第127話 第六章エピローグ (プルチン達の末路)
冒険者ギルドでの騒動から数日後…。
アイセル帝国帝都アブクソムに新たな催しが人々の話題を呼んでいた。安くはない金を払う事になるが客足がひっきりなしであった。
「な、何しやがンだッ!!やめろ、やめ…グハッ!!」
どちらかと言うと下層の民が住む地域、そこに地面に2メートルほどの太い木の柱が打ち立てられそこにプルチンが縛り付けられている。その縛り付けられたプルチンが一人の男が殴られたところであった。そしてプルチンを殴ろうとやってきたのは一人ではなかった、列をなして並んでいる。
「何がやめろだ、やめて下さいだろ!このクズが!」
「わ、分かった。や、やめて…くだ、さい」
「やめるかよォォ〜!!クズが!」
「うげえっ!!」
先程プルチンを殴りつけた男の次に並んでいた男がプルチンを殴りつけた。
今は縁切りされているとは言え子爵家の生まれを鼻にかけていたプルチン、それは街に住む民衆に対しても態度に現れていた。キノクを荷物持ち兼雑用として使い冒険者として上手くいっている時から…いや、それ以前から街中で横暴な振る舞いをしていた。その事に恨みを持つ民衆も少なくなかった。その時の恨みを晴らそうと人々がこぞって並んでいたのだ。
「よォ〜し、俺はこの棍棒を使うぜぇ〜。プラス1000ゼニーで良いんだよなあ?」
「あっ、俺も俺も!コイツはこっぴどく痛めつけてやらねえとな!」
参加費を上乗せして棍棒を手に取ってプルチンに叩きつける者も珍しくない。
「俺はこっちの体格の良い坊主頭をやるぜ!オラァッ!!」
「ぬがあああッ!!」
プルチンの隣にはハッサムがこれまた木の柱に縛り付けられ殴られている。プルチンほど人の恨みを買っていた訳ではないがその体格の大きさから殴り甲斐があるとばかりに殴る相手をハッサムに決め並ぶ者も多い。
「おっ、コイツら気を失いやがったぜ!」
「だらしねえなあ、貴族ともあろうモンがよお!!」
「おい、目ェ覚まさせてやれよ!」
特権階級である貴族を嫌悪する民衆は多い。しかし、いかに恨みを募らせようとも法に守られている貴族に手出しをする事は出来ない。すれば重い罰を与えられる。それがこの場では金を払えば素手で…、さらに金を積めば道具を使って痛めつけられる。貴族に不満がある者はこぞって並ぶ。
ばしゃあっ!!
プルチンとハッサムにキノクが作った冒険者用応急薬がぶちまけられる。すぐに傷が塞がり二人は意識を取り戻す。
「うひょー!スゲえな、あの薬!」
「ああ、最近話題のポーションだな。凄腕の錬金術師らしい」
「マジか!でもこれで好きなだけ殴れるぜ!」
「よーし、手加減ナシでまたやるぞ!」
「「「「おお〜ッ!!」」」」
民衆は沸き立ち、反対にプルチン達は青ざめる。
「そういや誰がこんな良いモンを考えたんだ?」
「ああ、そのポーションを作った奴らしい。殴られ屋って言うらしい」
「へぇ〜、殴られ屋ね。よし、次は俺の番だ」
「も、もう…、やべて…くれ…」
「やめるかよォォ、オラァッ!!」
プルチンの願いもむなしく希望者は後を絶たない。本人達の不人気とは裏腹に殴られ屋は大好評であった。
一方、ウナとマリアントワは娼館に売られていった。
貴族階級出身、実際には魔法は満足に扱う事も出来ないが大魔導士と至聖女司祭という最上位職業持ちが客を取る。それが大きな評判を呼び二人の存在はたちまち評判を呼んだ。
プルチン達は一日平均10万から15万ゼニー程度、ウナ達は20万から25万ゼニーを稼ぐ。もちろん不眠不休である。
「つ、辛い…。だがこれだけ稼いでいるンだ、数年でこの地獄から解放される…」
「う、うむ…。それまでの…辛抱だ…」
客が途切れた時にプルチンとハッサムがそんな話をしていた。
「ああ?何言ってんだ、お前ら?」
この殴られ屋を取り仕切るシェドバーン傘下の商人が言った。公にしにくいグレーゾーンの商売を任されている男である。
「何言ってるだと?これだけ稼いでるンだ!二年か三年ありゃあ…」
「馬鹿かお前?」
「なにィ?」
「お前らは支払い切れねえ慰謝料をシェドバーンの旦那に肩代わりしてもらって代わりに働いてるんだよなあ?」
「それがどうしたと言うのだ?」
ハッサムが問い返す。
「肩代わりしてもらった…つまり借金だ。ところで借金てのは利子がついてくモンだよなあ?そもそも支払い能力の無いお前らが大金を借りてんだ、高く付くぜ、その利子はよぉ。返し切れねえくらいになあ?だが、返済が終わらない方が良いかもな。放免されてもお前…」
「な、なンだよ?」
「公爵令嬢サマを襲撃したんだろ?衛兵に捕まるぜえ〜?いや、オルディリン神殿が目の色変えて追ってくんじゃねえか?令嬢サマはヴァルキュリエでもあるんだから。詰んだな、お前ら」
「「……………」」
プルチン達は黙り込むと共に悟った、これは手詰まりであると。今後自由とは無縁な人生が待っていると…。どこからこんなつまずきが始まった?新進気鋭の実力派パーティ、貴族階級出身者だけで構成し最上位職業の戦技や魔法も余すところなく使えて…金にも困らなかった。名を上げて自分が家を継いで…いや、より爵位の高い家から声がかかって…。
混乱した頭はその落ちぶれ始めたきっかけを思い出せない。そうこうしてる間にまた客がやって来た。多めに金を払い棍棒を手に取った。プルチンがこっぴどくやられて意識を失うまでそう時間を必要とはしなかった。
いかがでしたでしょうか?
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次回予告。
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次回から新章です