第1話 キノク、追放!
追放、ざまあモノを書いてみようと思いました。展開早めで書けたらと思います。
「はんっ!?つっかえねえなああああ!!ゴブリンごときに手間取ってよお!」
「ホントよねー。雑魚モンスターさっさと殺っちゃえば良いのに!」
「ふむ、これだから転移者は駄目なのだ。やはり噂は真実であったか。転移者は凄まじく使えるか、あるいはまったく使えない奴かの二つに一つというのは…」
「あ〜、だからこの人使えないんですね。鮮烈なデビューを飾った私達と違って。何回冒険に出てもレベルが上がりませんし」
ここはアイソル帝国の首都アブクソム、その一角にある冒険者ギルドの中である。
もうすぐ夕方になろうかという頃、俺が今日一日活動して得た物を畳一枚分くらいの面積がある自動鑑定コーナーに出している時だった。
これは魔導具の一種で、鑑定士がいなくても自動でその価値を判定してくれるし、その価格に納得すればそのまま引き取ってもらう事も出来る。俺は担いできた戦利品を鑑定機に置き、それをそのまま現金化した時に先程の言葉を浴びせられたのだ。
「おいっ!聞いてンのかよ、テメーだよ、テメー!!底辺役立たずのキノク!」
パーティリーダーの魔法剣士プルチンが口汚く罵ってくる。コイツは貴族の家に生まれ剣も魔法も使えるという珍しい職という事もあり、平民や一度見下した相手には特に傍若無人な振る舞いをする。
「役立たずって!?俺はこれだけの荷物を持ってきたんだ、満足に動ける訳がない!それに俺の名前はキノクニだ!」
「どーだって良いわよ、役立たずの名前なんて。そもそもいくらモンスターを倒しても全然レベルが上がらないんだし、切るならちょうど良い潮時なんじゃない?」
そう辛辣な言葉を吐いたのは大魔道士のウナ。大魔道士というのは攻撃魔法に特化した職業で、中でも高度で派手な魔法を使う。それゆえ敵を一気に殲滅するような戦闘を得意とする。
「いかにも。戦えない足手まといを連れていては拙僧達には何も得る物は無い。まして伸びしろが皆無とあってはな」
筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)、そんなたくましい腕を組みながら古風な言い回しをするのは武道着のような服を着た至高修道僧のハッサム。こいつもプルチンと同じく貴族階級の出身。戦闘の際には前衛を務め、プルチンが敵の真正面に立つ盾役とすれば、こちらは遊撃タイプで鍛え上げられた肉体を用いて敵と戦うスタイル。
しかもただ力任せに戦うのではなく、自らの肉体を凄まじく強化しながらというもの。ウナの攻撃魔法のように敵集団をなぎ払うような派手さは無いが、その戦法は自らの皮膚を硬くして防御力を高めたり筋力を増加させて一撃必殺の攻撃をしたりと一対一の場面に特に強い優秀な物理アタッカーとなる。極限まで鍛えた肉体と精神のスペシャリスト、それが至高修道士である。
「その通りですわ。そもそも私達四人は生まれながらの上級職、こんな虫ケラみたいな存在を視界に入れる必要なんて無いんですよ。出ていってもらったらどうですかぁ?ねっ、プルチン」
最後に虫も殺さないような顔をして悪意しか無い物言いをするのは至聖女司祭のマリアントワ。アイソル帝国の国教アイソル正教会に属している。このアイソル正教の教義はとにかく自分達の教えこそが本当であり、他の宗派を目の敵にする。その思想は人に対しても選民的な思考を呼び、それはこのマリアントワも同様。ちなみにリーダーのプラトンに色目を使っており、コイツは首都生まれ首都育ち。男爵家の出自である。
「そーだな、俺達のパーティ『高貴なる血統』は冒険開始以来ずっと連戦連勝!レベルもランクも上がってンのにこんな役立たずがいたんじゃな。それに一人みすぼらしい格好をした奴がいたんじゃ疑われちまうよなァ!?俺達の品格ってヤツをよォ!」
「そ、それはロクに分け前をくれないから!」
「だ〜ま〜れッ!!戦えねえヤツにくれてやる金なんてねえンだよ!!」
プルチンは俺が持っていた納品した事で得た金を入れた布袋をひったくるように奪った。
「あ〜、もういいやテメー」
「えっ?」
「いらね〜って言ってンだよ。俺様に口ごたえしたからな!罰だ、罰!!クビだ、テメーは!この役立たずが!!」
「あ、当たり前の事を言って何が悪いっていうんだっ!荷物持ちに人を雇えば金が発生するのは当然だろ!」
「うるせえンだよッ」
ブンッ!!
「ぎゃっ!!」
プルチンは俺から奪った硬貨が入った袋を振り回して叩きつけてきた。それが顔面に当たり俺はギルドの床に倒れた。
「嬉しいだろ?そんなに欲しがってる金なら顔面にくれてやったぜ!」
勢いをつけて叩きつけた硬貨の入った袋は布を巻いた鈍器と同じだ。強烈な一撃、脳が揺れてすぐには立ち上がれそうにない。
ゲラゲラと笑い声が上がる、プルチンのものだけではない。パーティの奴らも周りにいた冒険者達もだ。
「ぐっ!な、何をするんだ?ギ、ギルドはこういうのを取り締まらないのかっ?」
倒れた状態で受付の方を見た。そこには受付嬢のパミチョがいた。
「は?そーいうのってー、冒険者同士で解決してよねー。てゆーか、アンタみたいなの助けてなんか私になんかトクあるわけ?役立たず助けてさあ」
派手に厚化粧した顔と毒々しい色に塗った爪が特徴的な女が俺を眺めながらそんな事を言ってきた。
「ねー、プルチン様ぁ?コイツ、マジウザいからギルドから追放いて良い?」
「あー、別に良いぜ。ほれっ!」
俺が首から下げていた冒険者証は殴られた拍子に床に転がっていたのだが、それを拾い上げプルチンは受付に向かって投げた。カウンターに落ちたそれを拾い上げパミチョは万力のような機器に挟んだ。
バギンッ!!
「ああっ…」
死亡した者や引退する者の冒険者証を廃棄する際に使う機器が作動し派手な音を立てて真っ二つになった俺のギルドカード、これでは身分証としての意味を為さなくなる。
「キャハハッ!!『ああっ…』だって!マジ、ウケるんですけど!!あーね、これでアブクソム冒険者から追放だから」
パミチョは手を叩きながら愉快そうに笑っている。
「これで分かったろ!テメーにはパーティにもギルドにも居場所なンかねーんだよ!おいっ、ハッサム!」
「うむ」
そう言うとハッサムは倒れている俺の首根っこを掴み持ち上げた。そのままギルドの扉を開け俺を外に投げ飛ばした。当然、俺は地面に叩きつけられる。
「へっ!どこへでも行ってくたばっちまえ役立たず!!次見た時はぶち殺すからな!」
プルチンの捨て台詞と共にギルドの扉が閉められた。俺はパーティもギルドの所属資格も失い、身一つで異郷の街に投げ出されたのだった。
これから頑張って書いていきます。
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次回予告。
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パーティを、冒険者ギルドを追放されてしまったキノク。
手持ちの金も、また頼れる人もいないキノクは飢え死にの可能性もある。まだ日のあるうちに、何か食べられる物はないかと向かったのは…。
次回、第2話。『森へ…』
お楽しみに。