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第81話 売り買いの自由。


 俺が帰ろうとしたところを立ち塞がったパミチョ。うーん、こうして全身を見るとやっぱりアレだな…。あんまりお近付きになりたくないタイプだ。


「なんか用か?こっちには無い、どいてもらえる?厚塗り顔面さん」


 普段はカウンターの中にいるからソバカスを隠す為に塗った厚化粧の顔と毒々しい色に塗った爪が目立つ手元くらいしか見えなかった。しかし、今こうして目の前にいて全身が見えるようになると顔と手元だけでも感じていた嫌悪感がさらに目についてくる。


 まったく、なんなんだろうね。その極限まで裾を短くした受付の制服は…。これはアレか?渋谷とかでギャルが派手な格好で歩いているようなものか?裾を短くしたスカートを履いてる感じか。他に引き付られるような魅力がないからとりあえず肌が露出する面積多めで…みたいな。


 それで男の視線が集まり、ああアタシってモテてるとか思うんだろうな。残念、それはただ単に性欲目線でしか見てないから。とりあえず今さえ良ければ、後の事は知らないよ…そんな感じだろうか。高校の時、同じクラスの女子に夏休み終わったら妊娠が判明したけど男が逃げちまってお腹だけが大きくなっていたのがいたっけ。まあ、その後には学校も中退(やめ)たからどうなったのかは知らないけど…。


 そういやコイツ、プルチンに色目使ってるような(フシ)があったな。貴族階級の生まれのプルチンねえ…、第二夫人とか愛人にでもおさまりたいのかな。まあ、妊娠だけさせられた高校の時の同級生と似たような結果になるんだろうな…そんな事を思う。


「だ、誰が厚塗り顔面よっ!」


「お前だよ。ギルド受付パミチョ…、名前合ってるよな?」


 俺がそう言うとパミチョはぐぎぎ…とばかりに歯噛みして表情を歪めた。


「まさかとは思うけどさ…」


 俺は言葉を続けた。


「お返しだよ、まさか自分が悪口言われるのは嫌だとか無いよな。今までずっと散々俺に言ってきたんだから。役立たず、キモい、他にも色々あったよな。俺からすれば質の悪い白粉(おしろい)を顔に塗ってるせいか嫌な匂いするんだよ、お前のいるカウンターに並ぶとさ」


 まあ、どこに並んでも似たようなモンなんだけどな。なんて言うか、満員電車の中でこれでもかというくらいに香水をつけている人みたいな感じだ。しかもそういう人に限って趣味の悪い香水を使っている、どうにかして欲しいもんだ。


 俺がそんな事を考えているとリーンが俺の腕を取った。


「何か言ってるニャんよ」


 そのままリーンは俺の体の前に回り俺の鳩尾(みぞおち)のあたりに頭を(こす)りつけてくる。


「ん?ああ、聞いてなかった」


「ぐぎぎ…。ま、まあ良いわ。それよりなんで売らないのよ、換金機(かんきんき)に魔石とか乗せておいて」


「別にここで売る必要はない、それだけの事だ」


 この換金機、売りたい物を乗せると即座に売却価格を示してくれる。しかし、それはあくまで最低保証価格。それに蜂蜜は…。


「ニャニャ」


 リーンがじゃれついてくる、まるで本当の猫のようだ。そのリーンの頭部、耳の後ろあたりを軽く撫でた。


「売る訳ないよなあ。…蜂蜜食べたいもんな、リーン?」


「ニャ!」


 リーンが即座に応じた。


「よーしよし。じゃあ、今夜は焼いたパンに蜂蜜を塗って食べるか」


「ニャ〜!!お(さかニャ)も!」


「良いぞ、今日は一稼ぎしたからな。遠慮なくやるか」


「…私も」

「わたくしもですわ」


 両脇からアンフルーとスフィアが俺の両脇に並んだ。


「な、何言ってんのよ!は、8億ゼニー超えてるのよ!なんで売らないのよ!?大金でしょ!?」


「ここで売らなきゃならない理由はない。買い手はいくらでもいる、あの最後に出した魔石はゴブリンキングどころかその上のグレートキング(大王の事)もすっとばしてエンペラー(皇帝の事)級のデカさだ。商業ギルドで見せびらかしたら誰もが(よだれ)を垂らすだろうさ」


 それに…、俺はさらにつけ加えていく。


「蜂蜜は今晩の夕食に使う。ウチには三人も甘党がいるんでな。リーンはパンに塗って…アンフルーは果実と共に。スフィアは…紅茶と合わせるのが一番の好みだったよな?」


「ん」

「さすがキノクさまですわ、わたくしの好みを…」

「ニャ!ボクはパンを食べるなら蜂蜜塗るの大好きニャ!でも、ふれんちとーすとも大好きニャし…どっちも甲乙(こうおつ)つけがたいのニャ!」


「なら今夜は蜂蜜を塗って食べるとするか。楽しみだな、パンに塗るだけで1万か2万ゼニーは飛ぶな。それに明日、新鮮な牛乳が手に入る。フレンチトーストは明日にしよう」


「ニャー!ボク、まっしぐらニャ!」


 普段は帯のように腰に巻きついているリーンの尻尾が喜びのせいかピンと立っている。そんなリーンの頭を俺はゆっくり撫で続けた。


「それにな、厚塗り。売らない理由はいくらでもあるんだ」


 俺はパミチョに向き直り言った。


「まず第一に俺は冒険者ギルドに売りたくない」




 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 モチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 キノクは売りたくない理由を述べていく。同時にちょっと意趣返し。


「必死だな、厚塗り。そりゃ必死にもなるよなあ?なんたって…」


 さて、キノクは何を語るのか?


 次回は受付嬢にざまあ回。


 第82話『売らない理由』


 お楽しみに。



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