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第95話 倒せない!?強すぎるゴブリンエンペラー


「おどご(男)は殺す、おなご(女)はオラのセガレを産ませてやるだァァ〜!!」


 巨大な金棒を振りかざしゴブリンエンペラーは襲いかかってきた!!


魚鱗(ぎょりん)の陣ッ!!リーンを先頭(ワントップ)、回避重視で!!その左後方にスフィアが二列目、俺はやや右後方の同列。三列目にアンフルー!互いに助け合いエンペラーを倒すぞ!」


 俺は縦長の菱形(ひしがた)をした陣形を組んだ、鶴翼と並び有名な魚鱗の陣である。大勝か大敗になりやすい鶴翼の陣と比べ、こちらは地味だがちょっとした運不運で勝敗が入れ替わる事が起こりにくい言わば順当な結果になりやすい陣形だ。


 日本の戦国時代、徳川家康と武田信玄が激突した三方ヶ原の戦い…この時に西へと進む武田軍の背後から追撃を狙った徳川家康は鶴翼の陣を、対して家康の追撃を予想していた武田信玄は軍勢を反転させ魚鱗の陣で迎え撃つ。結果は兵力に勝り背後からの追撃を読んでいた信玄の勝ち。


 たとえ一つ二つの(そなえ)が撃破されても後に続く備が迎撃するような陣であった。反対に家康の鶴翼は大きく左右に展開した分、横には強いが縦方向に突破されると替えが効かない。一つの備が破られると、後は薄絹を短刀で切り裂くが如く。徳川軍は分断され総崩れとなったのである。


 その事を思い出し俺は魚鱗の陣を敷いた。レベル100の強敵、明らかな格上を相手に俺達は連携を密にしないと相手にもならない…そう考えたからだ。


 そして俺が最初に仕掛けた。クロスボウの三連射!!ゴブリンエンペラーはかわそうともしない、胸元に三本の矢が命中する。そこにリーンが接近、どうやらゴブリンエンペラーはリーンを相手取るつもりのようだ。


 ぶうんっ!!


 ゴブリンエンペラーが金棒を大きく横薙ぎに払う、しかし既にリーンはいない。大きく横に迂回し回り込んでいる。そこに続いたのがスフィア、こちらはエンペラーではなく生き残っていたゴブリンを突き伏せたまま槍で持ち上げゴブリンエンペラーに投げつける。ゴブリンはエンペラーにぶつかるが打撃を与えてはいない。しかし狙いは別にある、その投げつけたゴブリンの体に隠れるようにしてスフィアがエンペラーに接近。槍で突きかかるがほとんど刺さらない。


 刺された事によりエンペラーの意識がスフィアに向いた。そこをリーンが不意打ち気味の飛び蹴りにいく、しかしこれも大したダメージにならない。接近したリーンを援護すべく俺は再び射撃を行う、しかしまったく効いていない。


「離れて」


 アンフルーが声を発した。


 その声に応じて俺達はエンペラーから距離を取る。


「切り裂く刃よ、嵐となりて我が敵を倒せ。ブレイドストーム(刃の嵐)!!」


 アンフルーの魔法が完成した。



 アンフルーの魔法により無数の風の刃がエンペラーを襲う。カマイタチと呼ばれる真空の刃を大量発生させ敵をズダズダにする高度な攻撃魔法である。


「おおっ、やったか!?」


 俺は痛恨のミスを犯した。こういう時に言ってはいけないセリフのナンバーワンを口にしてしまっらた。


「ゴォルグアアッ!!」


 ゴブリンエンペラーが怒りの咆哮を上げた。


「あ、あまり効いてないようですわッ!!」


 スフィアが驚愕の声を上げた。ブレイドストームの魔法が収まり姿を現したゴブリンエンペラーは多少の…カミソリで(ひげ)を剃る時に間違えて手が滑りほっぺたを切ってしまったぐらいの傷が体のあちこちにある…そのくらいのダメージだった。


「し、信じられないニャ!矢でも槍でもボクのキックも…、アンフルーの魔法も大して効かないニャんて…」


「これがレベル100…、レベル100の強さなのか…。あ、圧倒的じゃないか…。い、いや風属性に強い耐性があるのか?アンフルー、違う属性の魔法を!」


「ライトニング(稲妻)!!」


 アンフルーはその手を前に突き出し白く輝く稲妻を放った。槍のようにゴブリンエンペラーを貫通する…かと思われたのだが…。


「だ、駄目ニャ!効いていないニャ!」

「攻撃魔法が…通じない?」


 アンフルーが放ったライトニングの魔法はゴブリンエンペラーを貫かず体表に当たって消えた。まったく効かなかった訳ではなさそうだが有効打とならなかったのは間違いない。


「無駄だべぇ!さァ、オラの子を(はら)むと良いだァァ!」


 今度はこちらの番とばかりにゴブリンエンペラーが迫る。金棒でリーンに殴りかかる。リーンはまだ回避しない、エンペラーに対して構えてはいるが…、早く避けないと…。


「リーン!」


「大丈夫ニャ。紙一重でかわしてカウンターをするニャ」


「な、なるほど!カウンターは敵の攻撃してくる勢いを利用してダメージを与える技、こちらが攻撃力不足でも敵の攻撃力に上乗せしてダメージを与えられますわ」


「おおっ!!それなら…」


 ぶうんっ!!!


 リーンが金棒の軌道を見切りギリギリでかわしつつ反撃に…。


「ふニャアアアアッ!!?」


「リッ、リーンッ!!」


 なんと金棒に触れてもいないのにリーンが吹っ飛ばされ地面を転がった。


「リーンさんっ!?」


 ゴブリンエンペラーにリーンを追撃させないようスフィアが攻撃をかける。側面から膝の後ろを突いた。


「ほ、ほとんど刺さらない。か、かすり傷…」


「なんだべぇ?蚊でも刺したんだべか?」


「わ、わたくしは渾身の力で刺しましたわ!筋肉もつかない体の部分ですのに…」


「なら、今度はこちらの番だべえ!」


「くっ!?」


 スフィアはゴブリンエンペラーとは正面からやりあわないように側面へと回る。しかし、スフィアを逃さんとゴブリンエンペラーは金棒を大きく横に薙ぐ。


「きゃああああっ!!」


 幸運にも金棒はスフィアに当たらなかったはずだがスフィアもまた吹っ飛ばされた。


「まずいっ!ビブラート(振動)!!」


 俺は吟遊詩人のスキルを発動させた。吟遊詩人には直接戦闘に向くスキルは無い、その中でもビブラートは発する声に振動をまとわせる。俺はビブラートを狙撃するように構えたクロスボウに発しながら引き金を引いた。発射された矢がゴブリンエンペラーの頬のあたりに当たる、…が刺さらない。


「なンだべぇ?耳障りな音だべぇ」


 ゴブリンエンペラーは頬のあたりを手でさすっている。スフィアへの追撃の手が止まった。


「アイツの金棒、ヤバいニャ」


 吹っ飛ばされたリーンが戻ってきて呟いた。


「馬鹿力すぎるのニャ。だからアイツの金棒に当たらなくても振った時に金棒の周りに風みたいなのが生まれて近くにいたら吹っ飛ばされてしまうのニャ」


「扇であおぐようなものか?」


「そうニャ」


「わたくしも同じ感想ですわ」


「スフィア!無事だったか」


「はい。しかし、カウンターを使えなくなりましたわ」


「ニャ。カウンターは敵の攻撃を紙一重でかわして反撃し自分の攻撃力に相手の攻撃力を上乗せしてダメージを与える戦法ニャ。だけど金棒を紙一重でかわしたんじゃ吹き飛ばされてしまうニャ…」


「そんな…。せっかくのゴブリンエンペラーを倒せる糸口を見つけましたのに…」


「いえ。それでも皇帝(エンペラー)は倒せない」


「アンフルー?」


「どういう事ですの?」


単眼鏡(モノクル)を使って敵を詳細に調べた。今の我々に勝てる作戦が思いつかない…」


「ふニャっ?」


「アイツの所持しているスキル…。生命力防御全耐性(ライフガード)…、あれはどんな攻撃でも最小限の…それこそかすり傷がやっとのダメージになってしまう…」


「なんだって!?」


 俺は思わず叫んでいた。

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