第144話 突入、ボス部屋!
「よし、行くぞ」
「ニャ」
「ん…」
「いつでも」
「はいっ!」
四人の仲間達から返事が返ってくる。
それを聞いて俺は扉に手をかけた。すると押してもいないのに扉が重そうな音を立てながらひとりでに開いていく。
ガゴゴゴゴゴ…。
扉が開くとリーンとスフィアが前に出た。少し後ろに俺、最後方にRGNとアンフルーが続く。非戦闘員であるRGN、その彼女がここにいるのには理由がある。俺の持つ陣形というスキル、これは人数が多いほど効果が高まる。
しかし当然ながらRGNは戦う能力は無いから敵とはやり合わせる訳にはいかない。彼女を守りながらの戦いになる。
「ライティング(灯り)」
アンフルーが魔法の灯りを扉の奥に飛ばした、次第に中が照らされていく。
「ゴーレム…?」
中には三体のゴーレム、彫像のように動かず静止していた。数メートルはある巨大な体軀、だが一体だけ色が違うような…。
「二体はウッドゴーレム。あとの二体は…?」
「岩石ゴーレム…」
アンフルーが呟いた。
「なんだって!?」
ストーンゴーレムって…ウッドゴーレムより手強いゴーレムじゃないか。
「奥にもまだ何かいるニャ!!」
リーンが警告の声を上げた。
ゴーレムの後方に目をやるとさらにまだ人型の何かがいて何やら玉座のようなものに座っている。その何者かがゆっくりと立ち上がった。
「敵方の総大将でしょうか?」
スフィアの指摘、俺も同じことを考えていた。見た感じではその体格はゴーレムよりは小さそうだが…。
「侵入者か。許さん、蹴散らせ」
そのボスと思しき敵の声が聞こえた、よく通る声だった。その声を受けて今までピクリとも動かなかった三体のゴーレムが動き始めた。
「来るッ!!方円の陣ッ!」
俺は陣形のスキルを発動させる、RGNが加わり人数が増えたのでさらに防御力上昇の効果が高まる。
「ボクがストーンゴーレムを相手にするニャ!」
「では、私は右のウッドゴーレムを!」
「左は俺。アンフルーは状況に応じて魔法を!RGNは周りの警戒!」
三体のゴーレムに対してはリーンとスフィアだけでなく俺も加わる。問題はボスらしきヤツがどう動くか。未知の相手だがアンフルーは機転が効く、きっとなんとかしてくれる。その間に三体のゴーレムを倒してしまいたい。
「仕掛けるニャ!」
リーンがストーンゴーレムに接近する。同時に俺とスフィアの前にもウッドゴーレムが近づいてきていた。
□
「コイツ、通路にいたゴーレムとはスピードもパワーも違うッ!!」
接敵した俺の第一印象がそれだった。
「選りすぐりの精鋭ですわね」
スフィアの声が聞こえた。向こうを見る余裕は無いがスフィアも楽勝という訳ではなさそうだ。
ウッドゴーレムの大振りした拳をかわし俺は敵の足元に肉薄する。
「ビブラート!!」
俺は吟遊詩人の能力を両の拳に発現させる。この能力は振動を生む、薄いガラスなら割れるくらいに。さらに新たに得た空手家の特性、非生命体への物理攻撃がよく効くようになる。これは瓦などを割る試し割りの技術だろうか、とにかく物質系の敵に相性が良い。そして俺はウッドゴーレムの左の太腿にあたる部分を殴りつけてみた。
左、右と打ち込んでみるとウッドゴーレムの太腿には二つのテニスボールくらいの大きさのえぐれができており、木の粉が舞う。
「効いている」
俺は思わず呟く。新しい副職業を得て薪を殴りつけた時にできた木や石などを粉砕する能力はウッドゴーレムにも有効のようだ。俺はウッドゴーレムの左太腿に攻撃を続ける、後方に回り込みながらさらに拳打を続けた。だが、拳の当たり方によっては削れる体積が変化する。
「それなら」
俺は攻撃を拳打から相撲の張り手に切り替える。これは良い、拳より手の平の方が接する面積が大きいのが良かったのか削れていく体積が増した。チャンスと見て俺は張り手を一層連打する。
めきぃっ!!
大腿部が大きく削れ自重を支えきれなくなったのかウッドゴーレムの太腿から木がひしゃげるような音がした。危険と判断し俺はウッドゴーレムの右後方へと移動する。
伐採のための切り込みを入れた木が倒れていくようにウッドゴーレムがバランスを崩していく。しかし、そんな事はお構い無しにウッドゴーレムは俺を追いかけようとする。それがいけなかったのか左足にかかる負担が増し完全に折れた。
ズズ…ン。
ウッドゴーレムが横向きに石の床に崩れ落ちる。ウッドゴーレムは両手を床につき起き上がろうとする、だがそれは完全に背中を見せる事でもある。俺はその背中に飛び乗る、リーンのように一撃必殺とはいかないが、攻撃力が少ないなら少ないで何発も打ち込めば良い。そしてウッドゴーレムを倒すには完全に破壊するか核の部分を貫き魔石を体外に排出さしてしまえば良い。
よく見ると飛び乗ったウッドゴーレムの背中には小さな文様が描かれているのが見えた。見落としがちな本当に小さなもの…。
スフィアはそれを見切り、そこを貫くような打撃を放っていた。動いている敵に対しその一点を貫くのはまさに神業だ。俺にはそんな事はできない、だから両手を組み文様のあたりをガンガンと叩きつける。効果が切れたので再び手にビブラートの効果を宿す。一気に魔力を消費する感覚、自室で試しに使った時は片手に宿した時の消費魔力は1ポイントだった。
だが、効果に両手に宿したので二ヶ所だ。さらに消費魔力は三倍らしいから魔力を一度に6ポイントを消費する。
だからとにかく連打する。魔力を使い切る前に。
そうするうちにウッドゴーレムのボディに大穴が空き、魔石も床に転がっていてウッドゴーレムはその動きを止めていた。
どだああんっ!!
音がした方を見るとウッドゴーレムが倒れていた、スフィアが見事ウッドゴーレムを倒していた。残るはストーンゴーレムだが…、そう思ってその姿を探す。
ストーンゴーレムはいまだ健在であった。
□
リーンが苦戦をしている。
基本的にウッドゴーレムとストーンゴーレムは同じくらいのスピードだった。リーンの素早さなら容易く翻弄できる。しかし問題はそのパワー、ウッドゴーレムとは段違いだった。
唸りを上げて振るわれるその豪腕、リーンは大きく距離を取りかわす。だがそれでもリーンの着ている衣服が突風に吹かれたように靡く。あれではギリギリを見切ってかわそうとしたら衝撃波のようなもので体重が軽いリーンは吹き飛ばされてしまうだろう。
だが、それより脅威なのは…。
「ニャ〜!!」
リーンが反撃に転じ、ストーンゴーレムの首付近に飛び蹴りにいく。見事に命中するが敵は痛くも痒くもないといったところ。
「ふニャ〜。コイツ、硬すぎるのニャ!ボク、関節部分なら少しは効くと思ったのに…」
飛び蹴りから着地したリーンが悔しそうに呟く。どうやらリーンは様々な部位を攻撃したがストーンゴーレムにはダメージらしいダメージになっていないらしい。そして大きな動きで敵とやり合わなければいけないのでスタミナ豊富なリーンといえども疲労が見え始めていた。
お返しとばかりにストーンゴーレムが拳を振り上げリーンに迫る。しかし、リーンは動く素振りを見せない、まさかスタミナが尽きているのか?
「どうしたら良いかニャ〜?この硬い敵に対して…。ボクのパワーじゃ…、って言うか普通に無理ニャんね」
「く、来るぞ!?リーン!」
「そうニャッ!!」
3メートルはあるであろう巨大なストーンゴーレムが身長150センチ程度のリーンに右拳を振り下ろした。それをリーンは左に…真横に数メートル跳んでかわし…。
「これでどうニャ〜!!」
反復横跳びのようにリーンが元いた場所に向け跳ぶ、そして振り下ろされるストーンゴーレムの腕…肘から先のあたりに横から蹴りを入れた。振り下ろすストーンゴーレムの腕にリーンが横合いから蹴りを入れたことで殴りつける腕の軌道が変わる。
ガッ!!
「ああッ!!ストーンゴーレムの顔面にッ!!」
リーンに向けて振り下ろされたストーンゴーレムの拳がその顔面に当たっていた。
いかがでしたでしょうか?
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次回予告。
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リーンの反撃にストーンゴーレムは…?
なす術無しと思われた時、あの人が動く…。
第145話『不壊のゴーレム』。
お楽しみに。