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第124話 落とし前12億(ざまあ回)


「あ〜あ〜、汚えなあ…」


「「「ヒ…、ヒィ…」」」


 冒険者ギルドの一角、俺がクロスボウを向けた先ではウナ達が恐怖に顔を引きつらせ声を詰まらせている。


「お前ら何歳(いくつ)になった?その年齢(トシ)でお漏らしとか…、随分と恥ずかしいなあ…」


 俺は嫌味ったらしく言ってやった。


「このクロスボウは短く小型の矢を一度に十発発射する。だが、一回の射撃で全て撃ち尽くしてしまうのが弱点でな、第二射が出来ねえんだ。つまり今のは空撃(からう)ち、何ビビってんだ最上位職冒険者サンよ?」


 がちゃん!!


 クロスボウの弦を引き…、


 ザンッ!!


 俺は再び引き金を引いてやった、矢は放たれない。


 俺は三人に向けたクロスボウを引きながらアンフルーに目配せすると魔法により自室にクロスボウは転送された。


 ウナ達は言葉もなくそれを見つめていた。


「こういう事だ、理解出来たなら黙ってろ。さあ、戦後処理(あとかたづけ)といこうか」


「あとかたづけ?キノク、何するのニャ?」


 リーンが問いかけてくる。


「コイツらに生きるチャンスをやろうと思ってな」


「…チャンス?」


 アンフルーが小首を傾げた。


「ああ、別にコイツらが縛り首になっても一文(いちもん)の…じゃなかった1ゼニーの得にもならん」


 俺はギルド内に転がっている連中に声をかける。


「おいお前ら、助かりたいか?縛り首になりたくないなら俺の言う事を聞け」



 俺の提案したのは示談(じだん)である。俺が納得する金額を支払えば盗賊行為については無かった事にしてやるというもの。


 今回俺から奪おうとした12億ゼニー、この同額を名目は賠償金でも慰謝料とでも言い方は何でも良いから支払えば商人(オレ)に対する襲撃については示談が成立したと見なし訴えないと言うもの。そうなれはコイツらは少なくとも盗賊扱いは無くなり縛り首ということは無くなるんじゃないかと打診したところやはり死にたくないのだろう、話を聞き始めた。


 その賠償だが、対象を3つのグループとした。一つ目は当然ながら最初に襲撃してきたプルチン達のパーティ高貴なる血統の四人である。


 次にプルチン達を返り討ちにした後に襲いかかってきた冒険者達である、プルチン達とは別タイミングで襲ってきたのでプルチン達とは別の盗賊団扱いである。


 最後の三つ目は冒険者ギルドに対してだ。プルチン達の時も、また他の冒険者達の時も受付嬢のパミチョを初めとして誰も止めようともせずむしろ分け前をねだっていた。それゆえ冒険者ギルドもまた犯罪組織であると断じたところスフィアが同意をした。なんと言ってもこれが大きい、これだけで衛兵の連中はいわゆる忖度(そんたく)をするような状態となり、プルチンを初めとするこの連中の有罪が確定したような形になる。


 この頃には大きな騒ぎにもなっていてようやく建物の奥からパミチョの父親でもあるギルドマスターが現れた。すぐさま衛兵や神殿騎士に囲まれたがコイツは腕一本で成り上がった冒険者。衛兵や神殿騎士に対して大人しく捕まらず押し問答になっていたが不意をついたアンフルーの魔法の(ツタ)が縛り上げ捕縛した。


「は〜い、冒険者ギルドの有罪確定。ギルドマスターからして大人しく衛兵さん達の調べに協力しないんだ、組織ぐるみの犯行の何よりの証拠だな」


 何もそんな事はないのだが調べる側が有罪(クロ)だと言えばそれで決まりの世の中、パミチョの親父もまた死刑囚候補の仲間入りだ。 


「さて、そろそろ腹を決めてもらおうか。死ぬの?死なないの?」


 こうなると後の話は早い、有象無象の冒険者達と冒険者ギルド側はあっさりと12億の賠償に応じた。問題は支払い能力があるかではあるが…。


 まず俺は冒険者達の私財を没収する事にした。賠償額は一人アタマ約2400万ゼニー、現金や装備以外の金目の物を持っていた奴はその分を減額とする。それなりに蓄えてた奴もいたがそれでも2千万ゼニー以上の借金が残っている。冒険者は天涯孤独な者も多いので回収のアテが無い。さて、ここからどう取り立てていくか…、俺は悩ませる。


「なんや、オモロい事してまんなあ」


「アンタ…、シェドバーン商会の…、どうしてこんなところに?」


 そこに現れたのは3億のダイヤを落札した大商人。


「あんさんやがな!ワイはこの街であんさんが何かしとったらすぐに耳に入るようにしてるんや!」


「俺を?」


「そうやがな!あんさんからは儲けのニオイがする!せやから何かあったらすぐ飛んで行けるようにしとるんや!」


 シェドバーンが笑顔で応じる。


「敵わないな…。だが、ここに儲かりそうなモンはないぞ。俺だってどうやって金を回収するか考えてんだから。何しろコイツらにはもう金目の物は無いし頼れる身内がいない者も少なくない」


「ほならワイが肩代わりしまひょ!」


 シェドバーンが胸をドンと叩いて俺に言った。


「何?大丈夫なのか?少なくとも一人2千万ゼニー以上の支払いがあるんだぞ?」


「大丈夫でんがな。ワイには稼ぐ算段が出来とるんや。…ただし!」


 ビシッとシェドバーンは人差し指を立てた。


「あんさんの力が必要や!ワイの欲しいモンが都合つくなら金出させてもらいまひょ。ただし、この冒険者達をこっちに渡してもらうんが条件や!あと、ワイの欲しいモンが都合つかなかったらこの話は御破算(ゴワサン)や」


 ううむ…、何する気だ?


「分かった、その条件飲もう」


「ヨッシャ!ほなら早速話しまひょか。ワイが欲しいんは…」


 シェドバーンは俺に話を持ちかけた。



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