第二十一話「エンディング。」
『懲りずにまた来たか、勇者よ。何度来ようと結果は……』
ザックが一歩前に出て、魔王のセリフを遮った。
『魔王!いや……村長!もういいんだ。』
ザックが何やら呪文を唱えた。
すると、魔王の体が激しく光り村長が現れた。
「ど、どうゆう事だ?魔王が、村長!?」
状況が読めず困惑するリルドに呼応するかのように
画面内のリルドの頭上にも、”!?”の吹き出しが出る。
『ありがとう、ザックよ。そして、リルドよ。
よくぞザックの封印を解き、わしを解放してくれた。』
回想シーンが流れ、村長のセリフが続いた。
『かつて、わしは先代の勇者と共に魔王を倒したのじゃ。
しかし、消える間際に魔王はこう言い放った。
”我は必ず復活する。それまでは、貴様が変わりだ!”
とな。そして、わしは魔王にされたのじゃ。
さらに、次の勇者であるリルドと不思議な力を持つザックが仲間になっては困ると言い、
ザックは封印されてしまったのじゃ。』
回想シーンが終わり、元のシーンに戻った。
『と、まぁこんな感じじゃ。とにかく二人ともよくぞやってのけた。
積もる話もあるじゃろう。一先ず村に帰るとするかの。』
セリフが終わると、村長は扉から出ていきリルドとザックも続いた。
画面が黒くなり、エンディングが流れ始めた。
「……終わりか?」
流れるエンディングを見ながらリルドは言った。
「そうみたいだね……。」
「これで元の世界に戻れるのか?一体どうやって……」
手元のコントローラーを見つめるリルド。
丁度その時、エンディングが終わり黒い画面の中央に村長が現れた。
「リルド!画面!」
リルドの肩を叩き、画面を指さす。
「村長!?」
リルドの声に反応したかのように、村長が喋り出した。
『リルドよ。これを聞いているということは、全て思い出したようじゃな。
さすれば、戻ってくるがよい。』
ーー元の世界に戻りますか?
画面に選択肢が表示された。
「やったね、リルド。これで、戻れるよ!」
「あ、あぁ。しかし、これを押したら和馬とは……」
「大丈夫。またすぐ会えるよ、きっと。」
「何を根拠に!俺たちは別々の……」
「大丈夫だって!」
リルドの言葉を遮り、コントローラーを手に取った。
「な、何をする和馬!やめ……」
ーーはい。
和馬が選択した途端、リルドの全身が光に包まれた。
「なんてことを!まだ礼もちゃんと言ってないのに!」
「またすぐ会えるって。だって僕は……」
「な!?」
***
「……くっ。”和馬”め。勝手なことを……。」
起き上がり、辺りを見渡す。
そこは、見慣れた風景だった。
「ここは……村を出てすぐの所か……?装備も、旅に出た時のだな……。」
(本当に戻ってきたんだな……。)
「とりあえず一旦村に戻るか。」
村の方に向き、歩き出そうとした瞬間、
なんと、スライムが現れた。
「なんだ、スライムか。素手でもいいくらいだな。」
戦闘態勢に入るリルド。
それを見て、スライムも身構える。
「……なんてな。ザック……なんだろ?」
「なんだ、バレてたのか。」
そう言いながら、スライムはぴょんと飛ぶとザックの姿になった。
「おかえり、リルド。久しぶりだね?」
軽く頭を搔くリルド。
「何が”久しぶり”だ。……ありがとな、ザック。」
ー完ー
少し間が空いてしまいましたが、これにて完結です。色々と荒い部分があったかと思いますが、個人的には最後まで書ききれたことに感無量です。ありがとうございました。




