「不壊のゴーレムと名付けられている」
□
どうする…?
最初に思ったことはそれだった。
とてつもなく頑丈なゴーレム、俺のビブラートと対物質系への有効な打撃…。俺がひたすら攻撃を加えて倒すか…。
「駄目ニャ」
リーンが短く言った。
「キノクも…、スフィアも…手を出したら駄目ニャ」
「リーン!?」
「リーンさん!?」
こちらを振り向くことなくストーンゴーレムを見据えながらリーンが応じた。
「アイツに対して二人は相性が悪過ぎるニャ」
「どういうことだよ?」
「まずキノクは身軽さの不足ニャ。確かにキノクの拳打はヤツにも効くとは思うニャ、だけどヤツの振り回す腕からキノクは逃れられないニャ」
「ウッドゴーレムと同じくらいのスピードだ、かわせないってことは…」
「アイツ、豪腕すぎるのニャ」
「え!?」
「キノクは多分あのストーンゴーレムのパンチ自体はかわせると思うのニャ」
「そうだろ!?なら…」
「だけどねキノク、アイツの唸りを上げて振り回す腕は大きくかわさないと衝撃波に巻き込まれて吹っ飛ばされてしまうニャ。一瞬で大きく距離を取れない限りやられてしまうニャ、」
「では、わたくしなら…」
「スフィアの相手の核を狙い澄まして突く技術は凄いニャ。だけと今回は相手が悪いのニャ。なぜか分からないけど魔石を埋め込んだ核の部分…、見当はついているのかニャ?」
「そ、それは…」
「そうなのニャ、なぜか文様が見えないのニャ。隠されているのかも知れニャいけど…。そうなるとスフィアにはストーンゴーレムを倒す決め手が無くなるニャ。魔石はどこに埋められてるのか分からニャいと頭の先から足元まで探さないといけないニャ、アイツの攻撃をかわしニャがら…。それがどれだけ大変かはスフィアなら分かるはずニャ」
「リーンさん…」
接近戦が無理…、なら飛び道具を使うか…そう考えた時だった。
「私が…リーンに手を貸す」
「アンフルー!?」
後衛のアンフルーがやってきていた。
「キノクとスフィアは私と交代。下がって回復、あーるじーえぬを守って…」
アンフルーが出る、魔法の出番か?そうか、爆発の魔法でも使うのか。
「ほう…、魔法でも使う気か?そこのエルフの女」
顔や姿がよく見えないが敵の親玉が言った。
「物理攻撃がほとんど効かない此奴に魔法攻撃を仕掛けようというのだろうが…、はたしてどうかな?生憎この石塊は魔法に対しても強い抵抗力を持つ、ほとんどダメージは無いぞ。ただ魔力を無駄使いするだけの徒労に終わることになる」
そんな敵の親玉の言葉にはお構い無しにアンフルーは前に進む。
「忠告、痛み入る。でも、私には…」
アンフルーがリーンのすぐ後ろまでやってきた。代わりに俺とスフィアが下がる形になる。
「勝利への道筋、既に見えている」
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次回予告。
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ドラゴンに踏まれても壊れず、魔法でもダメージが通りにくいストーンゴーレム、別名『不壊のゴーレム』。
そんなストーンゴーレムを前にアンフルーは?
次回、第146話。
『アンフルーの秘策』。
お楽しみに。




