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第三話 「リルド、時計を壊す。」


(……夢じゃなかったのか。)


寝ているリルドを見ながらそう思った。

いつもなら目覚ましが鳴っても起きないんだけど、今日は先に起きてしまったらしい。


(とりあえずシャワーでも浴びよう。)


リルドを起こさないように、静かに風呂場に向かった。


「しかし、本当に異世界が存在するのかな?まだ信じられない。」

「でも、嘘を言っている感じでもないし。」


そんな独り言を言いつつ、軽くシャワーを済ませた時目覚ましが鳴った。


ージリジリジリジリー


「な、何だこの音は!?」


飛び起きるリルド。


「新手の魔物か!」


すかさず音の出る物体を掴み、叩きつけた。


ーガシャン!ー


凄い音がしたので、慌てて部屋に戻った。


「ど、どうしたの!?」

「ん?新手の魔物が急に変な音を出してきたから、倒しといた。」


ドヤ顔のリルド。

何のことかと思い、リルドが指差す方を見てみた。

すると、長年愛用していた目覚まし時計が無残にもバラバラになっているではないか。


「ちょ、ちょっとリルドさん!?それは魔物ではありませんが?」

「そうなのか?」

「これは、目覚まし時計って言って音で朝起こしてくれる優れものですよ!?」

「貴様、昨日とは口調が違うぞ。」

「いや、そりゃ口調も変わりますって!一応ずっと使ってたお気に入りだったんですから!」

「そ、それは悪いことをした。」

「ま、まぁ知らないことだらけだろうからしょうがないけど。」


リルドは、少し申し訳なさそうな顔をしていた。


(少し言い過ぎたかな?)


片付けながらそう思った。本当に異世界から来ているなら驚いて当然か。

一言謝ろう。


「ごめん、ちょっと言い過ぎー」


ーピピピピピピピー


今度は、スマホが鳴り出した。


「む!また新手の魔物か!?」

「ちがーーーう!これは、僕の携帯だ!って、もうバイトに行く時間!?」


いつの間にか7時になろうとしていた。


「ごめん、リルド!もうバイト……仕事に行く時間で、行かないといけないから、これ、この家の鍵ね。あとは、帰ってきてから色々教えるから、あまりその辺の物には触らないで、なるべく家の中にいてね!」

「ふむ。まぁ任せておけ。」


色々と不安はあるが、遅刻するわけにもいかないので家を出た。


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