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第85話 意気揚々の古巣パーティ


 午後二時半を軽く回ったくらいの時間…、日没までは三時間余りの時間がある。俺とリーンとアンフルーはスフィアのゴルヴィエル領への移動に同行している。


 そのゴルヴィエル領への移動に際して古巣の連中は意気揚々(いきようよう)とスフィアを先導する。…いや、意気揚々というか…調子に乗っていると言った方が正確か。明らかに(うわ)ついている、はしゃぎ過ぎといった感じだ。


「ささ、スフィア様!このまま大船に乗ったつもりでいて下さいよッ。なんたってこちらはねえ、最上位職業だけで結成されたパーティ!他の有象無象とは訳が違うンですよ」


(しか)り。万難を排してお守りする所存(しょぞん)


「それにぃ、生まれも貴族階級ですからぁ夜営と言えども優雅に過ごしてもらえると思うんですけどぉ」


「有り得ない話ですが、万一の際には(わたくし)が治療に当たりますわ」


 四人はスフィアを囲み、何やら色々とまくしたてている。


「それに俺達は報酬なンかよりスフィア様をお守り出来る光栄な役目が巡って来た事が嬉しいンですよ!なんなら金なンていりません、名誉…そうですッ!!スフィア様をお守り出来る名誉を得たいと馳せ参じたンですッ!」


 俺はそんな事を言っているプルチンの後ろ姿を眺めていた。丁度街の西門を出て外に出るタイミングだった。相変わらず古巣の四人はスフィアをちやほやしていたが、街を少し離れた所でプルチンはこちらを見ながら話を切り出した。


「ああ、それからなンですけどね。俺達は完璧(かンぺき)な準備をしてきたンで、後ろのどこの馬の骨とも分からねえようなヤツなンか不要だと思うンですよ。とくにあの男は(なン)の役にも立たない無能。見りゃあロクに荷物も持っちゃいない、置いてっちまった方が良いンじゃねえですかい?」


 こちらを嘲笑うような感じでプルチンが言った。他の三人も似たような態度だ。


「プルチン…さん、でよろしかったかしら?」


 冷えたようなスフィアの声。


「はっ、はい。光栄です、スフィア様に俺の名を呼ンでもらえるなンて…」

「口を慎んでいただけるかしら」


 プルチンに最後まで話させはしないとばかりにスフィアが声をかぶせた。


「なっ!?」


「キノクさまはわたくしの命の恩人、迫るモンスターの危険から…そして病からも救っていただきました。その方を侮辱するような言動、到底看過できるものではありませんわ」


「お、恩人(おンじン)?ま、まさか!ご冗談を…、コ…コイツは役立たずで…」

「そ、そーですよ!」

「うむ!」

「間違いありませんわ!」


「あなた達…、今すぐここから回れ右をして下さるかしら?今なら皇都の西門からそう離れてなくってよ」


 スフィアがこちらにやってくる、そして俺の左腕をとった。


「わたくし、エスコート(女性に付き添いをする男性)はキノクさま以外に頼むつもりはありませんのよ。そのあたりを十分考慮した上で…、ご発言いただけるかしら?」


「ぐ…」


 プルチンは悔しそうに表情を歪める。


「それと…、キノクさまに正式な謝罪を。仮にも貴族の階級(いえ)の出自ならその作法は分かっておいでですわよね?」


 スフィアの声が鋭さを帯びる。どうやら俺が侮辱された事に対し怒りを覚えているようだ。


「早くしていただけるかしら?わたくし、あくまで高司祭様のお顔を立ててあなた方四人の同行を拒まなかったに過ぎませんのよ。あなた方はそれを理解した上で行動なさる事を期待いたしますわ」

 

「せっ、正式に謝罪しますッ!な、なので同行を…」


「それはわたくしに()う事ではありませんわ。下げるべき方に頭は下げるべきですわ」


 スフィアは冷たくプルチンを突き放した。





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