第100話 世界樹の根
作者より、読者のみなさんに質問です。
本作に現時点で登場している女性キャラ達。
アナタのイチオシは誰でしょうか?
①小さな体に大きなパワー。猫獣人族のリーン。
(イメージ的には身長155センチ、ショートカット。髪色としては三毛猫。戦闘スタイルは武闘家タイプ、打撃も投げ技も出来る。一応、大ぶりなククリナイフを腰の後ろに差し服装は動きやすそうな物を好む。ショートパンツにサスペンダー、半袖の上着を身につけています)
②卓越した魔法の使い手、エルフのアンフルー。
(イメージ的には黙っていると超美人、口を開くと抑揚のない話し方をする。ちょっとした事で性欲スイッチが入り、キノクの事を性的な目で見つめる。なお、その際はヨダレを垂らすこともしばしば。戦闘スタイルは魔法を用いた後方遠距離型。攻撃、支援とスキはないが回復系の魔法は使えない。服装はグリーン系統の色合いをした半袖ミニスカート。長い金髪の持ち主で大変な美貌を誇りますが、エルフの特性として華奢であり胸部装甲はほとんどありません)
③神オルディリンに捧げた槍、公爵家令嬢にしてヴァルキュリエのスフィア。
(イメージ的には黒髪を一つに束ねた凛とした美女。身長165センチ、銀と青を基調とした鎧と180センチ程の槍を身に着けて戦う。リーンが豊富な運動量を身上に戦うタイプなら、スフィアは磨き抜いた技で立ち回るタイプ。お嬢様育ちの影響で自分から異性にアプローチしていくのは恥ずべき事という考えの持ち主であるが、やっている事は裏腹で自分からキノクを引き込みにいくタイプ。『いけませんわ』が口癖だが、むしろ自分から布団に倒れ込みにいく。スタイルは良い)
④木工職人ケイウン・ブッシの孫娘、アリッサ。
(イメージ的には小さな女の子。甘いお菓子が大好き。キノクをお兄ちゃんと慕う)
この四人なら誰がメインヒロイン的な立ち位置に一番近いでしょうか?ぜひとも教えて下さい。
新キャラも出していく予定です。
丸一日の休養を経て俺達は旅を再開した。目指すはスフィアの故郷、ゴルヴィエル公爵領。帝国の外からはゴルヴィエル公国と呼ばれる土地である。
街道を歩くがその到着までの道のりはとてつもなく長い。その長さおよそ300キロメートル。一日25キロを歩いたとして12日かかるのだ。しかも舗装のされていない道…。曲がりくねったり、上り下りありと平坦で真っ直ぐな現代日本の道からはほど遠い。
「こりゃ、旅というのは命がけなんだな…」
つくづく俺はそう思った。さらにモンスターと鉢合わせする危険もある。水の確保、食料などの物資の管理、危険への対応…、一人旅ならなおさら大変。全部自分でやらなきゃいけない…。
「スフィアは馬車で移動してたけど、歩きとなると時間がかかりそうだな」
俺はそんな呟きを洩らす。電車や車に慣れた現代人の俺にとってそれなりの距離の距離を徒歩でするのは通学くらいしか経験がない。天候などにもよるがゴルヴィエル領までの移動は半月くらいかかりそうだ。
「大丈夫、問題ない」
それに応じた抑揚のない声、エルフのアンフルーである。
「ん?どういう意味だ?」
「ゴルヴィエル領の公都なら明日の昼過ぎには着く」
「えっ?300キロは離れているんだぞ?そりゃ無理だろ」
「分かったニャ!アンフルーは世界樹を使った移動を考えているのニャ!」
「えっ、世界樹!?でも…、いくら凄いっつっても木だろ?どうやって移動を…」
「世界樹に魔法で働きかけて…」
木に魔法…、そして移動?出来るのかそんな事?
「大丈夫なのか…、それ…」
「大丈夫。…キリッ」
おい…、キリッって口に出して言う奴初めて見たぞ。しかしそれをやっているのはエルフの美女アンフルー、妙にキマっている。そうしているうちにアンフルーは森の奥を指差した。
「ん…、こっち」
そう言うと彼女は街道を外れ森の中に入り始めた。
「ん?ここから森の中に入るのか?」
「そう」
「…街道から離れてくな。見通しも悪くなってきたし…」
「ここは樹木の力が強い。だから成長も早いし繁殖力もある、例えばあの茂み…」
そう言うとアンフルーは少し離れた所にある木の茂みを指差した。
「ん、あの茂みに何かあるのか?」
俺はアンフルーが指差した場所を見た。高さはそれほどでもないが横に大きく広がる茂みだ。
「あの茂み…、丁度こちらからは向こうを見通す事は出来ない」
「ああ、そうだな」
「だから隠れて何かするにはお誂え向き。さあ、キノク」
「なんだ?」
アンフルーが真面目な顔で俺を見つめてくる。
「あの茂みで子作り…。じゅるり…」
「何考えてんだ!?旅の途中で!」
「仕方ない、ここは世界樹の根が出ている地域。あらゆる命が生まれ育まれる祝福に満ちた地。子作りするのにこれほど適した…」
「えっ、今なんて言った!?」
「あの茂みの向こうで子作り…」
「それじゃない!この地域は…」
「世界樹の根が地表に出ている場所」
「世界樹…」
ゲームによく出てくる単語だ…、この世界にはあるんだな。
「そこに向かってたら丁度良い茂みを見つけた。これは良い機会」
そう言うとアンフルーは短く魔法を唱えた。次の瞬間、アンフルーの手には二つの枕が現れた。魔法で部屋から枕を取り寄せたのか…。
「ず、ずるいですわ!アンフルーさん!!わたくしも」
「ボクもニャー!!」
スフィアとリーンがアンフルーに迫る。
「ん、はい」
二人の手にそれぞれ枕が現れる。
「お前ら、スフィアの故郷に向かってる事を忘れるなよ。それとアンフルー、なんで世界樹の根っこに向かってるんだ?」
「世界樹の根は…」
アンフルーはしゃがみ込み落ちていた木の棒で地面に絵を描き始めた。横に長い一本線を引き、そこに大きな一本の木を描いた。その姿はテレビのとあるCMソングでも有名なあの木を連想させる。
「ほうほう…、これが世界樹か…」
「ん。そして世界樹とはもっとも古く、もっとも大きな木。それにしたがって当然根は深く、そして広く根は広がる。それは国をまたぐほどに…」
「国をまたぐ?そんな巨大なのか、世界樹ってのは…」
「ん、世界樹のてっぺんは雲よりも高い所にまで及ぶ」
アンフルーは地面に描いた世界樹の絵に雲の絵を足した。そして根の絵を描いていく、地中深く…そして横にも根は伸びる。その横に伸びた根が離れた所の地表から顔を出した。
「こんな風に世界樹の根は世界のあちこちで地表からその姿を現す。その一つがこの森の奥に…、別の一つがゴルヴィエル領にもあったと記憶している」
「それだけデカいなら根が広く張るのも分かるけどさ、その根っこに行ってどうするんだ?旅路のちょっとした寄り道か?」
絵を描き終わったアンフルーが立ち上がった。
「ん…、寄り道と言えば寄り道。でも、スフィアの国に行くならこうした方が良い」
「どういう事だ?」
「世界樹はこの世のいたる所に根を張っている。私はそれを利用しようと考えている」
「ねえねえアンフルー、世界樹をどう利用するのニャ?」
枕を抱きしめながらリーンが尋ねた。
「世界樹の各地に顔を出した根の部分、そこに魔法で転移する」
「そ、そんな事が出来ますの?」
スフィアが驚きの声を上げた。
「出来る。私はエルフ、森に住みその恩恵を食む種族」
そんなやりとりをしながらしばらく歩くと開けた場所に出た。そこには周りの木々とは明らかに雰囲気の違う大木があった。日の光が優しく入り込み、その葉の一枚一枚が若葉のような黄緑色をしている。生命力に満ちあふれた、ただそこにいるだけで体に活力が湧いてくるようにさえ感じる。
「これが世界樹の根。地表から顔を出すと他の木々と同じように葉をつける」
アンフルーが世界樹に向かいながら呟く。俺達はその後に続いた。
「これが…、世界樹の根なんですのね…」
「リーン、爪研ぎしちゃ駄目だぞ」
「わ、分かってたのニャ!」
あ、言わなかったらやる気だったな。
「では、転移する。えい」
アンフルーが短く魔法の言葉を呟いた。
「お、おい!?初めて見たんだからもう少し…」
見物させろと言いたかったがアンフルーの魔法は既に完成していた。すぐに目の前が真っ白になる、あまりの眩しさに目を開けている事が出来ず俺は固く目を閉じた。
そして何もかもから解き放たれて体が飛散していくような感覚。まるで俺の体はふわりと舞ったチリのようになり、それが掃除機に吸い込まれるかのような感触だけが残った。
いかがでしたでしょうか?
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