第129話 呼び出せ、キノクのサーバント!
色々ぶっ込みました。
後悔はしていない。
「従者召喚…、RGN…。2750万ゼニー」
ノートパソコンの画面にそんな文字が浮かんでいる。
「従者召喚…、こりゃ意味通りだよな。RGN…型式…?なんだ、型式って…。何かの機械…?従者ロボットみたいな感じなんだろうか?」
2750万ゼニー…、確かに高価ではある。しかし、ロボットならロマンがある。子供の頃、有名なロボットアニメのプラモデルを作った事もあった。
「今回俺はレベルが一気に上がって65。もっとも商人だからパラメーターの伸びはイマイチ。戦力増強を考えるならアリかもしれない。よし、買おう。ポチッとな」
すると畳の上にあった金貨が減り、代わりに一つの小箱が現れた。
「おい、まんまプラモデルじゃねーか」
現れた物を見て俺は思わずツッコんでいた。
□
翌朝…。
布団の中がもぞもぞと動く。
「…ふみゅ?…ニャ、ニャ〜?いないのニャ!?キノク〜、キノク〜!?」
布団の中からリーンの戸惑ったような声がする。
「こっちだ、ちゃぶ台にいるぞ」
がばっと布団がまくれ上がるとリーンが頭だけを出した。
「ニャ!?ニャ〜。いつの間にオフトゥンを出たのニャ!ボク、寂しいのニャ!」
しゃかしゃかしゃかっ!!
薄手のキャミソールにショートパンツ、リーンは布団を飛び出て四つん這いのままこちらにやってくる。そのスピードは速い。そのままの姿勢で頭からぶつかってくるような感じで俺の元へとやってくる。煙突のようにピンと立った尻尾が印象的だ。
「何してるのニャ〜?」
定位置と言わんばかりに俺の膝の上に陣取るとリーンは首だけ動かしてちゃぶ台の上を見た。
「お人形さんかニャ?」
俺が作っている20センチあまりの戦闘ロボットを見てリーンが尋ねてきた。全体的には青と緑の色が若干入ったパールホワイト、そして肩や胸部が赤みがかったレンガ色である。
「まあそんなところだ。今細かい作業してるから朝飯とかちょっと待ってくれな」
「分かったニャ。じゃあボクはもうひと眠りニャ」
すぐにスヤァ…といった表情を浮かべリーンが寝息を立て始める。
「キノク…」
「キノクさま」
そこにアンフルーとスフィアがやってくる。彼女達はリーンのと比べると少し丈の長いキャミソールを寝間着として着用している。
「何をしてらっしゃるのですか?」
「ああ、実は新しいスキルを得てな…。従者召喚っていう能力。それがこの人形らしいんだが…」
「この金属は…魔導人形」
「魔導人形?」
確かに最初はプラモデルかと思ったが、確かにパーツは金属製だ。
「そう。これは一見しただけでは組み立て式の人形。だけど…これ」
そう言うとアンフルーは一枚の銅板のような物を指につまんだ。暑さ1ミリ、縦横1センチ四方の金属板である。
「ああ、それも入ってたんだよ。だけど魔力を流せと組立説明書に書いてあったがただ流して良いものかが分からなくてな」
俺はボディパーツを組み立てていたもののこの板にどう魔力を流せば良いものか分からなかったのでアンフルーが起き出してくるまで待ってみようと思ったのだ。
「これは魔導制御盤」
「それはどういう物なんですの?」
「魔導人形は組み立てただけでは文字通り人形でしかない。しかし、この魔導制御盤を人形の中に組み込むことで自律的に動くようになる。魔導制御盤に魔力を流し込んでやる必要があり、多く魔力を流せればただ動くだけでなく、より細かい命令を与える事が出来る」
「命令?」
「ん、例えば…この場所を守れ…みたいに」
「ああ、なるほど」
うーむ、いわゆるゴーレムみたいだな。俺はアンフルーから魔導制御盤を受け取った。
「それならこれに魔力を込めたら良いのか?」
「そう。それと注ぐ魔力は多い方が良い。そうするとより細かい命令を与えられる。…えい」
アンフルーが後ろから抱きついてきた。
「これで魔力をバックアップできる」
「それならわたくしも」
スフィアは横から、これって抱きつく必要があるんだろうか?背中に手の平をくっつけるとかじゃダメなんだろうか。
「さあキノク、私がサポートする。ゆっくり、少しずつ魔力を流し込んで。一気に流したらダメ、ムラを作らないように…」
「分かった」
俺はゆっくりと魔力を流し込み始めた。
「やり直しは利かない、慎重に…慎重に…。成功か失敗か二つに一つ…。大丈夫、私がいる。必ずせいこうする、性交か成功しか起こり得ない」
「ん?なんで二回言った?」
「気にしない、先は長い。どんな従者にしたいか頭に浮かべながら魔力を流すと良い」
「わ、分かった」
どんな従者にしたいか…か。
今の俺にはリーン、アンフルー、スフィアがいる。いずれも一騎当千の凄腕だ。そうなると戦いの面では十分な人材がいるという事になる。もちろん腕が立つ仲間がいるのは心強いが、別に従者だからと言って必ずしも戦わなければならないというものでもない。
家事をしたり物作りをしたりというのでも良いだろう。そう言えばプルチン達から徴収した物もあるし…売買する必要もある。そういう俺の商人としてのサポートについてもらうというのも良いかも知れない。
だけど、元になっているのは戦闘ロボットのプラモデル…いや金属モデルか。うーん、どうしたものか…。コレ、特長がないのが特徴みたいな機体だし。あれ?さっきアンフルーが言ってたよな、どんな従者にしたいかって。もしかすると魔力を流しながら俺が考えている事が反映されるのかも知れない。そうなると色々思い浮かべてみるのも良いかも知れない。
ロボットって言っても色々あるよな。人が乗って戦うのもあった。どう見ても人とそっくりなロボットが登場するのもあった、ドジっ子だったり無口だけどあらゆる事を瞬時に検索しかつ有事の際には強いとか…。世界的に有名な色々な道具を出したりするロボットもいるし、工場で稼働するロボットもいる。
「損傷ついた〜♪魔導制御盤〜♪」
アンフルーが鼻歌を歌っている。
「おい、なんだその歌は?」
「これ?これは爆殺王という歌」
アンフルーが応じた。スフィアがそれに続く。
「古の魔導人形の歌ですわ。その魔導人形は爆発の力を駆使して戦ったと言われています」
「そ、そう」
「ちなみにこの歌が終わると魔力を注ぐ時間は終わり」
「それを先に言え!」
俺は残りの時間、集中を切らさないようにして魔力を注いだ、そしてアンフルーの歌が終わる。小さな金属板に何やら細かい…虫眼鏡でも使わなければ見えない模様か文章でも浮かんでいるようだ。それが俺の手を離れ魔導人形に向かいゆっくりと飛んでいく。そしてどういう構造なのか分からないがそれが20センチあまりのロボットの中に吸い込まれるようにして消えた。
ぴかあっ!!
魔導人形が強い光を放つ。
「眩しッ!!」
俺達は目を伏せた。
とんっ!!
何かが落下して着地したような音。
「きゃっ!」
女の人と思しき声だが、目が眩んでしまって俺はまだ目が開けられない。
「はわわわわ〜!?こ、ここはちゃぶ台の上っ?こんなとこに乗ったら駄目ですう〜!きゃあっ!?」
どてっ!!
畳に何かが落ちたような音。
「な、なんだ?」
目の眩みが収まってきて俺はようやく目を開けた、そこには…。
「は、はわわわわ〜!落ちるぅ〜!」
畳の上でジタバタしながら悲鳴を上げている女の子(?)がいた。赤みがかったレンガ色のブレザー、青か緑の系統の色が入った暗めの白いスカート。しかし何より特徴的なのは緑がかった長めの前髪が額から目元まで完全に隠している事だ。
「お前もう…、落ちてるぞ」
なんて言って良いか分からなかった俺はとりあえずそんな声をかけた。