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第91話 新スキル!!鶴翼の陣


 リーンはなんというか…、七つ集めるとどんな願いでも叶うようなお話に出てくる主人公の少年時代をイメージしています。


鶴翼(かくよく)!!」


 俺は新たに得たスキルを発動させた。


 鶴が大きく翼を広げた形に例えられる鶴翼の陣、今回はリーンとスフィアを対象とした。俺達の正面にはアンフルーが魔法を使って空堀があり、無思慮に茂みから飛び出してくるゴブリンが次々と落ちていく。それを運良く避け横から回り込もうとするゴブリンを空堀の左右に分かれリーンとスフィアが迎撃する。


 リーンは素早い動きと豊富な運動量で敵を圧倒する。そのスピードとスタミナは驚異的だ、まさに格闘マンガの主人公のような活躍だ。


 反対にスフィアの動きは最小限。自らは仕掛けず彫像のように動かない、それでいて近づいてくるゴブリンを槍のリーチを生かし急所を狙い澄ました一撃で(ほふ)っていく。その速さは稲妻のようだ。


「これは良いニャ、軽く撫でるような感覚でゴブリンが倒れていくニャ!」

「ええ、わたくしも槍に手を添えているだけの感覚ですわ。これなら長期戦に備えてのスタミナ配分も楽ですわ」


「どうやら鶴翼の陣による効果は如実に現れているようだなっと!」


 俺は単発で矢を撃ち出すクロスボウに持ち替え引き金を引いた。前方の二人を大きく迂回しようとするゴブリンの頭を矢が貫通した。


「準備出来た、下がって」


 アンフルーの声が聞こえた。


「二人とも、魔法いくぞ!下がれ」


 俺の声に応じてリーン達が下がった。


「出でよ亡者を滅す煉獄の炎、我が創りし(ひつぎ)を焼け!ヘルフレイム・コフィン(獄炎の(ひつぎ))!!」


 真面目なかつ凛としたアンフルーの声が響いた。



「す、凄い…」


 空堀に落ちたゴブリンが短い悲鳴を上げ炎に包まれていく。おそらく長く悲鳴を上げる間も無く息絶えたのだろう。


「まだ来るニャ!気を抜いちゃ駄目ニャ!」


 ハッとして戦場に意識を戻せばさらなるゴブリンが後から後から湧いてくる。


「これは妙…。私は脅しの意味も込めて派手な魔法にした。それを目にしてもまだ来るとは…。臆病なゴブリンなら逃げ出していてもおかしくない」


 そう呟くアンフルーに俺は蜂蜜とレモンの味付けをしてある魔力回復用のポーションを手渡した。長期戦の可能性もある、アンフルーの魔力が枯渇するのは避けたい。


「軍隊においても勇将の(もと)弱卒(じゃくそつ)無しと言いますわ。きっとゴブリンにも指揮を()る強い個体がいるのでしょう」


 スフィアがゴブリンとの白兵戦を再開しながら言った。


「ホブゴブリン、来るニャ!」


 有象無象のゴブリンの後詰(ごづ)めといった感じか、数匹のゴブリンを周りに従えて大柄な個体がやってくる。そいつに向かってリーンが石を投げた。


 ごつん。


「ゴガァァァー!!」


 石をぶつけられ怒ったホブゴブリンが周りのゴブリンを押しのけて猛ダッシュでリーンに迫った。


「リーン!!」


「ふニャァァァァァァッ!!!!」


 一声叫んでリーンはグッと地面を踏み締めて力を溜めて駆け出した。その勢いでホブゴブリンに飛びかかる。


 ぶんっ!!


 右足一閃、ホブゴブリンの顔面を横薙ぎにしたリーンの蹴りが捉えた。ホブゴブリンは吹っ飛び周りのゴブリンを巻き込みながら獄炎の空堀に落ちていく。


「体が軽い、力が湧いてきますわ!これならっ!」


 スフィアの方にも大振りな棍棒を持つホブゴブリンが迫る。


「体調の回復、キノクさまのお水、今のわたくしの実力の試金石にさせていただきますわよ」


 くるんっ!


 スフィアは槍を持ち替える。なんと刃先ではなく石突きの部分をホブゴブリンに向けた。石突きには刃が付いてはいない。


「スフィアッ!」


「ふっ!!」


 スフィアは一瞬で肉薄すると二回突きを放った。鈍い何かが砕ける音がするとホブゴブリンはバランスを崩し前につんのめり突進してきた勢いのまま前倒しになる。


 ひらり。


 スフィアは身を翻して倒れこんでくるホブゴブリンをかわした。たちまち地面に投げ出されるホブゴブリン、立ち上がろうともがくが膝から下がおかしな方向に曲がっている。


「あの石突きでの突きで膝の皿を砕いたのか!?」


「せめて痛み無く逝かせて差し上げますわ」


 くるんっ!


 スフィアが再び槍を持ち替えた。今度は刃先を眼下に倒れるホブゴブリンに向けた。


 ぷすっ!


 スフィアが槍で首の後ろを一突きするとホブゴブリンはパタリと倒れる。


「じゃあ、次は俺か…」


 俺は薄暗い森の中、遠くに見える二体のホブゴブリンを確認すると二度クロスボウの引き金を引いた。頭に矢を受け遠目に見えるホブゴブリンが倒れ始めた。


「よし、命中だ…なにっ!!?」


 なんとゆっくりと倒れ始めたホブゴブリンの動きが止まったのだった。


「馬鹿な!頭部直撃(ヘッドショット)だぞ!?どうして倒れない!」


 俺は思わず叫んでいた。



 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 モチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 なぜ倒れない?


 頭を撃ち抜いたはずのホブゴブリンを見てキノクは戸惑う。


 そこには新たに現れた強大な敵、ゴブリンジェネラルの存在が…。


 敵はまだ数が多く残り、何が起こるか不透明。


 いつまで続くか分からない戦闘で力を使い果たす事は死を意味する。


 そこで大きな魔法を使ったばかりのアンフルーを休ませる事にした。


 しかし、相手は魔法はともかく武勇に長けた個体であるゴブリンジェネラル。


 リーンもスフィアもキノクにしても物理攻撃の為に苦戦は必死。


 その劣勢を覆す為にキノクは新たな陣形を試す事にする。


 次回、第92話。


 長蛇(ちょうだ)の陣と三連の輝き。


 キノクは生き延びる事が出来るか…?

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