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第84話 魔石燃料と…レベル50!


 十億ゼニーを荒稼ぎした俺達。その夜は派手に宴会をしようという事にした。レンジで温めて食べるピザにちょい足しレシピという訳ではないがシーチキン、さらにはとろけるチーズを足して加熱してやるとリーンが大喜びするピザの完成だ。


「この味わい、皇城でも体感出来ないですわ」


 スフィアがそんな感想を洩らす。


「そうなのか?もっと美味い物を食ってそうなイメージだが…」


見栄(みば)えは確かに美しいものがありますわ。しかし個々の味付けは確実にこちらが上かと思いますわ」


「ん、ワイン美味しい」


 アンフルーはワインに上機嫌だ。


「ええ、確かに…。この地域では赤いワインしかありませんもの…。こんな澄んだ琥珀色のワインは遠く海を越えて入ってくるものしかありませんわ」


「ん、それに甘くて果実の香りが強く残っている。好み」


「む〜。ボクはお酒飲むとすぐ寝ちゃうからニャ〜」


「リーンさんはお酒に弱いんですのね」


 リーンは酒に弱いらしくワインをひと舐めした程度で食べる方が専門だ。


「まあ楽しくやろう、今夜はお祝いだからな。甘い物もあるぞ」


……………。


………。


…。


「キノクさまぁ〜、わたくし酔わせてどうするつもりですのぉ?」


 完全に酔っ払った顔でスフィアが俺に迫ってくる。


「む、むしろお前が俺をどうするつもりだ!?」


 俺に覆い被さりそうな感じでスフィアがグイグイと迫る。


「もう、キノクさま!分かってるクセに…ほらそうやって自分からオフトゥンに誘い込もうと…」

「お前が追い詰めてるんだろうが!!」


 俺を追い込むスフィア。そんな時アンフルーが真横から俺を覗き込むように現れた。


「キノク…」


「おっ、おう、アンフルー!良い所に来た、助けてくれ」


「…はあはあ」


 妙に赤い顔をしてアンフルーは呼吸を荒くしている。


「…お、おい?はあはあ…ってなんだ?はあはあ…はいつも通りだが、なんかいつもと雰囲気が違うぞ?」


「………」


「ア、アンフルー?」


「欲情…」


「お、お前まで!?」


「これはキノクが悪い。さっきの…、あの…ちょこれーと…甘くて木の実の風味がして…」


「お、おう。確か原料にカカオっていう…」


「妙に体が熱い…、(せい)がついる…、ガマ…ン…出来…ない…」


 アンフルーが自分の衣服の胸元に手をかけた。


「キャストオフ(脱衣)!!」


 一瞬で全裸になるアンフルー、そして俺。


「ま、負けてられませんわ!わたくしもッ!」


 スフィアまでもが服を脱ぎ出した。


「…いただきます」


「い、いただきますじゃねえ!」


「わ、わたくしも!!」


 アンフルーとスフィアが迫る。


「ボクもニャ〜!!」


 いつの間にか全裸になったリーンが飛び込んできた。頭からアンフルーとスフィアにぶつかる。二人は弾き飛ばされて布団の上を転がると動きを止めた。…呼吸はしているみたいなので気を失っただけだろう。


 そしてリーンは俺の体の上に乗るとそのまま寝息を立て始めた。


「スヤァ…」


「…た、助かった…のか?」


 俺はホッとすると共に全裸で寝かせるのも可哀想なのでリーンを体の上に乗せたまま頑張って横に転がっているスフィアとリーンにも掛け布団をかけた。


「リーン、ありがとうな」


 俺は本物の猫が甘えてくるとこんな感じなのかなと思いながら(やす)む事にした。



 翌朝…。


「正直、スマンかった」


「わ、わたくしが酔ってそんな事を…」


 アンフルーは土下座、スフィアは茫然自失。二人とも全裸である。リーンはひとり幸せそうな顔で眠っている。


「スヤァ…」


「まあ、過ぎた事はしょうがない。一応実害は無かったから良いが…。とりあえず服を着ろ」


 俺は仁王立ちをして言った、ちなみにすでに服は着ている。


「とりあえずゆっくりしよう。結局、寝るに寝れなかったし…」


 一つの布団の中に全裸女子が三人もいて眠れという方が無理がある。そんな訳で布団で横になっているとアンフルーとスフィアも布団に入りたそうにしていたので全裸でなければ良いと言うと入ってきた。


 リーンは昨夜からずっと寝ているので全裸のままだったが起こすのは可哀想なのでそのままにしておいた。



 昼前に起き出し俺はパソコンの電源を入れ昨日の売り上げを現金化をする事にした。その代金は旅人用宝石(トラベラーズストーン)で支払われたのだが、よくよく聞くと旅人用宝石などと言ってはいるが実際には宝石ではないらしい。なんとその正体は魔石の中にある核が巨大化したものだという。


 魔物は魔素を体に取り込みながら成長する。その魔素が体内に取り込まれそれがだんだんと物質化して魔石になるのだが、その際に核を包み込むように石質化していくらしい。俺は以前その事をアンフルーから聞いていた。俺はその時の事を思い出した。


……………。


………。


…。


「アンフルーはよく知ってるなあ…」


「この原理を応用して作った魔法があるから」


「へえ…、どんな?」


「即死魔法」


「急に物騒な話だな」


 アンフルーによると魔物は必ず体内に魔石を持つ。逆に魔石を持たないと魔物としての機能を果たせなくなる。言わば心臓のような物。


「だからその魔石の核となる部分を排出させてやると体内で魔石を構成出来なくなる。結果として魔物は生命維持が出来なくなるって…」


「なるほど。魔石やその核を抜き取るというのは人で言えば心臓を抜き取るような事で、それをやられると魔物は死んでしまうんだな。本来は魔石から核を排出させる為の魔法だったんだな」


「そう。旅人用宝石を魔石から取り出す為に。最初は魔石を抜きたかったんだけど…」


「魔石を?」


「ん、魔石を取るには魔物の体を解体しなければならない。そうなると返り血やら何やら浴びてしまうから」


 魔石が購入されるのは魔導具などを動かす為の燃料になるからだ。地球で考えればバッテリーに該当する感じか…、思うにこの異世界では魔法があるから科学技術があまり必要とされなかったのではないだろうか。


 地球では技術の発展により様々な機械が生まれた、対してこの世界では魔法があるから機械ではなく魔導具が生まれた。機械は電力を動力源とし、魔導具は魔力を動力源とする。機械化された文明では電力を生む為に石炭や石油などの化石燃料を、対してこの世界では動力源な魔力を魔石に求める。言わば魔石燃料といった感じだ。


「だけど、この魔法には欠点もあって…」


「欠点?なんだ?」


「魔物の核を排出させると魔石はその状態を維持出来なくなって消えてしまう。つまり魔物の体から魔石が無くなり…」


「ああ、稼ぎが減ってしまうんだな」


「そう」


 魔物によっては爪や牙、皮など売り物になる部位があるものも存在する。しかし、ゴブリンとかゾンビでは利用出来る部位がない。魔石が唯一の稼ぎだ。しかし、それが無くなるとなれば冒険者としてはこの魔法は微妙な立ち位置になる。


 もっともこの魔法は本来ならたまたま魔石内にある大きな核を抽出する為のものだったという。それをアンフルーが研究開発したのだと言う。だから魔物にだけ効く即死魔法であるらしい。


「あと弱点も多い。生きている相手から核を抜こうとすると当然相手も抵抗する。だから魔石自体から核を抜くより膨大な魔力を消費する。それと魔物に直接触れなければならない」


「うーむ、後衛のアンフルーが使うのはなるべく避けた方が良い魔法だな」


 アンフルーが頷いた。


……………。


………。


…。


「んじゃ、そろそろ現金化するか。両替!」


 たちまち現れた金貨の山が布団に現れた。



「うわ…、これ雑誌の裏表紙とかにある胡散(うさん)臭い開運グッズの広告みたいだな」


 万札を敷き詰めたベッドに女性を両脇に侍らせ男が得意そうな顔をしている光景が目に浮かぶ。まあ、そんなどうでも良い広告なんかよりまずは自分への投資をするか。


《ぱぱぱぱぱらっぱっぱっぱぁ〜ん!御主人(マスター)はレベルが50に上がった》


 あっ、さすがに10億超え。一気にレベルが上がったな。


筋力(ちから)が20ポイント上がった。敏捷(すばやさ)が29ポイント上がった…》


 おいっ!


《なんでしょう?》


 なんでわざわざ筋力をちから、敏捷をすばやさって言うんだよ。レベルアップの効果音といい某有名RPGを作った事で有名なメーカーから訴えられたらどうするんだ!?


《問題ありません。ここは異世界、地球の法は及びません》


 …ま、まあ良いか。色々と良くない気もするが…。とりあえず能力を買おう。


 まずは副職(サポートジョブ)としてレンジャー(野伏(のぶせ))のジョブを買った。野伏はもう屋外活動の専門家だ。屋外で射撃攻撃をする際に様々なプラスがあるらしい。パラメーターにも1レベルアップ毎に(敏捷+1、器用+1)のボーナス効果がある。俺はクロスボウを使っているし戦闘スタイルの相性が良いと考えこのジョブを買う事にした。


 次に修道士(モンク)。心身の鍛錬をし自己の限界を打ち破るのを身上としているらしい。また、有事の際には素手での格闘をする事もあるという。1レベルアップ毎に(体力+2、生命力+1)のボーナス効果がある。


 さらには吟遊詩人(バード)である。1レベルアップ毎に(器用+1)のボーナス効果。これは戦闘に役立てようと言うのではなく器用さを向上させる為に得たジョブだ。射撃や調合、錬金はなんと言っても器用さが大事だ。


 他にもパラメータを各10ポイントずつ購入した。1ポイント上げるのに一千万円かかった…、値上がりし過ぎだよ。あと変わったスキルがあったので購入する事にした。それは陣形というスキル。本来なら軍隊のような大集団で使うようなスキルだが、このスキルはパーティでも有効らしい。単純に俺の力や魔力が上がるのも良いが、集団での力がより強くなるのも役に立つだろう。


 俺とリーンにアンフルー、今はスフィアが加わっているが彼女は公爵家の人だし神に使えるヴァルキュリエ。小さいとは言え集団である。家なり神殿に戻れば彼女の暮らしがあるだろう。


『汝に天啓を与えん』


 あっ、天の声だ。…っていうかナビシス、そういうの良いから分かりやすく説明してくれ。


《コホン…。今回与えられた天啓は日本円(ジャパンマネー)です》


 え?なんだそれ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >1レベルアップ毎に~ この表記じゃこれから上がる分しかボーナス貰えないんですかね? 一体何ポイント無駄にしたんだろう? 1レベル毎に~ならレベルに応じたボーナスが付きそうだけど
[一言] 陣形というと水龍陣とかインペリアルクロスとかありそうですな。ロマンシングサガ的に考えて。 それにしても、マスコンバットとかのモンスターの軍勢との戦争系要素ありそうですね。
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